short | ナノ
上のシリーズというかなんというか
今、私の手の中にある「黄昏の旅団」のゲストキー。それを使ってギルドルームに入ると、…今となっては名ばかりとなってしまったが、マスターのオーヴァン、サブマスターの志乃…それと、最近無事に帰ってきた、オーヴァンの妹…アイナがいた。
入るや否や志乃が立ち上がり、その綺麗な眉を顰めてわたしを見つめた。
え、な、なんだろう?志乃がご機嫌斜めなんて…、こ、こわい!
「☆。待ちくたびれちゃった」
「えっ!ごめん志乃、わたし、志乃と何か約束してたっけ…!?」
「ふふ、冗談。」
「…な、なんだあ…!…よかった」
…どうやら心配は杞憂だったようで、こっそり胸を撫で下ろす。ハセヲよりパイよりオーヴァンより、なにより志乃が怒ると怖いのは、元旅団では暗黙の了解なので、内心物凄く焦ったのは内緒だ。
「☆!」
「わぁ、アイナちゃん。今日も元気そうだね」
「うんっ、今日はとっても調子がいいの」
もふっと抱きついてきたアイナちゃんの頭を優しく撫でると、嬉しそうに笑ってくれた。交わした言葉にちらりとオーヴァンを見ると、機嫌が良さそうに微かにに笑み、頷いた。
…いつの間にか旅団のメンバーはとっても減ってしまったけど…寂しいだなんて思わない。ハセヲ達も遊びに来てくれるし、逆にみんなのところへ遊びに行ったりもする。
旅団の初期メンバーに比べれば仲間もすごく増えて、毎日わいわいがやがや楽しくて。みんなあまり口にしないけれど、志乃やオーヴァンが帰ってきたのに加えて、アイナという仲間も増えて、特にハセヲやタビーは、とっても毎日嬉しそうだ。
勿論、私だって嬉しい。いくら仲間が増えても、大事な二人がいないと、心にぽっかり穴が空いたみたいで。二人が帰ってきてくれた時、大泣きしてしまった。その時のことは今でも皆によくいじられてしまったりしている。
「みんな、これから何かするつもりだった?」
「いや。俺達も特に目的があって集まったわけではなかったからね…どうしようかと話していたところだ」
「そうなんだ。うーん、どうしよう」
クエストもいいし、ギルドショップ巡りなんかも…と思案していると、
<ポーン>
「…ん?メール、来たみたい。」
どうやら志乃がメールを受信したようで、何やら操作をし始めた。
「…ごめん、呼び出しが来たから、ちょっと言ってくるね?」
「あ、うん。分かった、行ってらっしゃい」
「あとは”きょうだい”水入らずで、ね?」
「………、…ああ、そうだな。そうさせてもらう」
志乃はひらりと手を振り、ルームから出て行く直前で、オーヴァンに意味ありげな笑みを浮かべた。
「んー、そうだね、せっかくだから…志乃の言うとおり、兄妹水入らずでどこか出かけてみたら?わたしは丁度行きたいエリアがあったから、二人きりで…」
「やだ、わたし☆と出掛けたい!」
邪魔するのも悪いと思って首を傾げるも、ずっとおとなしく撫でられていたアイナちゃんが勢いよく顔を上げ、少し不機嫌そうに言い放った。
「…アイナもそう言っていることだ、遠慮はしなくていい、☆。…そうだな、”きょうだい”で…出掛けようか。」
「うん?そう?」「わたし、☆の、その行きたいエリアに行きたいな」
「え、いいの?アイナちゃん」
「うん!」
「そうだな、そうしよう。☆、いいかな?」
「うん、勿論だよ」
オーヴァンの少し矛盾した言葉に首を傾げるも、アイナちゃんの可愛いリクエストによって、私の行きたかったエリアにお出掛けすることが決まった。