星空槍剣 (0)
0914 00:27


瞬きをする暇さえも無かった。

偶然だった。お互いを見つけて、武器を取る前に言葉を交わした、その瞬間。まるで狙ったかのように星の光が流れ落ちたのだ。11月の空は昔ほどではないが良く澄んでいて、星屑は戦禍の血糊を洗い流すかのように森へ、街へと降り注いだ。
言葉を失う程の絶景というものがこの世には存在するのだ。
木々の隙間から見える満天に散らばる星達の残骸は、確かに、俺達から会話を奪った。

「燃え尽きるのがうつくしいだなんて、愛された方は堪らないだろうな」

瞬いては消える流星群は、私達の呼吸みたいだった。

塵が流れるのをやめたから、私は星読みをした。
私達の星座は、数え方が変わってしまったからわからなかったけれど。夏に生まれた貴方と冬に生まれた私の間を彩る空を。水槽に混ぜ込んだミルクの海を。節くれだつ指でなぞり、結んで慈しんだ。月の無い夜空はたしかに過去と繋がっていた。

私達は還らなかったし、眠らなかった。地面にごろんと横になってつめたい空気にたゆたっていた。

「向こうの空が白んで来ている」
「このままでは朝が来ますね」
「ああ、叱られてしまうな」
「いいんですか?」
「お前こそ」

悪戯を覚えた子供のようなやり取りが、切なく思えた。この時間の終わりが見えてしまったから。

「ディルムッド」
「ああ」
「泣き方をおしえてください」
「どうして?」

わたしたちはこれからきずつけあうのに、宇宙はこんなにもうつくしいから。

擦り減っていく。摩耗していく。青は焦げ付いて、赤は染み付いて、祈りは足元に、願いは遥か上空に。スプーンで掬えそうな星屑にだって届かない。さわれない。こんな自分が何を救う?


だれに聞いたって満足できやしないから、答えなんて期待していないのです。


(不幸せなにんげんがふたり揃って幸せのかたちをとれるよう、その道筋を、その訳を、どうか)
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -