裏口 | ナノ


▽ LOVE BITES


休息日の昼下がり。
うららかな日差しの溢れるベランダ。
クラトスはそこに立ち、目の前に広がる森と、良く晴れた空を見ていた。

「……何してんの、天使サマ。」
「ああ…、空を見ていた。」

背後から響く声に振り向けば、赤い髪が目に入った。
だが、彼の青い瞳を見ることはかなわなかった。
なぜなら、返事が終わらないうちに、クラトスは後ろから強い力で抱きすくめられていたからだ。

「どうした、ゼロス。」
「………。」

ゼロスは、沈黙のままでいる。
代わりに、尖った痛みが耳たぶに走った。
「ッ……、こら、噛むな。」
「やだ。」
短い否定の言葉とともに、ゼロスの指が、クラトスの首にかかる髪を分ける。
そして、今度はうなじに、同様の痛みが走った。
「ン…っ」
血が滲む程ではないが、それなりの強さ。
きっとそこには、きれいな並びの歯形がついていることだろう。



ゼロスの噛み癖は、今に始まったことではなかった。
正確にはいつ頃からだか忘れたが、まだ幼い頃から、何か気に入らないことや、上手く行かないことがあると、こうして、噛みつくことがあった。
ただし、相手はクラトスに限って。

最初は、何かと反抗的な彼に、意地悪な悪戯をされているのかと思ったが、不思議に思って調べて見れば、どうやらこれは、甘え行動の一環らしい。
本来は母親など身近な者に対して現れることが多いようだが、早くに甘えるべき対象を亡くしたこの少年には、剣や魔法の師匠たるクラトスが、そういう相手となったのだろう。
そうと解れば、彼のこの行動に、愛しさにも似た思いを抱いた。



だが、それから十数年。
(まだ、治らぬものか……。)
クラトスは小さな痛みに身を強張らせながら、手摺りに縋る自分の指が、彼の攻撃に伴い、白くなるのを見つめていた。


やがて、ゼロスの手がクラトスの首に回され、ハイネックの襟の部分に入り込む。
くすぐったさに首を竦めたのもつかの間、すぐに留め金を外され、衣服を肩まではだけられて、クラトスは我に返った。

「ゼロス……?なにを……?」
「欲しい……、あんたが……。」
「な……、痛ッ……!」

あらわになった肩口を一際強く噛まれ、思わず眉を寄せる。
大人になった彼は、この行動とともに、性的な交わりを求めることも、ままあった。
クラトスは、出来得る限り、それにも応じた。
だが、今は昼間で、ここは宿のベランダだ。

「ならば、ベッドへ……」
せめてもの懇願をするも、ゼロスは聞き入れてくれない。
「ここでイイって。今の時間、この宿屋に残ってんのなんて、俺達くらいのもんだろ?」

確かに、ベランダの向こうは一面の森。
宿に誰もいなければ、見られる心配はないだろう。
だが、普段のゼロスの性癖を考えれば、ぜひとも室内にしておいてもらいたかった。
こんな、いつ誰に見られるともしれない場所で、素裸にされ、体中をくまなく舐めたり、嬲ったりされるなど、御免被りたい。

想像しただけで赤面したクラトスの心中を、ゼロスは察したようだった。
しかし、困ったことに、今日の彼は、どうしても外で繋がりたいらしい。

「ね、させて……?明るいトコで恥ずかしがるあんたを、じっくり見てみたいんだよ。」
「…いい趣味だな。」
「うん。我ながらそう思う。」
「………。」

皮肉も、さらりとかわされる。
クラトスは小さくため息を漏らし、観念した。

何かよほど嫌なことでもあったのか。
ならば、そんな彼を宥められるのは自分だけ。少なくとも今は。

恥ずかしいのは確かだ。
万一こんなところを他人に見られでもしたら、羞恥で気のひとつも失えるかもしれない。
だが、それを許すことで、ゼロスの心の安定を繋ぎ留めておけるなら、安い代償とも思えた。
なにせ彼には、これからも戦って貰わねばならないし。
協力も、不可欠だし。
何より―――大切に思っているから。

