君と僕らの話 | ナノ





悠太の彼女事件(?)から翌日。みんなと屋上でやいやい騒ぐのもいいけどさすがに暑い。最近は保健室の常連でございます陽奈です。ここは天国かと思うぐらいに涼しい

『せんせー』

「ん?」

『恋とはなんぞや』

「え゛」

彼女と恋


何その驚きの顔は。ほら、でも先生ってまだ若いし綺麗だし数々の恋愛経験を…って言えば先生はまんざらでもないような顔をする。そんな先生に私は苦笑いをした
先生はこちらを向き、足を組み直した

「神崎さんはまだ若いものね
 好きとか付き合うとか…
 そういうものは全部人それぞれ
 感じ方は違うわ

 神崎さんはどう思う?」

『えーわたしー?
 やっぱ楽しいんじゃないんのかな
 あと…きゅんきゅんしたり
 先生は?』

「私?
 そうねぇ…どうかしら」


ふふふっと笑う先生に私は首を傾げた。やっぱりよくわからない。

誰かは切ないというだろう
誰かは甘酸っぱいと
誰かは難しいと
誰かは恋愛は良いものだと

結局、そういうものは人それぞれなのか。じゃあ他人に聞いてもしかたないのかもしれない

『先生は好きじゃない人と
 付き合ったことある?』

「ないわよー
 だって好きじゃないのに付き合うなんて
 私にメリットは一つもないじゃない」

確かに。とうなずく私。
じゃあやっぱり悠太は高橋さんに気があったわけだ、じゃないと付き合うはずがない。

んー…難しいなぁ

「でもまぁ、
 神崎さんも恋したら分かるわよ」

ふふふっと微笑む先生に私は唸った。どうだろ、好きとか付き合うとか私が一番考えたことのない課題だ

『せんせ、
 私好きな人できたらいっぱい
 相談しにくるね』

「えーいやよー
 ピチピチの女子高生ののろけ
 なんか聞いてもつまんないじゃない」

『えー』

ひどーいとクスクス笑えばガラリと保健室のドアが開けられた。振り返れば祐希の姿が。どうやら迎えに来てくれたみたいだ

「いくよ、陽奈」

『うぃーっす
 じゃーね!先生!』

「はい、さようなら
 あっ最近神崎さん保健室乱用
 しすぎだから浅羽くん、止めてあげてね」

「わかりました」

『えー!!?
 涼しかったのに〜』



**

「いやーこのたびは残念だったね!
 ふられんぼう将軍!」

その翌日、どうやら悠太ははやくも高橋さんにふられてしまったらしい
いやいや、別に嬉しくはないけどなぜかすっぽりと空いてしまっていたような胸が埋まったような気がする

「まあ女は星の数ほどいるっていうし!
 元気出しんしゃい!」

「なんか…
 とりあえずなぐさめる空気だけは
 感じられませんよね…」

「オレらに内緒にしてた罪は重いんだぜ〜
 ってなこった」

「ああそこね…まだそこを言うのね

 じゃ罪ほろぼしにジュース奢って
 あげますよ」

「マジで!?」

「えっ
 いくらなんでも悪いですよそんな…」

「いいよいいよ
 陽奈もおいで」

『おーなになにー
 好きなもん買ってくれるのー?』

「お兄ちゃん優しいからね
 あ、でもお金なくて2本しか
 買えないから皆でまわして飲んでね」

悠太の一言に要と千鶴と春は肩をビクリと揺らした。祐希は漫画に夢中だ。
空気の重くなる三人をむしして悠太は屋上をでる

「陽奈ー」

『なにー?』

「祐希から聞いた
 別に彼女ができても構ってあげるよ」


悠太の言葉に少し驚いた。少し前を歩く悠太から目線を外し小さく唸る陽奈

『そっか、でも…
 悠太の彼女さんに悪いよ
 他の女がベタベタ甘えちゃ』

「はぁ…

 陽奈はいつからそんな遠慮がちに
 なったの
 そんなの気にしないよ、お兄ちゃんは」

『!

 …悠太ぁぁ…
 絶対だよぉ…構ってくれなきゃ
 寂しくて泣いちゃうからね』

「よしよし」


「ど───ん」

「!!?」

『祐希っ』

「ちょっ…と──
 お兄ちゃんこの歳でギックリデビュー
 するとこだったよ?
 なんですか」

「ゆーたが陽奈泣かせたからー」

「えー」

『ゆーき違うよー』

「まぁそれは冗談で…
 ついてったげる」

「いいよ…

 重いし」

「いいじゃん
 デートデート」

『おにーちゃん、しっかり祐希と私
 ひっぱってってね』

「えー」



少しずつ



今よりもっと


好きになれたらいいよね



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