テレビぐらい落ち着いて観たいというのは、
果たしてわがままな願いなのだろうか?
オレはそう思わないのだけど。
何しろこの3人ときたらオレにまともな安息を与えてはくれないのだ。
「ねぇ、テレビなんかよりオレを見てよ」
「んー…」
「ねぇ…カイジさん」
――――なんて。
普段はキリリとしてる男が、こんなときだけとんだ甘えたさんになってしまう。
もっとも…
こんな光景、今となっては日常茶飯事なんだけれど。
そこで「るさい、19」と棘のある声をだしたのは、オレを座イス代わりにしていた13歳のしげるである。
そのせいで、
「13は黙っとけ」
「19こそカイジさんにベタベタするな」
まさに一触即発な雰囲気になってしまう。
あああテレビの内容が頭に入ってこない。
したらオレの右隣にいた赤木さんが「お前らちったぁ静かにしてな。カイジがうるせぇってよ?」
…などと呆れたように苦笑する。
一見こうやって仲裁役に見える赤木さんだけれど、これが油断できないのだ。
現に今だって。
「なーカイジ。この番組おもしろいな」とか何とか言いつつ、
上腕をするりと撫であげてきたり。
「っん…」
それで思わず変な声を出してしまうと、からかうように指を首筋に這わせてきたりするのだから。
そんなわけでろくにテレビに集中できないのが常だった。
前にはしげる。
左隣にはアカギ。
右隣には赤木さん。
そんな風に年齢が違う同じ人物に囲まれて、嬉しくないと言ったら嘘なんだけれど。
こう毎日がドキドキの連続だとホント心臓がもたない。
そう我が身を案じていると、
左頬に冷たいくちびるの感触が降ってきた。
――――これはキス魔であるアカギの仕業だ。
すると膝に座っていたしげるが振り向いて負けじと抱きしめてくる。
ちょい苦しい。
でもあったかい。
赤木さんは優しい手のひらで頭をポンポンと撫でてきた。
「っ……」
ズルい。
3人とも、ズルい。
元を正せば同じ人間のはずなのに、こんなにもそれぞれオレへの触れ方が異なっていて。
言外でうるさいくらい「好き」って伝えてくる。
視線ひとつでオレのことを甘く蕩かしてしまう。
オレにはそんな高等技術なんてないのに。
「…カイジさん」
「カイジさん」
「カイジ」
3人の、少し高さが違う声が一斉にオレを呼んだ。
それに返事をする前に、
「う……」
まぶた。耳朶。髪。
三ケ所ほぼ同時に甘いキスが降り注いできて、
―――最後。
仕上げとばかりにくちびるにチュッと吸いつくような口づけをされた。
オレは固く目を閉じていたので誰がどうキスしてきたかは確認できなかったけれど、
「クク…かわいい…」
「どうする。襲うか?」
「じゃオレが脱がせる」
……なんて相談する声がうっすら聞こえてきて。
こんなときだけめっちゃ仲いいな!と、
3人の結束力に恐れ入るはめになった。
「…こっち見て」
促されて恐る恐る目を開けた。
そこで一番最初に目があった赤木しげるはゾッとするほど妖しい笑みを浮かべて、
「覚悟しな」
オレのシャツにゆっくり手をかけたのだった。
逃げようと思えば逃げられたはず。
だけどそれをしなかったのは、たぶん…
す、好きだから…?
“初めて逃げなかった日”
三世代アカカイですが、カイジさんのくちびるにキスした人=最後のオチの人は、3人のうち特にお好きな赤木しげるを連想して読んでいただければと思います。
賽たま様に頂いたイラスト、カイジさんが三世代に囲まれているのがツボで、いいなこれ!と思ったので設定を被せてしまいました!
こんなもので申し訳ないのですが謹んでお捧げいたします。
今後ともよろしくお願いいたします<(_ _)>
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