ハッキリ言ってこんな弱りきったカイジの姿なんぞ見たくない。
なんというか心臓に悪いから。

───が、今コイツの面倒を見てやれるのはオレくらいしかいないわけなのだ。


……ということで、

高熱を出して倒れたカイジの世話をしてやってるのだが。

今日改めて実感した。
カイジのヤツ、心細いとより甘えん坊になるらしい。

「遠藤さん……?どこ…?」なんてオレの姿を探すけど、

オレはすぐ傍にいてやってるつーに。


「遠藤さ……ん……」

なるほどかなりツラいらしい。
うなされて汗を掻いている。

おかしい。
薬はとっくに飲ませたのにカイジの熱は一向に下がる気配を見せない。
せっかくお粥を作ってやったのに喉を通らないみたいだし。

おでこに手を当ててみれば、

「あっつ……」

恐ろしいほどの熱を孕んでいた。

これは冷やした方がいい。
そう考えて小まめに冷えピタを取り替えてやる。
────もちろん付きっきりで。


あれ。オレってこんな優しかったっけ?と自分で首を捻る。

以前のオレならこんな面倒なことしなかったよなぁ……?

とか何とか思考にふけていると、

ふいに手を掴まれた。
あちーよ。バカ。


「どーした?」
「もう帰る……?」

カイジがこっちの様子を窺ってくる。

アホか。
こんな瀕死の病人を放っておけるかって。

「帰らねーよ。一緒にいてやる」

言い放てば、カイジは小さく笑った。
ひどく安心しきった顔で。

なんか可愛いかもしれない。
こっちを頼りにしてるって伝わってくる。

だったらそれに応えてやりたいと思う。


恐らくカイジはオレと親父を重ねて見てる部分もあるんだろう。

今はいいよ。それでも。

コイツのためなら親父の代わりになるし、恋人にだってなる。
それが金の絡まない無償の愛ってヤツだろうが。

………って、ヤミ金のオレが語るのもおかしな話だけど。


利子は取らない。
だってこれが……

惚れた弱味ってヤツだもんなぁ?





Aug. 13,2012




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