カサカサと場違いに床を這うものに気がついたのは本当についさっき。でもそんなことより雑誌が読みたくて無視を決め込もうとした、が。

一度視界に入ってしまったものはやっぱり気になる。
持っていた雑誌を丸めようとしたが我に返り、そこら辺にあった新聞紙を筒状に丸めた。
じりじりと、じりじりと距離をつめ、光沢がかった触覚野郎に狙いを定めた、その時。

「ああ、駄目!ソウルタンマ!」
そう叫んだ瞬間どこから現れたのか脇から飛び出したこいつは、なんと俺が追っていた黒い奴を、なんと、華麗に両手キャッチ。

「………は?」
「無駄な殺生はイカンよソウルくん!!」
「いや、あの」

マカが両手に包んでいる黒く禍々しいソレを確認しないで、「ソウル、台所の窓開けて!!」と忙しなく指図しやがる。
聞かない理由もないし本人がかなり焦っているので急いで窓口を開けてやると短い手を思う存分伸ばして投げるように黒い奴を放した。

「・・・・・・」
「・・・・・・」

ガラガラと、静かに窓口を閉め、振り向いた。静かな沈黙。

「・・・ぎゃああああああああ!!!!!」
「おまっ・・・まじかあああああ!!!!!」
「やっだあああ!!素手!!素手とかあああ!!!」
「あり得ねえぇええ!!!手!!今すぐ洗え!!!洗浄しろ!!!」
いやだああキモいよおおお!!と叫びながら手を必死に洗うマカが、もうよく分からない。こいつの行動はいつだって理解不能だ。

「お前虫いけんの?!」
「まさか!!パパの次に嫌いよ!!ああやだもう感触消えない!!」

さらっとゴキブリに並べられる父親を憐れだと思う。
ジャージャーと手を水で強く洗うのに、顔はなんだか申し訳なさそうに見える。

「魂、見えちゃってさあ」
「は?」
「ゴキブリの。たまーにあるんだけど、青い魂見ると咄嗟に手が出ちゃうんだよね〜」

前なんか蟻の行列潰してる無邪気な子供を怒鳴っちゃったよ。近くに居たママさんには変な目で見られるし、子供は泣き出すし、大焦りよ。ほんと。

「お前、牧場行けねえな」
「…は?」

ウチの食卓にはもう魚すら並ばなくて、なんでー?って文句を垂れてるブレア。草しか食べませんと言い出すマカ。

きょとんとしていたマカが、途端に馬鹿みたいに大声で笑い出した。

「あ、あんたっ…!馬鹿じゃないのっ…!あははははっ…!」
「な、なにそんな笑ってんだっ…」


私の大切な人は、青い魂をしている。守らなければ、と思うのだ。





退屈日和



私疲れてる…




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