まぁ朝はないかなと思っていた。
起きていきなりチョコを渡すなんてカイジさんはしないだろうから。

となるとこれは昼くらいか?
―――オレなりにそう目星を付ける。

が、

昼になってもカイジさんは何のアクションも見せない。

しかしまだまだ慌てない。

大丈夫。
1日はこれから始まるのだから。





で、夜になって。

未だにカイジさんからは何も手渡されていない。

いくらなんでもこれはおかしい。
だからさりげなく鎌をかけてみることにした。

「…カイジさん」
「んー」
「そろそろ1日が終わるよ」
「…あぁ」
「いいの?」
「?」

カイジさんの頭上に無数のクエスチョンマークが見える。
―――だから何?というような。

そこまで来たらさすがにピンとくる。

この人、要するに。

「忘れてる…」
「…?」

どうやらバレンタインデーという超一大イベントの存在をポカンと忘れているらしい。

ということは当然、

“恋人”のオレに渡す“チョコレート”も準備していないということで。

もらえるとばかり思っていたオレは見事に肩透かしをくらったわけだ。


「…お、おいっ」
「……」

脱力したオレはカイジさんの上に倒れ込んで、それとなく不満を伝えたつもりだったのだけど。

「急になんだよッ…?」
「べつに…」

鈍感なこの人にはそれが1ミリも伝わってなく…

更に気落ちすることになったのだった。


「アカギ……」
「なに」
「重い」
「……」

更に体重をかける。

したら思いがけず「っあ…」なんて、

喘ぎ声みたいなのが飛び出してきて。

――――なんだかゾクッときてしまった。


「おいっ…ホントに…」
「ねぇ」
「あ?」
「カイジさんのあほ」
「あぁっ…?」

少しムッとした様子のカイジさん。

それもそうだ。
いきなり伸し掛かられて「あほ」なんて言われたらね。

でも、

それ以上にムッとしたいのはオレの方だ。

こんなの八つ当たりだと言われてしまったらそれまでだけれど。

でも、先日カイジさんがどんな顔して渡してくれるか想像しただけでヌいてしまったオレからしてみれば、

このやり場のない怒りも当然と言えば当然だ。

…欲しかった。
カイジさんからの特別なチョコレート。


「なぁお前今日なんか変じゃねぇ…?」
「……」
「どーしたんだよ」
「……」
「悩みでもあんのか?」
「……」
「オレでよけりゃー聞いてやるけど」

カイジさんは呑気にそんなこと言ってるけれど、

原因が鈍感な自分なんだって気づいてない。

この人って、ほんと。

「…むかつく」
「あ?」
「…けどかわいい」
「…あぁ?」

カイジさんの顔に手を添えて振り向かせる。

ゴキッと鈍い音がしたのは多分、

カイジさんの首の骨から。

「って…」
「……」

でもオレはそんな強引さを謝ることもせず、顔を少し傾けて。

いきなり舌をぬるりと突っ込んだ。


「あぐッ……」

カイジさんが目を見開くのが気配で分かった。

もちろんそれでも今のオレには、

止める気なんてさらさらなくて。

内心ちょっといい気味だ…なんて思ってたりもする。
我ながら最低だ。



「っは…!」

一旦くちびるを離すとカイジさんは盛大にむせた。
ケホケホと咳き込むその背中を撫でつつ、また顔を近づける。

「んッ…ぁ…」
「っ…」

甘いものが不足していた身体に透明な液体が浸透していく。

…ヤバい。
下半身がズキズキする。

カイジさんでヌいたばかりだと言うのに…。



カイジさんの舌を吸ってから解放してやる。

すると案の定、カイジさんは少し涙目になっていて。

しかも「ぁにすんだよッ…」なんて、

可愛いこと言ってくれちゃうから。

「チョコの代わりを頂いたまでだよ」

正直平静を装って返事するのが難しかった。


「あ…?チョコ…?」
「そう。カイジさんくれなかったから」
「って今日…」
「バレンタインデー」
「あぁ〜…」

今日は14日か…!なんて、

カイジさんは今更気づいた様子。

遅い。
遅すぎる。

しかもこの人、

「えっ?チョコ欲しかったのか…?」

当たり前のことを訊いてきやがる。

「欲しいに決まってる」

というか、

カイジさんがくれるものなら何でも欲しい。
それこそ戸惑った表情、とかでも構わないから。

そこら辺カイジさんはよく分かってないようだけれど。


「わりぃ…何も用意してねぇ…」
「…うん」
「代わりにオレじゃダメか…?」
「…うん?」
「だからっ、好きにしていいって言ってんのっ…」

カイジさんの頬がかわいく染まっていく。

―――「好きにしていい」?