「……もういい。好きにしろ。」

クラトスは抵抗をやめ、ゼロスの方に向き直った。
そして、許可の印しに、唇への口づけを許した。


ゼロスの逞しい腕が、クラトスの着衣を剥ぎ取る。
清々しい外気を素肌で感じながら、クラトスは、奪われる体温を補うように、ゼロスに肌を寄せた。

「ぅぁ……ッ、は……!」
「……綺麗だ、天使様。」

こんな場所だというのに、いや、こんな場所だからなのか、ゼロスはクラトスを一糸纏わぬ生まれたままの姿にしてしまった。
少し肌寒い。
そのせいで固く収縮した乳首を、ゼロスの舌が舐め上げる。
もとより弱いそこを、温かい口内に含まれ、赤ん坊がするようにちゅうちゅうと吸い上げられては、声を上げずにはいられなかった。

「くっ、ンぅ…ッ、ア……!」
「ン…、おっぱい吸われて感じちゃった?」
「うぁ…ッ、ば、馬鹿……!ンっ……!」
「……天使様、ホントにココ、弱いよねェ。」

ゼロスは嬉しげに笑うと、そこへきつめに歯を立てた。

「んぅ…!?…痛っ、ゼロス…!」
「…ん。イイ顔。ほら、こっちもかじっちゃおうかな。」
「ば…ッ、痛っ、やめろ……!」

両の乳首を食いちぎらんばかりに噛まれ、涙目で抗議するクラトスを、ゼロスは満足げに見上げた。

「あー、あんたのそういう顔ってば、最高…。もちろん、噛みごたえも。」
「噛みごたえ…?な、んだ、それは……!」
「んー?ほら、この腹とか、太もものあたりとかさ。筋肉質で、弾力があって、噛むとくっきり痕がついて。…色々とたまんねーの。」
「ッ…、やめ……ッ!」
「やめらんねーよ。…もっと…。」

その言葉通りあちこちに噛み痕を残しながら、ゼロスはクラトスの体を征服して行った。


やがて彼の唇が、クラトスの下半身に到達する。

「へェ、天使サマ……、エッチだねぇ。俺に噛まれて勃っちゃったんだ。」
「はぁッ…………。」
クラトスのそこは、既に大きく姿を変え、先端を濡らしていた。
「な、どうして欲しい?」
「あ………、」

ゼロスの息が、そこにかかる。
触れて欲しい。
指で、唇で。
だが、それを強請ることは躊躇われた。
いっそ、いつものように、強引に奪われれば…、などと思考がぼやけたとき、そこに尖った痛みが走る。
「ゥあッ、く……?!」
「ホラ、早く言わないと、ココも、噛んじまうぜ?」
言いながら、くびれのところまで引き下ろした皮を歯の端で噛み、クッと引かれる。

―――何と言うことをするのだ。
まるで玩ばれているような行為に腹を立てたクラトスは、なけなしの意地で、強くゼロスを睨み付けた。
が、返って来たのは、不敵な笑み。
怯むどころか面白がるようなその表情に、返って彼の本気を感じ取ったクラトスは、ゾクリと背を震わせた。

「ほら、どうして欲しい?言えよ。」

冷たい光を湛え、静かに見上げるゼロスの瞳。
その色に促されるように、クラトスは震える唇を開いた。

「あ…、愛して、ほしい…っ、おまえに……。」
「ふーん。どんな風に?」
「っく……!」

さらに意地の悪い問い掛けに、思わず言葉を詰まらせたクラトスを、ゼロスは愉快そうに眺め、笑う。

「……ま、いいや。言えない程ヤラシイこと、して欲しいんだろ。……ったく、エロいなぁ、あんたは。」

嬲るような言葉に、クラトスはぐっと唇を引き結んだ。
自分はただ、ゼロスのあまりにも品位のない要求に驚き、言葉を無くしただけだというのに。
それをまるで、淫売のように言われるなど、不本意なこと極まりない。

