君と僕らの話 | ナノ





『遅れた遅れたぁ』

いったん家に戻ってから、風邪でお休み中である要の元へ足を進めた。


(…あ、なんか買ってこう)





彼女と風邪ぴき





近場のコンビニへと方向を変えて、ひんやりと冷たい空気に変わる。真夏はやはり暑い。今のここはまるで天国のようだ

(春はこれが好きだったよなぁ…
こっちが要で…病人には優しくしてやるか)

要のぶんは少し多めにアイスとお菓子をいれる。ほかにも悠太と千鶴のぶんも入れ、あとは祐希だけのぶんだ


『…げ、』


祐希のすきなものだと思われるお菓子が高めの位置にあった。
平均より低めな陽奈の身長にはあの高さは困る。
おかしいな、なんでアレだけこんな高いの。
なんでここの棚だけ高いの!?
いじめだ!なんて思いながらも取らなくてならないため、ジャンプをする


『ふっ!んぐっ!ぬぁ!おりゃっ!
 トリャァァッッ!!』

うお、かすった!

だいぶ他の人に迷惑かかってるかもしれないが、こっちは取るのに必死すぎて周りなんか気にしてられない。

すると、カサッと音をたてて陽奈の狙っていたお菓子がふわりと浮いた

「はい」


黒髪で陽奈よりも高めで笑顔が可愛いお兄さんが取ってくれたようだ

『あああありがとうございます!』

「小学生?お礼言えるのえらいね!
 あははっ」

あははっじゃねーよ。

今このお兄さん、小学生とか言った?いやいやさすがにないでしょ!
中学生とは言われたことあったけど!?

『高校生です!』

「うそっ」

なんでガチで驚いてんの。
お兄さんは目をみひらいたあと、スマイル100%でこちらへ向けてきた

きゃっ眩しい!

『とりあえず、ありがとうございました!
 えー…っと、』

「?
 …ああ、僕はあきらだよ
 よろしくねっ」

だされた手を握ればへらへらとした笑いをしながら陽奈の頭を撫でる。
それに陽奈は怒りながら泣いた

『陽奈です!
 あきらさん、完全に子供扱いですやん!!』

「あはは、かわいー」

『うおお!髪がボサボサにぃぃ!』


この人Sだ!ドSだ!
この100%の笑顔の裏には100%の黒いものがたまってるに違いない!
あ、こわい

『あの、あの!
 も、もう行かなきゃなんで』

「あ、そっか!
 僕も人待ってたんだよね

 じゃ、またね!
 陽奈ちゃんっ」

大きく手を振るあきらに小さく苦笑いしながら手を振り返す陽奈。
なんだかまた会える気がするのは気のせいでしょうか?






**


『遅れてごめんねー
 どーよ、風邪の具合は』

「陽奈遅い」

『だからごめんて
 お詫びにコレ、買ってきたから』

がさっと音をたててコンビニの袋を見せたらおぉ!と歓喜の声とキラキラと期待したような顔をしてくる一行。

『はいっ!
 これが悠太で、春のでー』

「…懐かしい」

「わあ!僕これ好きなんですよ!
 よく覚えてましたね!」

『記憶ってのは
 中々消えないものねぇ
 うひへへっ!

 んで、要のとー千鶴!』


「お、サンキュ
 って、量多くね?」

『要は病人だから優しくしてあげたのさ!』

「うおお!これ俺の好きなやつ!
 よくわかったね陽奈ちゃん!」

『本当!?千鶴のは迷ったけど
 好きそうなイメージだったからさ!』

「すげー!陽奈ちゃんすげー!」

『んで、祐希!』

「ありがとうございます」

皆喜んでくれたみたいで良かった
陽奈が嬉しそうににこにこしていると要の部屋のドアが突然あいた


「かーなめー
 さっき家の前でお母さんに
 会ったけどあんた風邪ひいたんだって?」

「あ、
 日紗子ちゃん」

「春くんたち久々〜〜っ」


『ひさちゃん、だ!』


あわわわと口を開いて驚く陽奈に気づいた日紗子は固まって陽奈を見ていたら今度はいきなり涙をぶわっと流した

「陽奈…?



 うわあああっっ!
 久しぶりい!げんきにじでだぁぁ!?」

『ひさちゃんこそー
 わぁ、髪ながーい』





「感動の再会中に悪いけど
 なになに!?彼女?」

「きっしょく悪いこと言うな
 ただの幼なじみだよ

 誰があんな怪力女…」

バシッ

「ってーな!
 病人殴んなよ!」

「あんたこそ病人らしく寝てなさいよ!」

『まぁまぁ2人とも!
 ピリピリしてたらよくないよぉー』

「「〜〜〜…」」

**






「ひなたん、ひなたん!」
『なに?って、うあ!?』


コソッと名前をよばれ、何かと思い振り返ればグイッと腕を引っ張られて要の布団へとダイブした

「ってーなバカ!」

『ちょっとー心臓止まるかと思ったわ!』

「でも楽しいっしょ?」

『まぁ…うん』


「でしょ?俺はやっぱひなたんに
 スーパースマイルでいてほしいからね!

 うおっ!?すっげー
 ふわふわー!」

『あははっ、なにそれっ
 ありがとう千鶴ー

 本当だふわふわだぁ』

「ちょっと千鶴さんあなた
 抜け駆けはいけませんよ」

「へっへー!
 早い者勝ちじゃばーかばーか!」

「つーかさっさと降りろ!
 お前ら」


「ちょっとさっき凄い音が…」

「千鶴と陽奈がダイブした」

「え〜〜〜〜?

 千鶴くんも陽奈ちゃんも
 駄目ですよ

 要くんはかぜ…

 わ〜〜〜〜っ!!」


『「「ええ───っっ!!?」」』


どっすーん


「ぐえっ」
「あだっ」
『ぎゃっ』

「重いよ君たちー!」
「あごうった…」

『あははっ』












「今日はごめんなさい・・・
 お見舞いっていうか…
 さらに悪化させて…」

「ほんとにな。」

「今日はゆっくり休んでください」

「何?要っち明日も休むわけ?」

「休んでお前らに不都合があんのかよ」

「いや、むしろ要っちがいない
 学校生活は快適でした」

「あ?」

『でも、あんまり休まれると
 暇になっちゃうねー?』

「ねー?」



「…あー、そうかよ…」



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