BLACK HASH | ナノ
「お前も仲間か」
暗闇の中、最後に聞こえたのは、
「一緒に来るか?」
力強い、けれど、少し切なそうな声と、
『…はい』
掠れて渇き切った自分の声だった。
BLACK HASH!
『ドルチェットさん。おはようございます』
「おー、☆。早いな」
ここは、爽やかな朝のあいさつが似合わない、裏路地の地下
ちょっとワケありの"ヒト"たちが集まる酒場。
その名も、デビルズネスト。
『ドルチェットさんも、はやいですね』
「んー…まぁ、体はまだ眠いって言ってんだけどな。犬ってもんは規則正しくて困るぜ」
『私もまだ、眠いです…』
二人は一緒のタイミングで欠伸をして、お日様の光を浴びに階段を登る。
『グリードさんやマーテルさんたちは、まだお休み中ですか?』
「ああ、まだ寝てる。まぁロアはもうすぐ起きるだろうけど、グリードさんやマーテルは夜型だからなぁ。なんせ夜の男と蛇女だからな」
今度は一緒のタイミングで背伸びをして、屋根の上に登った。
「☆は偉いな、ちゃんと起きて。猫って夜型だろ?」
『眠いですけど…お仕事がいっぱいあるんで!』
「そーかそーか。つくづくよくできた奴だな、おまえは」
そう言って、ドルチェットは☆の頭を撫でた。
「ここで夜の仕事とか裏の仕事以外のことちゃんとしてんのは俺とおまえぐらいだぜ」
『恩返しぐらいは、しないと』
「俺に負けないほどの忠誠心だな、おまえ本当に猫か?」
『猫だって、やることはちゃんとやります!』
バカにすんなとばかりにぷいっとそっぽを向いてしまった☆に、ドルチェットは悪かった悪かった、とまた頭を軽く撫でた。
そうしてやると、不機嫌なはずなのに☆の真っ白な耳やしっぽがぱたぱた揺れた。もし猫の姿だったら、ゴロゴロと気持ちよさそうに喉を鳴らしているところだろう。