裏口 | ナノ


▽ Dive into your body


小さな頃からのつき合いで。
大好きで、大好きで、たまらなくて。
なのに、今まで肉体関係はナシ。
どんなにおねだりしても、キス以上を許してくれない。
それでも、大切にしたいと思っていたから、かなり必死で辛抱してきた。
が。
一緒に旅をするようになって、毎日を共にするようになった途端、一気に我慢がきかなくなった。

だっていちいちセクシーだし。可愛いし。天然だし。
そんなのを、24時間至近距離で見せつけられたら、もう、たまったもんじゃない。

ある日、ついに限界に達した俺は、クラトスを呼び出すと、両手を合わせて懇願した。
「ねえ、クラトス。お願いだから、いいかげん、俺のものになってください!」
恥も外聞もなく拝み倒す俺を見て、天使様はこれまでと同じく、やれやれ、と困ったような顔をした。
「ゼロス……。私は、肉体関係など結ばなくとも、十分にお前のことを……、」
「わかってる。でも、もう、本当に限界なんだ。このままじゃ、まともに戦うことだってできやしない。仲間だって、危険な目に遭わせちまうかもしれないし……」

我ながら、ずるい言い方だとは思った。
でも、本当のことだから仕方がない。
現に戦闘中も、ちらちら見えるあんなトコやこんなトコが気になって、それこそ何度も大ケガをしてる。
……って、むしろ危険なのは俺か。

天使様はしばらく考え込んでいたが、やがて、渋々ながらも了承してくれた。
「……では、今度一緒の部屋になったら」
「ホント?! やったぁ!!」

それからの毎日は、妙にそわそわして落ち着かなかった。
部屋割りのくじ引きのときなんて、特に。
相手がクラトスじゃないと分かると、あからさまに落胆する俺を、他の皆は訝しがるし、クラトス本人にも思いっきりたしなめられた。
そんなことしてると、約束を取り消すぞ、って。
それだけはカンベンだ。
以後、なるべく態度に出ないよう気をつけていたが、それでも、一緒じゃないと分かると、何となくがっかりしてしまうのだった。

そんなこんなで、2週間ほどが経ち、ついに、念願の同室を手に入れる日がやってきた。

「今日は、ゼロスと一緒のようだな」
耳に飛び込んでくる天使様の声。

え?マジですか?
俺は、自分が引いたクジを見る。クラトスが持っているのと同じ色。
「やったあああ!!」
思わず、喜びの声を上げると、隣にいたロイドが驚いてこちらを見た。
「何だぁ? ゼロス。クラトスと一緒の部屋が、そんなに嬉しいのかよ」
「嬉しい!!!」

いや、もう嬉しいなんてもんじゃない。
だって、今夜こそ、クラトスと、ひとつになれるのだ。
本当に、これまで、長かった。

「そうか、それで他のヤツだとガッカリしてたんだな。そうならそうと言ってくれれば、替わってやったのに」
「いいの! 大事なことだから、フェアに行きたかったのよ」
「大事? ……何が?」
「あー、イヤイヤ何でもない」
気づくと、天使様が恐い顔でこっちを睨んでいた。
息子に余計なことを言ったら、承知しないぞ、といった表情。

そりゃあ、そうだよなあ。
俺にしたって、こんなことがロイドにバレたら、タダじゃ済まされない。
場合によっちゃあ、血を見ることになりそうだ。
身の危険を察知した俺は、慌てて話題をそらした。

「そういや、たしか買出しがあるんだったな。それ、俺サマが行ってくるから!」
「そうか? 今日は結構量があると思うけど、一人で大丈夫か?」
「まっかせなさ〜い!!」

ついでに、決して普段の買出しでは行かないような店で、今夜使うものも買ってこなければ。
そのためには、一人のほうが都合がいい。
俺は、食材とか消耗品のチェック係になっているしいなから買い物リストを受け取ると、いそいそと出かける準備をした。



「……くっそー、ホントにいっぱいありやがった……」

何とか買出しが終わり、大きな荷物を抱えて宿に戻ると、入り口の前でリフィル様が待っていた。
「あれ? どうしたの、こんなところで」
お気軽に問いかけると、予想外に厳しい声が返ってくる。
「ゼロス。あなた、クラトスに何をするつもりなの?」
「………え?」

思わず、持っていた袋を落としそうになった。
こういうとき、この先生は妙に鋭い。
「いや、何って、そんな」
しどろもどろになっていると、彼女はふう、とため息をついた。
「まあ、大方想像はついているわ。今までのあなたたちを見ていればね。悪いけど、今夜は二人で、別の宿に泊まってくれないかしら」
「え?!」

またもや、予想外の言葉。
しかし、それはすごくありがたい、むしろ願ってもないことだった。

「いいの?!」
「ええ。今日は宿泊客がいっぱいらしくて、たまたま部屋数が足りなくなったのよ。ひとつ向こうの清風館に一部屋お願いしておいたから、夕食が済んだら、そちらに移ってちょうだい」
「わかった! ありがとう、リフィル様!」
「……まあ、首尾よくやりなさいな。くれぐれも、調子に乗ってクラトスを酷い目にあわせないようにね」
「了解、了解〜!」

夕食の後、皆がそれぞれの部屋に行くのを待って、俺達は宿を移った。

「なぜ私達だけ別の宿なのだ? まさか、皆に知れているのではないだろうな」
「え? あー…。大丈夫じゃない? 今日はたまたま部屋がいっぱいだったって、リフィル先生言ってたし」
 
少なくとも、「皆に」バレている、というワケじゃない。
理数系の、理屈(クラトスに言わせると“ヘリクツ“だそうだが)に強い頭脳を駆使して、嘘ではないが、適切でもない曖昧な返事をすると、天使様は意外に素直に納得した。
「そうか。ならいいのだが」
あー、よかった。こいつが、こういうことには鈍感で。
まぁ、さっきの返事なら、万一後から突っ込まれても言い訳可能な範囲だ。
もっとも、この真面目な天使が、それで許してくれるとは到底思えないが。


少しの間並んで夜道を歩き、清風館に着いた俺達は、フロントで鍵を受け取ったのち、キーと同じナンバーのドアを開けた。
すると。

(うっわ、先生! やってくれたな)

なぜか、部屋にはダブルのベッド。
なんつーあからさまなことをするんだ、あの人は。
これでは、いかに鈍いクラトスだって、おかしいと思うだろう。

あちゃー、と額をおさえ、隣に立つ天使の攻撃を覚悟する。
ところが、クラトスは、部屋の入り口で固まってしまっていた。

「どうしたの?」
「いや……、何でもない」
「ん? そんなとこに突っ立ってないで、中に入ろうぜ」
腕を掴むと、あからさまにビクリ、と震えた。

あれ? この反応。
もしかして。
怯えられてる?

「どうした、クラトス?」
「っ……、すまない。そうだな、中へ入ろう」
そう言うと、クラトスはそそくさと部屋に入ってしまった。
その頬は、見たこともないほど赤く染まっている。
それが、凄く初々しくて。

俺は、にわかに体が熱くなるのを感じた。


「天使様、先にシャワー浴びてきていいよ」
「ああ。では、先に……」
バスルームのドアがパタン、と閉まる。
程なくして、シャワーの水音。
今、彼は、体を清めてくれている。
俺のものになるために。

どんな風に、抱いてやろうか。
(あー、ダメだ。想像しただけでイっちゃいそう)
気を紛らわせるために、持ってきた荷物の中から、夕方手に入れた小さなボトルを取り出し、サイドボードに置いた。
いわゆる潤滑剤。
店に行ったら、何だかいろんな種類があったので、ちょっと可愛く、ストロベリーの香りにしてみた。
クラトスは甘いものが好きだから、喜んでくれるかなー、とか考えて。


しばらくすると、クラトスがバスルームから出てきた。
白いバスローブを羽織って、濡れた髪を押さえている。
ローブの裾からすんなりと伸びた白い足が、とてもきれいだ。
(―――なんでこの人は、男のクセにどこもかしこもスベスベなんだかなー)
それがまた、すごく中性的で、倒錯的な気分になる。

「じゃ、俺もシャワー浴びてくるから、ベッドで待っててね」
「―――ああ」
返事をした彼は、相変わらず頬を染めて、どこかいたたまれないような顔をしていた。



「うわっ、天使様、何してんの?!」
「いや、いい香りだな、と思って。説明書きを見たら、口に入れても大丈夫だと書いてあるし」

バスルームから出て来た俺は、目に飛び込んできた光景に仰天した。
クラトスは、こともあろうに、例の潤滑剤を指先にとって、味見していた。
ぺろり、と舐めて、“これは苺か?”などと言っている。

―――あー、もう勘弁してください!!
まったく何やってんだか、この人は。
こーいうのがどれだけ男心を刺激するのか、解ってないんだろうか。
これが計算でないのが、またすごい。

「もう、イタズラしないの!」
俺はその手からボトルを取り上げると、元の位置に戻し、クラトスを押し倒した。
「っ! ……ゼロス!」
突然のことに、クラトスは慌てたようにこちらを見上げる。

しっとりと濡れた髪。
長い睫毛。綺麗な肌。
少しおびえたような、でも俺を信頼してくれている表情。

これを、全部、俺のものにしていいのか。

ぞくり、と背筋が震えるのがわかった。

「クラトス……、いいか?」

もう、ガマンできない。
性急過ぎて、ちょっとカッコ悪いか、とも思ったが、バスローブの紐の結び目に手をかけ、熱っぽく訊いた。
クラトスは一瞬体を強張らせたが、すぐに力を抜いた。

「………ああ。………おまえの、思うようにしてくれ」
「クラトス……!」

何度、この瞬間を夢見たことか。
今夜、やっと現実のものになる。
俺は、クラトスに深く口づけた。



しばし、夢中で口づけを交わした後、早速クラトスを脱がせにかかった。
バスローブをはだけると、白く、滑らかな肌が露出する。

想像以上に美しい裸体。
いっそ神々しいくらいの。

ずっと欲しいと思っていた。
それこそ、今のロイドより、いくらか年下だったろう、ガキのころから。
この天使を愛し、いつか自分だけを見てくれますように、と願い――――――。


だから。
実際に、目の当たりにすると、かえって手がつけられなかった。

想像だけのセックスなら、何度もした。
いつもツレない天使を組み敷いて、体中舐め回して、思うまま貫いて。
それなのに、いざ実際に抱くとなると、思ったように体が動かない。

「どうした?」
服を脱がせただけで、一向に触れない俺を不審に思ったのか、クラトスが問いかけてきた。
「いや……、どうしようかな、と思って」
俺が困ったように応えると、クラトスは苦笑した。
「そうか。やはり、男の私が相手では、面白くないだろう」
「ち、違うって! そんなんじゃない!! その……、なんか、何ていうか…………、」
口ごもりながら、小さな声で白状する。
「もったいなくて」
俺はクラトスをギュッと抱きしめた。そして、クラトスの素肌の太ももに、自身の昂りを押しつける。
「つまんないワケないだろ。ほら、こんなにアンタを欲しがってる」
すると、クラトスはぱっと顔を赤らめた。
「ゼロス……!」
「ずっと、こうしたいと思ってた。あんたとひとつに繋がりたいって。いっぱい泣かせてやりたいとか、みんなの前で犯してやろうかとか、なんかスゲーことも考えてたけど……」

クラトスは、目をまんまるにしている。
びっくりしただろ。
でも、俺はずっと、そう思ってきたんだ。
アンタの側で、剣や魔法の修行をしたり、勉強を教わったりする間にも。

「でも、今は、何よりも大切にしたい……」

抱きしめた体から伝わってくる体温。
その肌の感触だけで、しびれるように感じてしまう。
多分、ものすごく余裕がないのだ。

認めたくはないが、あまりにも長いこと想い続けていたから、手にした途端、びびってしまっているのかも知れない。
こんなことで、あんたを気持ちよくさせてやれるんだろうか。

手始めに、白い首筋に口付けて強く吸い上げ、所有の印を付けた。
「……ん、」
クラトスは、その感触に眉をひそめたが、抵抗はせず、大人しくしている。
そのまま、胸に唇を滑らす。
かわいらしく立ち上がった突起を口に含むと、不意に声が上がった。
「あぁっ………!」
初めて聞く声。
いつもより高く、そして甘く。
「天使様……、気持ち良い?」
「ん……、ゼロス…っ!」
胸に刺激を与えながら訊くと、クラトスは俺の髪をくしゃりと掴んで、頭をかき抱いた。

なに?
もっと欲しいの?

