降りしきる雨の中
血と水に濡れながら

僕らは
怪我をしたお互いを庇いながら

ただただ
必死で走っていた。



「リュード!テメェもっと早く走れねぇのか!」
「無理ですよ!もうカラスだけでも逃げて下さい!」

「馬鹿な事言ってんな!気張れ!」


そんな会話を交わす僕らの背後には、モンスターの群れが迫っていた。



それもこれも、全部僕のせいなんだ…

僕が、モンスターの巣へと流れ弾を当ててしまったのだ。
しかも今はカラスの足を引っ張っている。


「ちっ、集まってきやがった!血の臭いを嗅ぎ付けやがったか!?」

「もとはといえば、僕のせいなんです!僕が囮になって……!」

「モンスターに喰われる前にオレが殺してやろうか!?」


僕のせいなのだから、
囮にぐらいしたらいいのに…


…カラスは優し過ぎるのだ。そこが好きなのだけれど……




好きだから、

だから、僕を―――…



「……馬鹿な事考えるなよ」
「え……?」

「お前が死んだら、オレも死ぬからな」


「……なら、まだ死ねませんね…」

「上等だ、生き残れ!」





       "生き残れ"





彼は僕にこう言った。

その言葉の真意に僕はまだ気付いていなかった。


しばらく走ると、ちょうど人一人隠れそうな岩陰を見つけた。



カラスを――

そう思った瞬間、僕の考えを読んだかのように、カラスが僕を突き飛ばした。

「テメェはここで待ってろ!」

僕を岩陰へと無理矢理押し込みながらカラスが言う。
「カラス!」

僕には、彼の考えが手に取るように分かった。



僕らは似ている。
善くも悪くも。

――自己犠牲の考えも。


一人で敵にに向かおうとするカラスの服の裾を掴み引き止めるも、すぐに取り払われた。

「黙って待ってろ、馬鹿リュード!あんな雑魚共オレ一人で十分だ!」

「カラス……っ!?」

なおも取り縋ろうとする僕にスッとカラスが近付き、首に手刀を落とす。

「すまない、ちょっと――行ってくるよ」

徐々に薄れていく視界の中、カラスの目に……何か光る物が見えた気がした。



そして、頭の中には。


カラスの最後の言葉が不気味に反響していて……
あの蒼く澄んだ眼が鮮明に残っていた。

その眼は、
アルマードと同じ、



…――死ぬ覚悟をした者の眼だった――…






       "生き残れ"





彼は僕にこう言った。

まるで、自分は


……死ぬかのように。



あぁ、
僕らはやっぱ

似た者同士だったんだね




涙が頬を伝う。



それきり、

僕は意識を失った。





遥か遠くに
カラスの声を聞きながら。




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