スマートフォン解析 幸佐 短編 | ナノ
「俺様が旦那に対して抱いているもの想いに、もしも名前を付けるとしたら……それが恋愛感情だとしたらアンタはどうする?」

お昼ご飯を食べお館様による修行を終え、自分の城に帰りその庭先で仕上げとして鍛錬を行っていた。
そんな姿を縁側に座り茶を啜りながら見つめていた佐助は、一切の表情も見せない顔で囁いたのだ。

始めはただの聞き間違いだと思っていた。

佐助は幸村にとって、今まで兄弟のように共に成長を遂げてきた大切な幼馴染であり、また幸村だけの忍である。
一緒に過ごしてきた年月が長いからこそ、彼の性格はよく熟知していた。

それだけに先ほど彼の口から出されたであろう問いは、彼の言葉とは思えなかった。

そう結論付けた幸村は、再び鍛錬を続けるべく手にしていた槍を振るった。
その様子をやはり無表情で見つめていた佐助は、ゆっくりとした口調でもう一度言葉を発したのだ。

「聞いてなかったみたいだから、もう一度だけ言うけどさ……俺様が旦那に対して抱いているもの想いに、もしも名前を付けるとしたら、それが恋愛感情だとしたらアンタはどうする?」

二度目の空耳。
だが幾らなんでも二度も同じ空耳が聞こえる訳が無い。

幸村は手にしていた槍を地面に落としてしまい、唖然とした表情で佐助を見つめた。佐助は幸村と目が合ったものの、まったく表情を変えず静かに茶を啜るだけだった。

「は……は……は、破廉恥でござ」
「破廉恥でござるは禁止。聞きなれちゃったから、別の返事が聞きたいんだけど」

先手を取られ幸村は押し黙るしかなかった。
押し黙る幸村は耳どころか首筋まで真っ赤に染め、餌を求め口をパクパクさせる金魚のようにしている。

何かを言おうとしているのだが、それが喉元につっかかっていて出てこないらしい。そんな幸村の様子を見つめ佐助がもう一度言葉を発しようとした時だった。

「おいこら!才蔵!!お前、人を縛り付けて閉じ込めて何旦那に尋問してやがる!!っていうか俺様はもっと男らしい姿してるんだけど!!!」

庭先から姿を現したのは、顔を真っ赤に染めた佐助だった。
その姿を見て、幸村は驚愕した。
何故ならば佐助が2人居るでは無いか。

唖然としている幸村を放置して、顔を真っ赤に染めた佐助は縁側に腰掛ける佐助に歩み寄り襟元を掴みあげた。

「才蔵!いい加減にしてくんない!!」
「……お前と主がじれったいから協力してやっただけだろうが…」

襟元を掴まれた佐助は、小さく笑みを浮かべると片手を天高くあげた。
すると辺り一面に霧が立ち込める。
霧がやんで行くと、先ほどまで2人の佐助が居た場所には顔を真っ赤に染め怒りを露にしている佐助と、真田忍隊の副隊長を務める霧隠才蔵の姿があった。

「おお!才蔵であったか」
「はい、そうです。佐助よりもいい男が佐助に化けていたのでバレないか心配でしたが、主相手ではそれも無用のようでしたね」

「何がいい男だ、なにが!っていうか、何で俺様を縛り付けて木にぶら下げるんだよ!!蓑虫みたいだって、大将に笑われちゃったじゃんか!!」
「縄抜けくらい出来ないお前が悪いんだろう。それよりもこれ以上お前たちと一緒に居ると馬鹿がうつりそうだから、そろそろお暇する。では」

相変わらずの毒舌を残し姿を眩ます才蔵に、佐助は舌打ちをして怒りで体を震わせた。

一方2人の会話に付いていけなかった幸村は暫し呆然していたが、何かを思い出したかのように手をたたくと怒りに震える佐助の肩に自分の両手を添え笑みを浮かべた。

「佐助」
「……え?何、旦那……っていうか、あの馬鹿に何吹き込まれていたの?」

才蔵は何処と無く幸村を小馬鹿にしている部分も見られたので、もしやからかわれたのではないかと心配する佐助であったが、それを覆すかのように幸村は笑みを浮かべ佐助に云った。

「先ほどの続きなんだが……俺はお前の言葉を嬉しく思う」
「……はい?」

話が読めなくて唖然となる佐助。無理も無い。
先ほどまで幸村と会話をしていたのは、佐助に化けていた才蔵なのだから。
そうと知ってか知らずか、幸村は話に付いていけず泣きそうになっている佐助の目じりを指で優しく撫でると安心させるように茜色の髪を撫で更に言葉を続けた。

「俺も同じ感情だ。……佐助」
「だから何の話なんだよ〜!!」

嘆く佐助を近くの大木に身を潜めていた才蔵は半ば呆れたように見守っていた。
そして口元に薄っすら笑みを浮かべ、小さく呟いたのだった。

「やはり主を使って佐助をからかうのが一番退屈しないな」

意地悪な囁きは誰の耳に届くことなく、静かに風に掻き消されていったのであった。

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