「ねえ、気持ち良いトコ、教えて。………どこが感じる?」
低く囁くと、途切れ途切れの声が返ってくる。
「そ、んなの、わからない…! お前が、見つけ出せっ……!」
「…………りょーかい」

この期に及んで強気なのが、またそそる。
俺は、さらに下へと手を伸ばした。

「じゃあ、ここはどう?」
「っ………! そこは…っ!」
「気持ちいいでしょ?」

緩く勃ち上がりかけているクラトスのものを、やんわりと握って、上下させると、みるみる質感が増す。

「ん、あっ、あぁ……っ!」
「可愛いよ、天使様」
「はっ、ふ、あっ、ぜ、ゼロスっ………!」

そのまま夢中で弄んでいると、しばらくして、天使は俺の腕の中で果てた。
初めて見るイク瞬間の表情は、最高に可愛らしかった。
想像していたよりも、ずっと。

はあ、はあと荒く息をつき、潤んだ瞳でこちらを見上げるクラトス。
その瞳と目を合わせると、意外なことを言った。

「私も……、おまえを気持ちよくしてやりたい」
クラトスは、言うなり俺の下半身に手をのばした。
「え?! ち、ちょい待ち……、」
そして、限界まで張り詰めた俺をキュッと握る。

「だ、ダメだって! 今触られたら…、ん、くう…っ!!」
「……あ!」
「!! 悪い…っ!」

クラトスの色を含んだ声に興奮し、ぎりぎりまで我慢していた俺は、少し触れられただけで思わず達してしまった。

クラトスは、どうしよう、といった表情で、俺と、俺の出したものに汚れた手を交互に見つめている。

う、嘘だろ……。
ショックと、情けない気持ちでいっぱいになる。

こんなこと、今までただの一度だってなかったのに。
よりによって、こんな大事な日に。

「本当にごめん……」
俺はもう半泣きで、クラトスの上に倒れ込んだ。
するとクラトスは、優しく微笑み、汚れた手を自分の口元へ持って行った。
「え? おい、クラトス……!」
「ん……、ゼロス……」
その手に付いた白濁を、ぺろりと舐め取る。
「な、何してんの?! 汚いって!」
「何故? そんなことないだろう。おまえのものなのに」
「え………?」
「いいのだ。私も、ずっとこうしたかったのだから」

その言葉に、驚いて顔を上げる。
まさか、天使様が、そんなことを思ってくれていたなんて。

「じゃあ、何で今までOKしてくれなかったの……?」
「不安だったのだ。体を差し出したら、おまえが心変わりするのではないかと。それに、私は男だ。心の繋がりだけならまだしも、肉体関係など持ったら、おまえの人生に傷がつくのでは、と恐れた」
「バカだな……、そんなこと、心配してたのかよ」
「心配するに決まっているだろう。おまえを……愛しているのだから」
「クラトス……!」

そうだったのか。
俺たちは、随分回り道をしたんだな、と思った。
でも、決して無駄なことではなかった、とも。
お互い、相手を大切にしすぎただけだ。

「ところで、ゼロス。わ、私も、していいだろうか?」

俺がしみじみと幸せを噛みしめていると、クラトスが恥ずかしそうに聞いた。

「え? 何を?」
「その……、先程の、続きを。おまえを、気持ちよく……」
「?! …ちょい待ち! 天使様?!」
「嫌でなかったら、させてくれ」

そう言うと天使様は、体をずらして、俺の足の間に顔を埋めた。
それこそ、何のためらいもなく。
柔らかい口内に、くちゅり、と包まれて、俺は思わず声を上げた。

「うぁっ……!!」
まさかの、クラトスの行動。
あの堅物の恥ずかしがりやが、こんなことをするなんて。
「て、天使様……っ!」
体を起こして下を見ると、俺のものを口いっぱいに頬ばりながら、見上げる天使と目が合った。

うわ……、エロすぎる。
するとクラトスは、何かを思い出したように、一旦口を離した。

「そうだ。これを使ったほうが良かったか?」

そう言って、先ほどのストロベリーの香りのボトルを手に取る。
「え?! な、何すんの?!」
俺は慌てた。
ちょ……、まさか、アンタが上になるつもり?!
それはなんとしても阻止しなければと慌てていると、天使はボトルの説明書きを見ながら言った。
「いや、ここに、オーラルセックスに使える、と書いてあったから。そのために用意したのではなかったのか?」

――――そうなの? それは知らなかった。

「違うよ。ソレはあんたの中に入るときに、なるべく痛くしないようにって……」
そう言うと、クラトスは赤くなった。
「そ、そうなのか。私は、てっきり口でして欲しかったのかと……」

それで、さっき味見してたのか。
まいったな、もう。

「で、では、口で……は、しないほうがいいか……?」
「いや……、もちろん、してくれたら嬉しいけど」
「そうか。ならば……」

クラトスは、ボトルの液体を手に取り、俺に塗りつけると、ふたたびそこに顔を埋めた。

「んっ、く、クラトス…!」
「んっ、んむ……!」

甘いストロベリーの香りの中、ちゅ、ちゅぽ、と濡れた音が響く。
大きく膨張した俺のものを咥えているクラトスは、ちょっと苦しげながらも、どこか、恍惚とした表情をしていた。

