君と僕らの話 | ナノ





「ゆーうた」
『かえろーっ』

「…あー…
 えーと…ですね…」

「うん?」

「ちょっと今日一緒に
 帰れないっていうか…
 用事できたから先帰ってて」

悠太の言葉に皆がピクリと反応した。絶対高橋さんだ、用事って絶対高橋さんだ…みんなが思っているはず

「…………用事って?」
「…………用事です」

『ちなみにどこ行くのかな
 誰と行くのかな
 女の子?ねぇおんな「あれー!?どうしたのかなこの子!暑さで頭やられちゃったかな?ん?」

『んー!(苦しいっ)』

千鶴にぐいっと手で口を塞がれズルズルと引きずられる。痛い痛い痛い!

「(なに言ってんのひなたん!)」
『(だってー!!)』

「でわみなさん帰りましょうか」

悠太に別れを告げ、教室を出た


彼女と尾行


悠太に別れを告げた後、あのまま帰るなんてことはせず校門の陰に隠れていた。校門にいらっしゃった高橋さんを見て確信

放課後デートだ!!

少しおくれて出てきた悠太を見つけ仲良く帰る2人を後ろから見て皆で顔を出した

「ほらね!ほらね!
 こんなこったろうと思ったよ!!」
「ほ…放課後デート…」
『悠太が放課後デートねぇ』
「悠太もなぁ
 彼女できたらできたで報告ぐらい
 しろっつうんだよな」
「しても認めないけどね」

「尾行しますわよみなさん!
 ヒミツにされた上このまま野放しに
 しておけますか!
 っていうか憎さあまってちょっと
 わくわくしてる己を止められません!!」

「ハッキリいうなよ…」

「だ、だめですよそんな…っ」

「でも春も気になるでしょ?」
「ゔっ」

「よーしいざ出陣───」

ばんっ

「でっけえんだよ声が!」

「すんません
 ちょっとやる気と若さがはじけて…」

「って、そこ2人!!
 なんだその堂々とした足どりは!」

『いだだだ』
「いたいー」

要に頭を掴まれ連れ戻される。要が一番騒いでるよ、なんてこんな怖い顔している人に言えない…

「まじめに尾行する気あんのか!」

『でも尾行することに注意しない
 要ってずれてるよねー』

「マジメにったって尾行自体が人として
 間違った行為じゃん」

「ひらきなおんな!」


**


「うーん…」

少し離れた席で話している悠太と高橋さんを見ながら唸る千鶴と陽奈と祐希。

「どうします祐希隊員、陽奈隊員
 …ここまで順調に進んどりますが…」

「あせることはないですよ。
 俺たちまだガラスの十代。
 ヒビが入るのはたやすいさ」

『寂しいなぁー
 あーポテトうま
 ねー要』

「…ヨウじゃなくてカナメだアホ
 小説じゃ分かりにくい間違い
 してんじゃねーよ。誰かと思ったわ
 しかもそれ、おれのポテト」

「小説とか出しちゃだめですよー
 タブーですよー」

「陽奈ちゃんは寂しいんですか?
 悠太くんに彼女ができたら」

『あたりまえだよー
 だって悠太がもう構ってくれなく
 なっちゃうじゃん
 昔から悠太はお兄ちゃんみたいな
 感じだったのにー…』

「なんだと…それは大変だ」

だんだんと眉が下がっていく陽奈はストローを吸いながらすこし祐希に寄り添った。
もしかしたら悠太にかぎらず皆彼女とかできたら寂しいもんなのかもしれない、みんな構ってくれなくなったら…あ、考えるのやめよ

「これを機にお前らは兄離れしろ
 甘えすぎだぞ悠太に」

「えー無理ー」

『じゃあ春に甘えるー』

「えへへ」

「春、ぜったい甘やかすなよそいつを」

春にベッタリとくっつく陽奈に、にこにこする春。これはダメだ。只の親子にしか見えない

「ハイハイ!
 みんなでメールだしまくって着メロで
 ジャマするというのはどうでしょう!?」

「びんぼー学生がアホなことに
 金使うなよ」

「悠太けっこうマナーモードに
 してること多い子だから」

「ぬ、ぬお〜〜〜〜〜っ
 敵は手強いぞ春ちゃん隊員〜〜っ」

「え
 僕はべつにジャマする気は…

 もうちょっとふつうに祝福して
 あげましょうよ
 友達が好きな人と両思いになれたん
 ですから、ね」

春の言葉に一瞬みんなが止まる。

「ゆうたんあの子のこと
 好きだったの?」

「え?」

「んな話きいたことねぇな」

『悠太、
 秘密主義だったりするからなー』

「んーまあ
 今は好きじゃなくてもつきあっちゃう
 パターンけっこうあるしなあ」

「うんうん」

「でも悠太くんがそんな…」

千鶴が胸を手でやっていたが、千鶴みたく悠太は別に変態じゃない。たぶん悠太は何か理由があって…のはず

もしかしたら、本当に好きなのかもしれないけど

「あっハイハイ!
 紙コップで糸でんわ作って片方あっちに
 置いてくるというのはどうでしょう!?」

「それ誰が置いてくるんだっつの…」

「投げ込めばいいじゃん
 こっからポーンて!」

「申し訳ございませんお客さま
 それは他のお客さまのご迷惑に
 なりますので…」

「あ、すいませ…」



「「「わ゛────っっっ」」」


こっちがふざけてる間にいつの間にか放課後デートが終わって目の前に現れた悠太。
しかも、私たちの尾行がバレバレだったらしいし

『ゆーたがこそこそしてたから
 私たちもこそこそした』

「いや、こそこそはしてなかったかな
 全然。」

「彼女できたくせに悠太が何も
 言ってくれなかったのが
 悪いんだもん」

「そーだそーだ!」


「…何も言わなかったのは…
 オレもちょっと…

 …アレだったけど…」

陽奈はジュースを飲みながら悠太を見て首を傾げる。なんか悠太隠そうとしてる…?


「つか、彼女さんは?」

「高橋さん?
 帰ったよ」

「…………

 ゆうたんはさあ
 あの子のこと前から好きだったの?」

「千鶴くん、」

「だって好きだった人とつきあうんなら
 超めでたいじゃん
 オレらに言えばいいじゃん

 あっ
 好きじゃないのに告白オーケー
 したから、なんかオレらに
 言いづらかったんじゃないの!?

 ねえ!」

「………

 …あの…


   ポテトが…」

「「ああ!!」」


**

みんなで帰る。
少し後ろに歩く祐希に合わせて私も後ろに歩く
少し前に歩く千鶴と話している悠太を見て口を開いた

『祐希くんよ』
「なんですか陽奈さん」

『悠太くんは何を思ってるんですかね』

「……さあ」

『ねー』
「ん」
『祐希は彼女ができたら
 報告してね』

「あー…どーしましょ」

『え゙』

「うそうそ」

『あとね、祐希




 彼女できても、

 陽奈ちゃんに構ってね』

「………」

ぽんっ
と頭に手を乗せられぐしゃぐしゃっとされる。嫌だと祐希の手を掴めばゆっくりとおろされた

「お兄ちゃんは妹を見捨てませんよ」

『!

 …うん』


いつかみんなが大人になる

     みんな離れていく


 それでも───…


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