Howdy, new world. ーAnother Storyー | ナノ


▽ ナイトメア


「おっせーな」

俺は玄関の方に目を遣り言う。

「玲沙アルカ?」
「おー」
「珍しいですね。ひとりでいかせたんですか」

新八の言う通り、俺はあいつをひとりで行かせた。

ーー『今日はね、ひとりでいってみたいの』
ーー『大丈夫。ぼくを信じて』

「………どうしても行きてぇって言われたら、聞いてやる以外ねぇだろ」
「それもそうですが……何かあってからじゃ遅いんですよ」

新八がそう言った途端、俺の背中に嫌な汗が流れた。それと同時に、万事屋の電話が鳴り響く。

「……もしもし」

頭をよぎった考えを振り払い、受話器を耳に押し当てた。


聞こえたのは、聞きたくもない、真選組の声。


「万事屋、すぐに真選組まで来い」

土方の声の切迫した声を聞いたとき、俺の思考回路は停止した。
闇雲に走りまくり、真選組の門を蹴破る。


「玲沙ッ!!!」


昔のやつがいっていた。
嫌な予感ほど、よく当たる。

転がり込んだ真選組の部屋に、血の気のない玲沙が横たわっていた。


「玲沙玲沙玲沙玲沙ッッ!!!!!!」


どうしてひとりで行かせた
無理矢理にでも止めればよかった


俺は、俺はーー



「…………………コロス」


自分でもゾッとするぐらい、冷たい声が出た。


「おいッ、落ち着け万事屋ッッ!!!こいつはまだーーー」


「黙れ」


俺は、玲沙のくたんとした体を抱き寄せて、抜刀する。

「……近寄るな」


真選組共をギンッと睨み付けて、愛刀で凪ぎ払った。
奴等の牽制を込めて、木刀を畳に突き立てる。


「玲沙……」

もともと透けるぐらい真っ白な玲沙は、その白さを通り越してむしろ蒼白に見えた。


「………?」

俺は、その小さくて細すぎるほど華奢な体に、ちょっとした違和感を感じてまじまじと見る。

「……外傷が無ェ」

試しに胸元に耳を押し当てれば、ひどくゆっくりと鼓動しているのが聞こえた。
肌は氷みたいに冷てぇし、顔は真っ青だし、目は閉じたままだけど、生きている。


「……玲沙……」

たまらず抱き締めて、力ない体が反応するのを待った。
でも、相変わらず動かない。

「……おい」

俺は土方を睨み、玲沙を抱く腕に力を込める。

「コイツは、どこにいた」

土方は目を細めて俺たちを見た。
奴の視線が這い回るのを胸糞悪く思いつつ、返事を待つ。


「大江戸マートと万事屋の中間地点。路地裏と大通りの境に倒れていた。近くにはこの袋とこの空瓶が転がっていた」


土方に手渡されたのは、見たことねぇデザインの瓶で、およそ江戸では使われてねぇような石でできていた。

「……んだ、コレ」


天人のモンだ。……多分だけど。
結論が出ないと踏んで、俺はその瓶を袖に放り込み、玲沙を抱き上げる。

「世話かけたな。……悪かった」


胸糞悪いが、玲沙を見つけたのはコイツらだ。
礼ぐらい、言っておくべきだろうが、あいにくとそこまで余裕ではない。

とりあえず誰かが声をあげる前に、真選組を後にする。


すぐにでも、玲沙を休ませてやりたかった。
万事屋で。

俺の、隣で。



To be continue……

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