スマートフォン解析 幸佐 短編 | ナノ
西瓜
蒸し暑い日が続く今日この頃。
蒸し暑いね〜と云いながら佐助は自室の箪笥から夏仕様の綿で出来たポンチョを取り出した。佐助はほかの人間よりも体温が低い。そのため、普段のポンチョでも支障はないのだが、ただでさえ暑苦しい武田軍である。夏も絶好調に暑いのだ。

「暑いね、旦那」

風通しが良くなるように、部屋中の障子や襖を開けていく。風鈴が風に揺れ、心地よい音色を奏でる。
女中達が、大きな盥を持ち中庭に集まり何かをしている。何だろうと、佐助は不思議に思い近づいた。


「心頭滅却すれば火もまた涼し!幸村ぁ!これしきのことでばてるでないぞ!!」
「お館様ぁぁぁ!これしきの暑さ、我が武田軍の炎のごとし熱さに比べればたいしたことはございませぬぅぅ!!」
「よう云った、幸村ぁぁぁ!!!」
「お館さばぁぁぁ!!!」

大粒の汗を流しながら、拳を振り上げ殴りあう武田主従。
今日も熱いね……と、何処か遠い目をした佐助の視線に気がついたのは、信玄の方であった。

「どうしたんじゃ、佐助」

幸村の頬に一発拳をいれると、信玄は何事かと佐助を見た。
幸村が壁に叩きつけられた騒音が辺り一面に響き渡り、佐助はうっすら苦笑いを浮かべた。

「……そろそろ、おやつの時間ですよー」

そういう佐助の手には、まん丸とした大きな西瓜。
お館様!と駆け寄ってくる幸村に、信玄は腕を組みニヤリと笑みを浮かべた。

「幸村!今日の稽古はここまでじゃ。折角冷えた西瓜が温くなってしまう」

二人が縁側に腰掛け待っていると、「お待たせ」という佐助の声が聞こえてきた。
振り返れば、何時の間に現れたのだろう。大きく切り分けた西瓜を手にした佐助の姿があった。

「大将と旦那はこっちね。一番大きく切り分けておいたからね」
「佐助のは随分小さいの」
「うん。俺様あんまり冷えたもの食べたら、身体冷やしちゃうから」

少し残念そうに答える佐助に、幸村は西瓜を頬張りながら口を開いた。

「ほららしゃすけふぁ」
「旦那……お行儀悪いよ。ちゃんと飲み込んでから喋りなさい」

こら、めっ!と叱りるける佐助の姿は、まるで母親のようだと、信玄は笑いそうになったが必死に堪えた。
佐助の言いつけを守り、しっかり西瓜を飲み込んだ幸村は再び口を開いた。

「佐助、安心いたせ。冷えたならば、俺が暖めてやるぞ」
「へ?……ちょ、大将もいるんだから、そんなこと云っちゃ駄目でしょう!」
「なんのことだ?」
「だから……身体で暖めてくれるって云ってるんでしょ…旦那ったら破廉恥っ」
「あぁ、殴り愛をすれば温まるだろう」
「そっちかよ!!旦那のへたれ!!!」
「……佐助、まさかお前……こ、この破廉恥忍びが!!!」

勘違いしていた事に羞恥心を抱いた佐助と、佐助の勘違いしていた意味を悟った幸村。互いに顔を真っ赤に染め怒鳴りあえば、その様子を暖かく見守っていた信玄は二人の頭を掴み、おでことおでこをぶつけ合った。

「喧嘩両成敗じゃ」

痛快な音が鳴り響き、幸村と佐助は互いに自分の額を擦った。痛みで震える二人に、信玄は二人の頭を豪快に撫で回した。

「西瓜を食べ終わったら、三人で修行の続きでもするかの」
「はい!お館様!!」
「え〜、俺様は辞退しますよ。これでも忙しいんだからね」
「佐助!お館様が折角修行してくださるというのに!!」
「はっはっはっ!仲良きことは良きことじゃ」

太陽が山の向こうに沈みかけた頃。へとへとになった佐助と幸村が信玄の両脇に抱えられ、風呂に投げ込まれるのは云うまでもない。
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