だが、ゼロスの巧みな舌と手は、彼自身の言葉を、真実に変えてしまう力を持っていた。
ニ、三度軽く扱かれた後、先端に口づけられ、徐々に熱く愛されれば、クラトスはもう、快感に喘ぐしかなかった。
ねっとりと執拗な愛撫に、腰が小刻みに揺れ、ゼロスの与える快楽を、もっともっとと追い求めてしまう。
その様子を見たゼロスは、クラトスの耳に口を寄せ、低い声で囁いた。
「んー、あんた、ホントに可愛いなぁ。自分から腰、動かしちゃうなんて。」
「だ、誰の、せいだと…っ!」
「俺サマだろ? 俺サマに抱かれると、可愛くなっちゃうんだよなぁ、クラトスは。」
「ッ……!!」

クラトスは赤面した。
認めたくはないが、事実、その通りだと自覚させられて。

可愛いかどうかは別としても、ゼロスに抱かれている時の自分は、普段のようには振る舞えない。
まるで別人のように啼き、喘ぎ、物欲しそうに彼を求めるその姿は、もはや何と言われようとも仕方がなかった。


そうやって、しばらくの間熱く愛撫され、そろそろ意識も霞み始めた頃、ゼロスの手に、突然体を返された。
正面から向き合っていたのを、再び手摺りに縋らされ、背を向ける形になる。
目には森の、濃い緑。
突然失われた快感と、その景色に意識を奪われた瞬間を縫って、ゼロスは腰を掴み、グイと自分のほうに引き寄せた。

「なあ、天使サマ。腰、こっちに突き出して?」
「…な…?!」
「尻、もっと上げて。よく見せろよ。」

有無を言わせぬ口調。

「ほら、気持ちよくなりたいだろ?大人しく言うこと聞いておいたほうがいいぜ?」
「…………。」

恥ずかしさに身も心も震わせながら、クラトスは上半身を前に倒し、ゼロスの言う通り、彼に向かって腰を突き出した。


「そうそう、上手いな。」
「あまり、見るな……。」

ゼロスの指が双丘にかかり、広げるように力が込められる。
制止の言葉も空しく、小さな入口をじっと見つめられているのがわかり、クラトスは堪らない気持ちになった。

が、さらに、そこに熱い吐息を感じたクラトスは、大きく背を震わせた。

「ヒッ……!?」
「ほら、柔らかくしとかないと。…いい子にしてな。」
「嫌っ、ン……!」

ヌルリと押し当てられるゼロスの舌。
それが幾度か穴の周りを行き来したあと、入り口を割って入り込む。

「ンぁッ、や、め……!」

抵抗すると、ゼロスの手の平に、ぴしゃりと尻を叩かれた。

「ぅあっ、痛ッ……!」
悪戯を戒めるような、だがそれにしてはきつめの平手打ち。
思わず苦痛の声を漏らしたクラトスの姿さえ、きっと彼は楽しんでいるのだろう。

その間に、舌はいっそう奥まで入り込み、中を舐め回されると同時に、入り口を唇で包まれ、キュウッと吸われた。
「ヒ、アっ……!!」

クラトスの泣き声にも構わず、舌はまるで触手のようにうごめき、中を十分に潤した。
そして、それが引き抜かれるとともに、今度は指が潜り込む。

「結構開いてたし、二本入れても大丈夫だよな。……ん、いーい感じ。」
「あ…ッ、ンぅ……ッ!」

ゼロスの長く美しい指が、的確に感じる場所を刺激する。
舌よりもはっきりとした快感に、全身が跳ねた。
だが、本当に欲しいのは、指ではなく。
ゼロスの欲望で膨れ上がった、熱く固いものなのに。

欲しい気持ちが抑えられず、焦れたように下半身をくねらせると、ゼロスは、クッと笑った。

「何だよ。…なんか、物足りないみてーだな。」
「ンッ、ふ………。」

顔を覗き込む彼に、強請るような視線を投げる。
普段の彼ならば、その表情からすべてを読み取り、すぐに望んだものをくれるはずだ。
仕方ないな、などと笑いながら、それでも優しい口づけとともに。
だが、今日の彼が、素直にこちらの言うことを聞いてくれるはずなどなかった。

「ん?どうして欲しいの?言ってみろよ。」

解っているくせに、そんな意地悪なことを言う。
だが、翻弄され続けた身に、抗う気力など、もう残されてはいなかった。
クラトスはギュッと目を閉じると、震える声で告げた。

