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*本日のバカップルの被害者は才蔵とお館様「此処だけの話……俺様、もしかしたら旦那の事が好きかもしれない」
佐助は悩んだ挙句、心の中に芽生えた想いを同僚である霧隠才蔵に言った。
言われた才蔵の顔には「何で主に言わず俺に言うのだ?この馬鹿が」といったような複雑な想いが交差しているのが感じられた。
佐助はそんな才蔵の思いに気づかず、更に話を続けた。
どうやら才蔵からの返事を聞きたい訳ではなく、ただ誰かにこの想いを聞いてもらいたいだけのようである。
才蔵からしてみれば迷惑この上ない事なのだが。
「此処だけの話、俺様……もしかしたら旦那の事が……っ」
まるで恋する初々しい乙女のように瞳を潤ませ顔を真っ赤に染め慌てふためく佐助を才蔵はただ白い目で見つめているだけだった。
この異様な温度差を目の前で見守っているのは、佐助の主の主である武田信玄だった。
信玄は今何が起こっているか把握出来ず、佐助の隣に腰をかけている才蔵にSOSの視線を送るのが
──才蔵自身も特に興味もない話題だったので、首を傾げるだけだった。
実はこの三人。
現在戦の会議中であり、別にお茶会で話が盛り上がりこのような状況になった訳では無い。
佐助が突如、「此処だけの話……」と語り始めただけだったのだ。
初めは何の事か把握できずに、ただ話を聞くしか出来なかった2人だった(才蔵は面倒だったから放って置いただけ)のだが、佐助は先ほどから同じ言葉を繰り返していた。
「……此処だけの話だけどね……俺様」
「幸村様が好きなんだろ?」
「え!?何で知ってるの!?やばい、どうしよう!!才にバレちゃってるなら、大将にもバレちゃうよ!!」
「いやいや、佐助。わしも知っとるぞ」
「ぎゃ〜!どうしよう!!」
先ほどからお前が何度も同じ言葉を繰り返しているだけだってば!
そう心の中で突っ込みを入れる才蔵であったが、そんな思いは届くことなく、佐助は2人の目の前で全身真っ赤になって悶絶していた。
「どうしよう!旦那にバレたら俺様もう側に居られないよ!!」
「だったらとっとと消えてしまえ!」
とうとう口に出して突っ込んでしまった才蔵だったが、そこの言葉にいち早く反論したのは佐助では無かった。
何時の間に居たのだろうか。幸村が3人が密談(?)をしている部屋に飛び込んできたのだ。
「才蔵!先ほどの言葉を撤回せい!」
「だ、旦那?!」
幸村が飛び込んできた事に驚きを隠せなかったのは佐助だけだった。
信玄と才蔵はただその様子を無心の状態で見つめるしか出来なかった。
幸村は信玄に一礼すると、すぐに佐助に向き合い2人だけの世界を作り始めた。
幸村は逃げようとする佐助の肩を掴むと、力を込め自分の方に引き寄せる。顔を上げた佐助の視線と、佐助を見つめる幸村の視線が絡み合う。
「佐助……某にはお前が居ないと駄目なのだ……。だから何時までも側に居ておくれ」
「だ……旦那。俺様、嬉しい……っ」
力いっぱい抱きしめ合う真田主従。
その隣では、2人を放って置いて、戦の会議を再開している信玄と才蔵の姿があった。
「……あの2人は週に一回はあういう行為をしないと、気がすまないのかのー?」
「……戦国一のバカップル主従ですから、仕方が無いかと思われます」
信玄の問いに才蔵は静かに答える。
すると信玄は、横目で2人の様子を伺いながら声を潜め才蔵に話しかけた。
「……しかし何時見ても同じパターンしか無いから、そろそろ見飽きるわ」
「……そうですよね」
バカップル主従を放置して、信玄と才蔵は戦の戦法などを議題に話し合いを続けた。
ちなみにこのバカップル主従なのだが、我に戻ると親愛なるお館様を放置してしまった事に心底ショックを受けた幸村が大声は張り上げながら殴り愛を始めるので、何時もこうして信玄たちはほぼ強制的に巻き込まれるのであった。
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