堀さんと宮村くん47話のパロディです。 キャラがキャラを殺す描写があります。
気付くとそこに顔があった。アイツの顔だった。いつもの威勢は何処へ行ったのか、酷く青褪めた顔だった。 そいつは口数も少なくて、けれど、酸素を求めて鳴らす喉の音だけが、短く浅く騒がしい。いつも喧嘩腰に俺を煽る口は、今は阿呆みたいに開いている。
「……ジャ……ン……」
俺の名を呼ぶ声を聞けば、手のひらの中に震える喉仏を感じた。暗闇に目を凝らす。そいつの息を奪うものがぼんやりと見えた。
(あれ……?)
そいつの首を捻り潰さんとばかりに握っているその手は、腕は、俺の肩へと繋がっている。
(何してんだ、俺…………?)
跨がれて地面に縫い付けられた体躯は、知覚した途端にみるみる動きを小さくしていく。そして終いには動かなくなった。
「エレン?」
やっと発した声は驚くぐらいか細く震えていて、けれど間違いなく俺のものだった。エレン。もう一度その男の名を呼ぶ。返事は無かった。
荒い息はまだ聞こえる。
犬のように速い呼吸音は、エレンではなく俺のものだったのだ。
(は?)
エレンは静かだ。
(え?え?
──え?)
どっと吹き出す汗が兵隊服に染みる。
エレンは、動かない。
(死んだ?殺した?俺が?なんで、違う、理解が、追い付かな────)
「何してるの?」 「え……?」
混乱する俺を呼び止めたのは。 今一番会いたくない最愛の人。
「何をしているの?」 「何も…してねえよ……ッ!!」
いとしいその姿がただただ恐ろしくて、掠れる声を張り上げた。いつもと変わらぬ筈の言葉は凍えてしまう程冷たく感じる。俺は、怯えていた。
「……そう。ならいい」
明らかに挙動不審な俺を、ミカサはたいして気に止める様子もない。俺の下にいるこいつが見えていないのだろうか。恐る恐る顔を覗くと、殺したエレンと目があった。
そして、殺した筈の死体が口を開けた。
「俺が死んでも、ミカサがジャンの所に行く訳じゃねえよ」 「…………るさい……」
そんな事は。
「うるさいうるさいうるさい……!!」
そんな事は、痛いぐらいわかってる。
まるで引き寄せられるかのように。その首を手にかけて。体重を乗せて。暴れる腕を押さえ付けて。握って。潰して。砕いて。
そうやって結局6回エレンを殺した。
寝覚めの悪い、朝だった。
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