「……指ではなく…、おまえの…、」
背後に手をやり、服の上からでもわかるゼロスの膨らみに、そっと触れる。
「おまえの、コレで、私を、」

普段は決して言わないようなセリフ。
それを、消え入るような声で告げたクラトスに、ゼロスは薄く笑って、漸く指を引き抜いた。



カチャリ、とベルトを外す音に続き、衣擦れの音。
クラトスと対照的にほとんど着衣を乱していなかったゼロスが、ズボンの前だけを緩め、それを取り出す。
たくましく主張しているであろうものを想像したクラトスは、体の奥深くが疼くのを感じた。

「じゃ…、挿れるぜ?」
「んッ……、ここに…ッ、」
「わかってるよ。そう急くなって。……ほらよ。」
「ぅンッ、く……、ん、アァっ…!」

ゼロスは焦らすように、殊更ゆっくりと分け入って来た。

「コレが欲しかったんだろ?」
「ぅ、ふぁア……っ!」

太く固いソレが、内壁を擦りながら侵入してくる。
ゾクゾクと背筋を駆け上がる快感。
待ち望んだ刺激に、飲み込まされている途中で達してしまったクラトスは、足元にぱたぱたと白濁を散らした。
同時にゼロスを思い切り締め付けてしまい、背後から、息を詰める声が聞こえる。
「ッく……、こら。一人でイッちまって……。まだ、全部挿れ終わってねーんだぞ?」
「んっ、済まない…ッ、あ……、」
「たく…、ただでさえキツいってのによ。」

文句を言いながらも、ゼロスは嬉しげに腰を進めた。
明るい光の中、恥ずかしげに収縮を繰り返すそこを眺めながら、ゆっくりと自身を沈めて行く。

陽光の下で見るクラトスのそこは、朝露に濡れる花芯のように可憐だった。
そんな場所に、太く長い男性器が半ば無理やり捩込まれ、限界まで押し拡げられてゆく。
その様は、酷くエロティックでありながら、一方でどこか儚げで、ゼロスはいっそう、嗜虐的な欲望を掻き立てられた。

「……なあ……、アンタを、食い尽くしてやるよ……。」
「え?な……っ……?!」
「動くぜ。」

言うが早いか、ゼロスは途中まで挿入していたものを殆ど先端まで引き抜いた。
そして勢いをつけて、一気に奥まで突き入れる。

「ヒッ…、んあァっ!」

パンッ、という音とともに腰に響く衝撃。
臀部に当たった茂みの感触に、クラトスは、ゼロスのものが、一息に根本まで押し込まれたのだと知った。
同時に身体の奥底から、えもいわれぬ甘い疼きが沸き上がり、背をのけ反らせて、目の前の手摺りに縋り付く。

が、その余韻をゆっくり味わう間もなく、ゼロスは激しい出し入れを開始した。

「ほら、どう?気持ちいいだろ?」
「ひッ、は、アぁ…ッ!」

遠慮なしにガクガクと揺さ振られ、声も絶え絶えに喘ぐクラトスを、ゼロスは休みなく攻め立てる。

「ハッ…、良すぎて、口も聞けねーってか?淫乱天使サマ。」
「違…ッ、ア、んッ……!」
「違わねーだろ?……ココの穴、こんなに拡げて、俺のに喰らいついちゃってさ……、ったく、エロいったらないぜ。」
「う…っ、や……!」

身体ばかりか言葉でも嬲られ、クラトスは屈辱に涙を滲ませた。
けれど、意に反して、激しい疼きに震える身体は、ゼロスの律動を悦んで迎え入れていた。

もっと、突き上げてほしい。
掻き回して、何もわからなくなるほど、ぐちゃぐちゃにして欲しい。
強い力で支配され、すべて暴かれてしまいたいという、自虐にも似た欲望が、体の中を翔け巡る。

もちろん、そんなことを、言葉に出してねだれるハズもない。
だが、ゼロスは、クラトスのそんな心情を、見透かしているようだった。

「なあ、アンタわかってる?こうして虐めてやると、余計に締まりが良くなんの。……意地悪くされて感じるてるんだぜ?」
「うっ、んっ…!や、やめ……ッ!」
「すごく色っぽい顔するし……って、やっぱ顔、見たいな。」
「ッ……?!」

