エイプリルフール企画 | ナノ




レッドもどこか悪いのかなぁ、とそわそわしながら待っていると、思っていたよりも早く待合室に戻ってきた。

何だった?と聞いても「…いや」と返してくるだけで、答えはくれない。もしかして本当にどこか悪かったの、と心底不安になる。

するとレッドは、私の頭にぽんと手を置いた。


「…別に大した用じゃなかったから大丈夫だ」

「ほんと?」

「ほんと。…だからそんな顔するな」

「…ぅ、」


頭に置いてあったレッドの手が移動して、無意識に溜まっていた涙を拭う。

基本的に無表情なレッドだけど、ちょっと困った顔をして、目尻にキス。
突然のことにポカンとする私を見て満足そうな顔をして、帰るぞ、と言って歩き出した。

しばらくして正気に戻った私は、それを慌てて追いかけたのだった。



-----


《プルルル、プルルル》

「あれ、電話だ」


家に着いていつも通りまったりと過ごしていると、突然家の電話が鳴った。

家の電話が鳴ったのは久しぶりだなぁなんて思いながら電話を取ると相手は、


「よぉ。倒れたって聞いたけどもう大丈夫なのか?」

「あっ、グリーン!」


レッドと同じくもう一人の幼なじみ、グリーンだった。


「久しぶりだな。で、体調は?」

「うん、もう大丈夫だよ。…それより何でグリーンが知ってるの?」


トキワシティでジムリーダーをしていて多忙なはずのグリーンは、私の体調がどうのこうのなんて言ってる暇はないはずだし、それより情報網が見当たらない。


「何でって…レッドに聞いたからに決まってるだろ」

「え、レッドが?」

「ああ、昨日の昼頃に電話あったんだよ。茶化してやろうと思ったのに[☆が倒れたんだけどどうしたらいい]、なんて真剣に聞いてくるもんだからビビったな」

「…そうだったんだ…」


仲はいいんだけれど、なんて言うか…レッドはあまりグリーンと連絡を取りたがらない。

なのに、昨日は余程慌てたのか。不謹慎だけど、そんなに焦っていたレッドを見てみたかった、なんて思ってしまった。


「1日早いエイプリルフールかと思ったぜ、ホント」

「…エイプリルフール?」

「ん?あぁ。今日4月1日だろ。…まぁ仮に今日だったとしてもレッドがそんな下らねぇことするとは思わないけどな」

「確かに…」

「お前もたまにはレッドに嘘ついてやれよ、いつも虐められてる仕返しに」

「う、うーん…例えば?」

「そうだな………、」








---------------------







遠くで、シャワーの音が聞こえる。

私が先にお風呂を出て、今はレッドが入っている。


リビングのソファーに座り、汗ばむ手をぎゅっと握った。


…レッドがお風呂から上がったら、やけにシリアスな雰囲気を醸し出して、嘘をついてやるんだ。

レッドの驚く顔を想像してにやける自分に気づき、ぶんぶんと首を振った。

…あ、浴室の扉を開ける音……
…時は迫っている。

果たして私が、あ、あのレッドを、だ、騙せる、だろうか?

…臆するな!す、少しでも変な雰囲気出してたら絶対ばれてしまう。ここはいつも通り、いつも通り…


「…どうしたんだ、そんな所で」

「!!……レッド、…あのね…」

「……?」

「大切なね、話があるの…」

「……」


緊張して声が震えたけど、逆にリアリティあってよかったかも。
とりあえずレッドに隣に座ってもらって、私の持っている最大級の勇気を振り絞る。



「……あの…あの…ね。…妊娠、しちゃったみたいなの……っ!」

「………」


……………。

……あれ?


いつまで待ってもレッドはなにも言わない。
不安になっておずおずと顔を上げてみると、レッドはじっと私を見つめていた。


「…レッド?」

「………ああ。知ってる」

「………」

「………」

「…………え?」

「………」

「……え?え?……ええっ!?」

「どうかしたか」

「え?…知ってる、て、」


どういうこと?

私は勿論嘘のつもりであんなことを言った訳で、でもレッドはそれを知ってるって、


「…薬貰う前に俺だけ呼ばれただろ。」

「え…う、うん」

「あの時に言われた。☆が妊娠してるって」

「…………………………………」



…………



☆ は めのまえ が まっしろ に なった…



………………………


え、ちょ、ちょっと待ってええええ何この想像だにしなかった展開!?

確かにいつできてもおかしくないような状態だったけど…でもでも、もしそうなら何でレッドだけに伝えるの!?




「そん…え、わた、わたし、に、妊娠、してる、の!?」

「自分でも言っただろ」

「だだ、だってそれは…」








「……嘘のつもりで言った?」







「…………え」






パニックだった頭が、一瞬にして固まった。
何とか落ち着いてレッドを見上げると、ぽん、と頭に手を置かれ、

そしてにやり、と悪い笑顔をされた。



…………え、もしかして

もしかしなくても、




「わたし…騙、され、た?」

「人聞き悪いな。エイプリルフールだろ」

「………」



うわあああああっ!レッドに騙されたああああ!!

でもほっとした!けど複雑!なにこの微妙な気分!


…それよりも、まさかレッドの口から"エイプリルフール"って言葉が出てきたことにびっくりした。


「昔散々な目に遭わされたから嫌でも覚えた」

「そ…そうですか」


勝手に思考読まれた。

…何だかもう一気に疲れて、ソファーの背もたれに頭を預ける。



…すると、レッドが覆い被さってきた。


「…え、なに?」

「知らないのか?エイプリルフールの掟」

「お…おきて?」


なにそれ、聞いたことない。
軽く嘘を付いて、わぁ騙されたやらバレちゃったやらをやって終わりじゃないの?



「…嘘を見破られた側は、見破った側の命令をその日は聞かなきゃいけないって言う掟」

「…えええ!?なにそれ、初耳だよっ!?」

「一方的に嘘付かれるだけじゃ不公平だろ」

「た、たしかに…」

「そう言うわけだから、今夜は寝かせない」

「……………いやだあああああああああ!!!!」










ちなみに最後の掟はレッドさんが捏造したものです。せっかくのエイプリルフールだから、レッドさんも有効活用したようです(笑)

「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -