君と僕らの話 | ナノ





「はっは、はひ、はじめまして!」

『はじめましてー
 めっちゃ可愛い、ふわふわしてる
 食べたい。絶対甘い。わたあめみたい』

バシッ

「怖がってんだろーが」



彼女と夏祭り



どんどこと騒がしい町並み。空は黒いが電気の明かりのお陰で明るい
そう、お祭り。絶賛お祭りなうですよ。

『お祭り懐かしい…!』

「楽しみですねぇ」

「ひなたんの浴衣姿…!
 かーわーいーいーっ」

『あらやだぁ、ありがとぅー』

「おばさんみたいなだよ陽奈」

『ていうか君たち
 こんな可愛い後輩いるなら真っ先に
 報告しなさいよ』

「お前がさっきみたいにするから
 あんま言わなかったんだよ…」

『あら、後輩思いなこと』

「皮肉か。」


「陽奈ー、腹減った…」

要との会話を遮ったのは、陽奈の頭に顎をのせてうだうだする祐希。
君たち私の頭好きね。さすが双子。

『まあ、確かにね…』

あちこちから良い香りが漂ってきて、お腹が空いてきた気がする。
夕飯たべてないしね、

「初戦はたこやきじゃー!!」

「あーこらこら」

突っ走る千鶴と春と茉咲を冷静に悠太が止めた

「おなじものにたかってどうすんの
 バラバラなもの買って一つを何人かで
 まわし食いした方が良いんじゃない?」

「なっなるほどー!」

「すげーゆうたん!
 祭り攻略王だ──!」

『「「「(そこまで賞賛をいただくほどの
 作戦じゃない…)」」」』


**


「あーっおいし〜〜〜
 ほんとナイスアイデアでしたねっ」

「そうですか
 (買うたびに醜い闘争が
  勃発してますけどね)」


『春、一口ちょーだい』

「いいですよー
 はい、あー…」

『あーん』






ぼっ



『!?

 ふん(春)!?ほひは(どした)?』

みるみるうちに顔が赤くなっていく春を不思議そうに見ながら貰った食べ物をもぐもぐと食べる
顔を手で隠しながら春は口を開いた

「…す、すいません…
 小さい頃のくせで、“あーん”なんて…」

『?うん、平気』

そんなこと?と首をかしげて言う陽奈をチラリと見たあと、ぱたぱたと熱い顔を冷ますように扇ぐ春。

(───…、だって



  あんな…)


何年たっても変わっていないと思っていた彼女

でも、彼女も成長していることを感じた

スラッとした身体にも女性独特の丸みが少しあり、可愛らしい雰囲気のなかにも少なからずある色っぽさ。





 (…ずる)


春は1つためいきをこぼしたのだった


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