それって要するに、

「カイジさんを食べちゃってもいいってこと?」
「うっ…、う…、まぁ…」

オレなんかチョコみたいに美味しいもんでもないけど…なんて、

カイジさんはすごく恥ずかしそうにして。

一瞬こちらをチラッと窺った。



「――――もう…」
「ぅあっ!?」

2人してドサリと床に倒れ込む。
オレが押し倒したせいだ。

その勢いのままカイジさんの首筋に噛みつく。

「ぅわッ……」
「カイジさん好きだよ」
「っ…」
「好き」
「わぁった!わーったから…!」


それから何度好きと言ったのか…

正直覚えてない。

けどカイジさんの表情から察するに、もっと過激なこともたくさん口にしてしまったのだろう。

まぁこれは後々反省するとして。

ロクに解しもせず突っ込んでしまったのは流石にまずかった、かもしれない。

いやホントは、

じっくり時間をかけていただこうと思ったのだけど。

この人には珍しく今日は大盤振る舞いで、

「アカギ…、もっと奥っ…」

―――色っぽい吐息で誘ってくれちゃうものだから。

切羽詰まった声音でオレのことを呼ぶものだから。

「っん…、っぐ…っ」
「は…、っ…」

珍しくつい必死になってしまった。
それは否めない。


手汗で滑るのも構わず指を絡める。
それに応えるようにカイジさんの手にも少し力が入った。

その瞬間身体に流れた甘い電流だけでもうオレはいっぱいいっぱいになってしまって、

「ぁ…」

気づけばカイジさんの熱いナカに出してしまっていた。

「っく…」
「…ごめん」
「謝んなよ…」
「…え」
「その…謝ることじゃ、ないと思うから…」

いきなり中出ししたことは謝ることじゃない、

カイジさんははにかみながらそう言った。

それってそれってつまり。

「っ…」
「ぅあっ…!?」

ビクン、と息子が再び大きくなる。

どうやら今日のオレはいつも以上に節操がないみたいで、カイジさんのたった一言でものすごく興奮してしまう。

「さっきの一発で…満足しなかったのかよ…?」
「うん…すごい良かったんだけど」

良すぎて余計に気分が高揚したというか。

とにかくさっきの、

カイジさんが中出しを受け入れるかのような物言いがすごく嬉しくて。

「もう一回ヤる…」
「えっ…」

カイジさんの汗で少し湿った髪を撫でてやりつつ、

奥へ奥へ。

「っう、ぁあ…っ」

艶めかしい吐息を浴びながら、

ゆっくりイれていく。

「ダメ…ッ、これ以上…ダメだ…っ」
「…何故」
「いや…せめて休憩をだなっ…」
「……」

これは聞こえないふり。

休憩だって?
――――させてやらない。

今は一時でも長くくっついていたいから。

「んぅっ……!」
「いいね…カイジさん」

そんなわけで、

恥ずかしそうに精一杯目線を逸らされるのは、まぁ仕方ないとして。

休憩は悪いけどさせてやれない。


「っ…、アカギ…お前なぁっ…」
「っ、喋らない、で…っ」

カイジさんが言葉を発するその振動だけでイきそうになる。

なんとか堪えるけれど、

カッコつける余裕もないのが悔しいところ。

でも、

「カイジさん…」
「あっ、アカギ…出るっ…」

―――ギリギリなのはカイジさんも同じで。

乱れた息を必死で整えようとしてるのが何とも愛らしい。

だから、

「なんでこんなかわいい…」

ついポロっと出てしまったのは本音で間違いないと思う。





最後は2人仲良く同時にイった。

当然の如くそれだけで終わらせるわけもなく、

その後はカイジさんの白い液体を飲ませていただいたわけだけれど。

もちろんその液体は甘くはなく、

むしろ少し喉がツンとした。

が、

これが愛してる人の体内でできたものなんだと実感してしまったら最後、

もっともっとと欲が出てしまって…

「っ、もう無理っ…!」
「ん…あとちょっと…」

―――気づけばカイジさんに随分と恥ずかしい体勢を強いていた。

「もう…知らねぇっ…!」
「……」
「アカギのばかやろう…」
「……」
「わかれてやる…」
「それは困るな…」

えぐえぐと泣きじゃくるカイジさんを尻目に、

ほろ苦い液体を口の中で転がしながら。

バレンタインに相応しいのは甘いチョコばかりではないと、悟ったのだった。






遅れましたがバレンタイン話でした!ところどころお下品ですが少しでも楽しんでいただければ幸いです…!改めて…
Happy Valentine's Day!
でしたっ!


Feb. 19. 2013



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