「武器はさ、なんであんなに従順なのかな」
聞く相手が間違ってる感が拭えないが、まともな返事が返ってきそうにない、こいつの意見に少し興味があった。
「まぁ大方俺のビックさに従う欲求が抑え切れないんだろうよ!」「はいはいそーだね」
やっぱり真面目な答えなんか返ってきやしないのに呆れて、はあと1つ溜め息をつく。
「なんだよ、俺様がわざわざ答えてやったのに不服だっていうのかよ」
「まあ、あんまりに予想どうりだったからね」
またはあ、と溜め息をつくと、ボソッと彼が呟いた。
「俺は思ったことないけどな」
「え?」
「俺は椿と、対等でいるつもりだ」
ブラックスターの顔を見ると、似合わないくらいに真面目な顔でそんなこと言うから、ぽかん、と彼を見つめていると、いつもの通りニカッと笑って。
「マカはソウルだから、そう思うんじゃねえの?」
そう言って、彼はブラックスター!と、遠くで呼んでいる黒髪の優しげな彼女のいる場所に去って行った。
私はしばらく去っていったその2人を見つめていた。
椿ちゃんが補習がどうたらこうたらっていう話をしてる。だけどブラックスターはまるで聞いてなくて、俺は神になるから補習とかいうのには無縁だとかなんとか。でもお前をデスサイズにしてやるからって言って、彼女はそれを聞いて嬉しそうに微笑んで、うん、分かってるよと言った。
椿ちゃんも同じだと思うんだけどなあ。
そう思うけど、彼が違うと言うなら違うのかもしれない。でも同じ気がしたから聞いてみたんだけど、ブラックスターが気がついてないだけかもしれない。ほら男って鈍感だし。
私はベンチから立ち上がり、どこにいるかも分からない彼を探しに行く。
なんだろう。
私達は確かに対等だと、同じ人間だと、そう思ってるのにね。
向こうは、武器は、そう思ってない気がするんだ。
ソウルから
「死ぬ覚悟ぐらい出来てる」
そう言われたとき、正直ぞっとした。気持ち悪いとかじゃなくて、あまりにも当たり前のように、自分の命を他人に投げ出すから。
私には理解出来ない。
職人には理解できないけど、武器には当たり前なのだろうか。
こんなに温かいのに、優しいのに、怒るのに、笑うのに。
いつもありがとうって思ってるのは私だって同じなのに。
ちょっと武器になれるだけなのにね。
異常なまでの忠誠心は、まるで頼る者のいない子供のようだ。
ただヒーローになりたいとか、浮気症なパパを見返してやりたいとか、彼らはそんな問題ではない。きっと。
死武専に来てそれが少しずつ解るようになったから、私も少しずつだが考え方が変わっていった。
だから、分かってしまうのだ。
どんなに好きでも、大好きでも、私とソウルはきっと壁を壊せない。
彼が自分を認めて、対等になれるまで。
いつになるのかな。
まだそれが遥か遠くなような気がして、私は泣きそうになった。
「マカー」
遠くで声がした。
声が聞こえる方に一目散に走った。
なにも知らない
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