「ムリ、しないで、天使様っ……!」
「ん、む、無理など、していない。………甘くて、おいしい……」

こ、コラ!
何てことを言うんだ、このエロ天使は!!
そんなことを言われたら、またすぐに達してしまうではないか。

「ね、クラトス、俺サマもうダメ……。お願い、挿れさせて?」
熱く、やわらかいだろう、その中へ。
俺が頼むと、クラトスは、チュポン、と口を離した。
そして、少し不安そうに尋ねる。

「そこまでして、後悔しないか?」
「いや、するわけ無いだろ? つーか、それ俺のセリフだからな?」
「そうか……、では、私はどうすればいい?」
「じゃ、うつ伏せになって」

お願いすると、天使は素直にうつ伏せになってくれた。
綺麗な尻に、目が釘付けになる。
誘われるようにその腰を持ち上げ、膝で立たせると、羞恥の声が上がった。
「! ゼロスっ……?!」
「ちょっと、じっとしててね」
白い双丘の谷間に、先ほどの液体を垂らす。
「……っ!」
ひんやりとした感触に、クラトスが体を震わせた。
俺はそれを塗り広げ、入り口の周りを解す様にマッサージしてから、ヒクついている蕾に、唇を寄せる。

「なっ……、何を、ゼロス……!!」
「んー……。ホントだ、甘いな、コレ」

そのまま舌を押し当て、ぬるり、と差し入れた。
「んあっ、ダメだ……っ! そんな所っ……!!」
「ん、む……、」

むせ返るようなイチゴの香り。
そして、入れた舌が強く締め付けられる感触。

早く、ここに入りたい。
もう、限界だ。

何度か出し入れした後、舌を抜いて、クラトスを仰向けにひっくり返した。

「いい? ちょっと痛いかもしれないけど……」
俺のものを押し当てると、クラトスは息を吐いて、体の力を抜いた。
そして、俺の首筋に腕を絡める。
「ん………。来てくれ、ゼロス………」
「っ、クラトスっ……!!」
誘われるまま、俺は、クラトスの中に、その身を沈めた。


そのあとは。

もう、ひたすら夢中で。


気づいたときには、クラトスの中に、想いのすべてを放っていた。




「はぁ〜……。俺、本当に情けなかったな………。ごめん」

全部が一通り終わってから、俺はクラトスの肩に額をくっつけて、ひたすら反省していた。

初めての夜は、もっとロマンティックに酔わせてやりたかったのに。
握られただけで、すぐイっちゃうし。
いろいろと慌てちまって、取り乱すし。
おまけに天使サマにあんなことまでさせて。
もう、軽く涙が滲みそうだ。

ところが天使は、そんな俺の頭を抱きしめると、静かに言った。

「いいではないか。これからだって、何度でもするのだろう?」
「………え」

なんだ?
なんか今、すごいことを言われた気がするんですけど。

「クラトス?」
俺が二の句を継げないでいると、クラトスは穏やかに続けた。
「急がずとも、徐々に分かり合って行けば良いのではないか? 互いにな」
「……ほんとに? それ、本気で言ってる?」
半ば涙目で見上げる俺に、天使様はにっこりと微笑んだ。
それこそ、見たこともないような、優しいエンジェル・スマイルで。
「ああ、もう…っ、天使様っ、大好きだ―――っ!」
力の限り抱きしめる俺を、クラトスも、ふわりと抱き返してくれた。

年齢だけは大人になって、この人と対等になったと思っていたけど。
やっぱり俺は、まだまだガキなのかもしれない。
優しく包み込まれることが、こんなにも心地良いなんて。

なぜだか無性に愛しくて、ますます強く、縋る様に抱きついた。
これが女の子だったら、きっとつぶしちゃってるな、というほどの力で。
でも、クラトスは、こんな風に全力で抱きしめても、時には体当たりでぶつかっても、決して揺らいだり壊れたりしない。
 
強くて、しなやかな、優しい、俺だけの天使。


今日は、ごめん。
明日は、もっと上手に愛せるよう、頑張ってみる。

だから、これからも、ずっと側にいてね。
 
俺の全てをかけて、あんたを絶対に、幸せにしてみせるから。

end.


prev / next

[ back to top ]


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -