さっきからずっと寝れない。
身体は疲れてるはずなのに一向に眠りにつくことが出来ないのだ。

────原因は分かってる。
全部この人のせい。



今日もまた身体を酷使させてしまったことは、後ほど謝るにしても。

それにしたって、

「これは反則じゃねぇの……?」

気を許しつつあるのだと言わんばかりに安らかなカイジの寝顔が、

オレの真隣にドーンとあって。

おまけに眠りが浅いのかはたまた深いのか。
どっちともとれる、これまた健やかなカイジの寝息が嫌でも聴こえてきちゃったりなんかして。

これはもう、

「可愛い……」

男の本能を刺激されまくってしまうのは致し方ないだろう。

結果どうしても寝つけないのだ。
そして今に至る。


「はぁ……」

絶賛お眠り中であるカイジの乱れた髪をそっと撫でつけながら、オレは小さな溜め息を静かに吐いた。

疲労感はあるのに寝れないって相当ツラいことだ。
今更だけど身をもって実感する。

次に目が覚めたときは目の下にクマでもできちゃってるかも。
────なんて、どうせグラサンで隠すのだけれど。

それでもクマなんて見映えが悪いし、なるべく避けたい。


「カイジ……」

寝れないよー、なんてね。などと口調を変えてみたりして、ふざけて甘えてみる。
どうせカイジ寝てるし。


……そう思ってたのに。


なんで起きるかな……。
よりによって、こんなときに。


「お前、元気だな……」

薄く目を開けたカイジはくちびるをだるそうに動かしてそう言い放った。

「……起きたの?」

恐る恐る訊ねてみれば、

「声がしたから……」

─────だから起きた。

だって……。
もしかして。いや、もしかしなくてもオレが起こしちゃった?


「悪い。起こすつもりはなかったんだけどぉ…」
「あー……」

なんだそれは。
もしかして寝惚けてるのか。

思うにカイジは可愛すぎるんだ。
こんな寝起きのときでさえ。

だから、愛しくて仕方ない。
そんな気持ちを込めておでこにキスをする。

したら「違うだろ……」だって。

てっきり不意打ちを非難するのかと思いきゃ、

「口にしろよ……」

なんとも大胆な。
オレにしてはまさに願ったり叶ったり。

というわけで、

「はいはい」

数時間前に味わい尽くしたくちびるをまた奪ってやった。

もしかしてこのまま─────?
そんな淡く甘い期待をしたのも束の間。

カイジは目を細めてキスに満足げな素振りを見せてはくれたけれど、

またコテンと首を曲げてどうやら眠りについてしまったよう。


「うわ……キス逃げじゃん」

オレは再び熱を帯び始めてしまった息子さんを持て余す羽目になったのだった。

けど、

これ以上カイジの安眠を妨害するのは良くない。
そう悟ったから。

息子さんのお相手は明日にでもしてもらえばいいや。
とりあえず自分をそう宥めて、

「おやすみ……」

カイジを抱き締めて眠ることにする。
きっと、さっき以上に目が覚めてしまったから寝れないだろうけれど。


仕方ない。
ベタ惚れするっていうのは、自分よりも相手のことを大事にするってのと同じ意味なのだから。

ここで無理やりカイジを襲ってしまうのはやはり忍びないのだ。

とは言え息子さんは少しずつ威勢が良くなるばかり。
一体これをどうしろというのか。

トイレで抜いてくることも一瞬だけ考えたけれど、どうも味気ない。

きっとカイジの身体を知ってからというもの自慰には満足出来ない体質になってしまったのだろう。
嘆かわしや。

だが、それが嫌じゃない。
むしろちょっぴり誇らしかったりして。


次にカイジが目を覚ましたときは、真っ先にオレの顔を瞳に映すはず。
その瞬間を思ってオレは幸せのあまりゾクリと背筋を震わせた。


なぁ……。カイジ。
どうやらオレの中で、アンタに対するベタ惚れ注意報は一生解除されることがなさそうだ――――。





Jul. 26,2012


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