エイプリルフール企画 | ナノ
「疲労からくる風邪ですね、心配は要りませんよ。念のためにお薬を出しておきますから、しっかり飲んでしっかり休んでくださいね」
「はい、ありがとうございます」
優しそうな先生にそう言われ、レッドと私は診察室を後にした。
…昨日、昼ご飯を作っていたときのこと。
私は急にめまいに襲われて、キッチンで倒れてしまった。
その音に気付いたらしいレッドが駆けつけて、私をベッドまで連れて行ってくれた。
さらに熱のあった私を見てレッドは救急車を呼ぼうとしてくれていたけど、かすかに意識のあった私はそれを全力で阻止した。
だって…何か…恥ずかしいから…
それから攻防が繰り広げられ、結局、明日の朝に病院に行く、ということで和解したのだった。
「大したことなくてよかった!…救急車も呼ばなくてよかった」
「………」
「…レッド?」
薬を貰いに行こうと歩みを進めながらレッドに話しかけるが、返答ナシ。
どうしたのかな、と顔をのぞき込むと、
…思いっきりでこぴんされた。
「ひえっ!い、痛い!」
「ああ、よかったな。"今回は"」
痛みと驚きで閉じた目を開けると、レッドはどことなく怒っているような表情をしていた。
「え…?」
「でも、もし風邪じゃなくて重い病気だったらどうしたんだ?一刻を争う状態とかだったら、恥ずかしいとか言ってる場合じゃなかっただろ」
「うぅ…だって」
「だって?」
「…ごめんなさい」
…目に見えない威圧で、言い返すことができなかった。
…でも、それってすごく心配してくれてたってことだよね。だってあんなに必死なレッド、見たことなかった。
意識が朦朧としていたけど、レッドはずっと私の手を握っていてくれたり、頭を撫でてくれていたり、☆、と名前を呼んでくれていた。
何だか思い出したら嬉しくなっちゃってニヤニヤしてたら、しかめっ面したレッドにまたでこぴんをされた。
「……っ、同じとこばっかり…」
「…ほら処方箋、とっとと出す」
「…はぁい…」
「☆さん」
レッドに睨まれつつ受付に処方箋を出したとき、背後で声がした。
振り返ると、さっき診察をしてくれた先生がいたので、首を傾げる。
「?」
「あ…☆さんの旦那さんの方。少しいいですか?」
「だっ…旦…!?」
「…はい」
レッドは、旦那さんじゃないです、と言おうとした私を制して先生の方へ黙ってついていってしまった。
私ははてなマークを浮かべつつも薬を受け取って、仕方ないので待合室のソファーに座ってレッドを待っていることにした。