カイジさんが目をキラキラと輝かせて身を乗り出している。
知らなかった。
カイジさんは花火が好きらしい。
いきなり「花火大会に行きたい」なんておねだりされたときは正直ダルかったのだけれど。
こうしてカイジさんの喜ぶ顔が見れただけでも、来た甲斐はあったようだ。
────たとえ人混みが鬱陶しくても。
ただ花火に集中し過ぎてこっちが見えてないのはどうなの?と疑問に思うのだけど、
カイジさんの横顔があまりにもツボだったから許してあげることにした。
そのまま横顔を眺めていたら、カイジさんの鼻の頭に汗が浮かんでいるのを見つけた。
顔を近づけてそれをペロリと舐める。
「………っ!?」
やっとこっちを見てくれた。
「アカギ………?」
「花火綺麗ですね」
「う、うん……?」
────そのまま永遠にこっちだけを見ててほしいなんていうのは、
オレのわがままですか?
ああ。“許してあげる”なんて嘘だ。
本当は、カイジさんの心を片時でも奪っていた花火が憎い。
でも、花火は自らを一瞬だけの命と決めて呆気なく散っていく。
だからこそオレも辛うじて平静を保てているわけで。
……オレがこんな花火に嫉妬してるだなんて、
カイジさんは気づいてないでしょう?
だから、
「……誰よりも愛してます」
まるで星に空に溶け込んでいった無数の花火たちに見せつけるように、耳元でこっそり睦言を囁いてみる。
────したらカイジさんはモジモジしつつも指先まで絡めて手を繋いでくれた。
それ……
カイジさんからの「オレもだ」っていうお返事の代わりなんだって、
自惚れてもいいんですよね?
お題:休憩様
Aug. 8,2012
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