言うが早いかゼロスは、クラトスの内部に納めていたものをすべて抜き取った。
急に寂しくなったそこに、クラトスは打ち震え、ついゼロスに懇願するような目を向けてしまう。
ゼロスはそんなクラトスを一瞥すると、その身体を返し、正面から向き合った。
そして、クラトスの片足を、高く持ち上げる。

真っ直ぐに見つめられ、改めて覗き込んだゼロスの瞳は、やはり狂暴な何かを孕んでいた。
背がひやりと冷たくなったのは、手摺りが当たっているせいばかりではなさそうだ。
クラトスは長い睫毛を伏せると、これから再び始まる責め苦を覚悟し、その身を委ねた。




「あっ、ふ、ンぁッ、く……!!」
「ん、……思った通り、イイ顔するねェ。」

片足だけで身を支え、激しく揺さぶられながら、クラトスは喘いでいた。
涙が溢れて伝う顔など、みっともなくて背けてしまいたいのに、ゼロスに頬を固定され、それも叶わない。

「すっげえそそるぜ、天使サマ。…ほら、向こうの窓から、アンタの可愛い姿、見てるヤツがいるぜ?」
「な…ッ?!」
「おっと。ダメだろ、俺サマから目を逸らしちゃ。」

耳の脇をグイと押さえられ、確認する間もなく、正面を向かされる。
多分、嘘だ。
それはわかっている。
だが、そう理解していても、もし見られていたらと想像するだけで、どうしようもない羞恥に全身が熱く火照った。
同時に、微かな悲しみが込み上げる。
自分がこのような姿を曝すのは、ゼロスにだけだ。
なのに、それを他の者に見られているなど。

「ゼ、ロス…っ、」
「んー?何だよ。」
「頼む、場所を、移してくれ……ッ…、」
「どうして?」
「おまえ以外に、こんなところを、見られるなど、堪えられない……!」

まるで告白のようになってしまった懇願に、ゼロスは、満足そうな笑みを浮かべた。

「わかったよ。…ったく、ワガママな天使様だぜ。」
「は、アっ……、」
「だけど、それは俺様が、一回イってからな。」
「ひっ……?!あ、あっ……!!」
囁かれる言葉とともに、激しさを増す律動。
ガクガクと揺さぶられ、よりいっそう強くしがみつく。
「……ホラ、ぶちまけるぜ。全部飲めよ。」
「う、んアぁあ……ッ!!」

体内に勢いよく注がれる、ゼロスの熱。
どくん、どくんと流し込まれるそれを、クラトスは痙攣とともに、すべて受け止めた。





「……さ、ここならいいんだろ。」
「んゥ……っ!」

ここに至って漸くベッドに連れて来られたクラトスは、マットレスに放り投げられ、小さく呻き声を上げた。
その衝撃で、今しがた中に出されたものが、零れそうになる。

「ッ、あ……?!」
慌てて身を起こし、対処しようとした手は、ゼロスに押さえつけられた。
そして、そのまま脚を大きく割られる。
出したばかりなのに、全く張りを失っていないモノが、だらしなくゼロスの熱を流す入り口に宛がわれ、クラトスは目を見張った。

「まだ、治まらないのか……?」
「あたりまえだろ?あいにく俺サマ、そんなに淡泊じゃないんでね。」
「う、ア……!」

ニヤリと笑った彼に刺し貫かれ、クラトスは泣き声を上げた。

「あ……、天使様……。すごい、キツイ……。」
「ッふ…、」
「それに、熱い…。いっぱい濡れてるし……。」
「言うな……っ、あ…!」
「んー、だってアンタ、教えてやるとイイ顔するし、いっぱい締めてくれるんだもん。」
「何……、あッ?!」
「で、その締まったトコを、無理矢理かきわけるのが楽しいってね。」
「ひッ、ぐ、ひぃンッ……!!」
「どう? 気持ちいいだろ?」

クラトスの返事は喘ぎにしかならなかったが、その甘い声と、無意識にくねらせてしまう腰から、十分に感じ入っているのが見てとれた。

一方ゼロスは、クラトスを攻め立てながら、彼が恥じらって、乱れる様を楽しんでいた。
正しく、慎ましく、綺麗な天使。ひとたび戦闘ともなれば、剣術はもちろん、大魔法をも自在に使いこなす彼が、自分には、いともたやすく征服され、揚句、こんな痴態まで見せてくれる。
そのことが嬉しく、一方で、更なる渇きを生んだ。

彼は、自分のことをどれほど愛してくれているのだろう。
どこまで許容してくれるのだろう。
この愛情は、打算か、同情か、それとも―――。

そんなことを考えながら突き上げていると、耳元に、クラトスの震える声が聞こえた。

「頼む…、ゼロス、もう…ッ、」
「ん?……もう、何?」
「も……、駄目だ……ッ、」
「はは……、あんたホント、堪え性がねぇなあ。」

もうちょっと楽しませてくれよ、と嘲るように言えば、クラトスは、今できる精一杯の鋭い眼差しを向けて見せた。

「……ゼロス、だからっ……!」
「ん?」
「おまえが、相手、だから、こんなに……ッ!…ン……!!」

浅く息をつきながら怒るクラトスに、ゼロスは目を見張り、それから口の端を上げた。

「……やべ、嬉しいかも。」

自分を見下ろす、少しはにかんだような笑顔。
それは、少年の頃の彼を彷彿とさせ、やけに懐かしかった。
それを見たクラトスは、ようやく安堵する。
―――こんな風に笑えるなら、もう大丈夫だ。

ならば後は、優しく愛されたい。
「ん…ッ、ゼロス、」
首に手を回して抱き寄せ、クラトスは、ゼロスの頬に、額に唇を寄せた。
そうしながら、髪を梳き、耳元に囁く。
「おまえが、傍にいてくれるだけでいい……。それだけで、私は……!」

ゼロスはその温かい口づけと言葉を、震えるような気持ちで受け取った。
クラトスが捧げてくれる愛情は、ちっぽけな自分を、丸ごと包んでしまうようだ。

それは遠い日に失くしてしまった、あの温もりとも似て。

「くっ、天使様……クラトス…ッ!」

自分を大切だと、愛していると全身で訴えるクラトスに、堪らなくなったゼロスは、その体内にもう一度、たぎる熱を注ぎ込んだ。



「……どうだ、満足したか。」
「………うん。」

数回に渡る交渉ののち、ゼロスは漸く大人しくなって、クラトスの隣に横たわった。

「まったく……。何か言うことはないのか。」
こんなにしておいて、と暗に謝罪を促すと、ゼロスは謝るどころか、うっとりとした表情で、クラトスの肩に額を寄せた。
「そうだなー。…あんたの肌が、俺の歯形だらけだと思うと、すっごい幸せ……。」
「まったく……、悪趣味な。」

何を言うかと思えば、そんなことか、と呆れ返るクラトスに、ゼロスは穏やかさを取り戻した笑顔を見せる。

「そう?」
「……まあ、いい。過ぎたことをどうこう言うのは好きではない。」
すっかり毒気を抜かれたクラトスは、乱れたゼロスの髪を直しながら、短いため息をついた。

「……もう、優しいな、あんたは。だーい好き。」
「優しいものか。見くびるな。」
「…ハァ?別に見くびっちゃいねーよ。……訳わかんねーなあ。」

褒めてんのに、と言うゼロスに、クラトスは少し眉を上げて見せた。

「そうか。褒められていたとは気付かなかった。すまないな。」
「………鈍感。」
「……怒るか褒めるか、どちらかにしてくれ。」
少々困った表情になるクラトスに、ゼロスはわざと口を尖らせて言った。
「ま、いいだろ、どっちだって。俺サマがあんたを愛してるってことに変わりはねーんだから。」
「……そうか。まあ私も、おまえがどんなに荒れたところで、愛しく思うのだから、同じだな。」
「………!」
「……何だ。鳩が豆鉄砲をくらったような顔をして。」
「……豆鉄砲なんて可愛いもんかよ……。」

その後、どんな叱責を貰うより大人しくなってしまったゼロスに、クラトスはもう一度、美しく微笑んだ。


そして、体中につけられた噛み痕を癒すのは、もう少し後にしようと思ったのだった。


End.



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