スマートフォン解析 幸佐 短編 | ナノ
主従
幼い頃は俺が怪我をすると、まるで自分の事のように大きな瞳に大粒の涙を浮かべ泣くのを堪える様に唇を噛み締めながらしがみ付いてくる子だった。
今の主に仕えるまでは、忍びとして『人にあらず、忍びとは道具である』と教えられ育ち誰かに怪我の心配なんてしてもらった事は無かった。
勿論抱きしめられた事もなかった。
しかし今の主に出会って、それは根本から覆された。

「佐助、確かに忍びのお前は道具であるが……しかし、猿飛佐助は某の大切な家臣。決して道具ではない。それを忘れるな」

一見矛盾した言葉。
だけど主が伝えたい言葉の意味は分かった。
赤く染まった右腕を強引に掴まれ、佐助は傷口から感じる熱さと痛みに表情を歪ませた。それを知ってか知らずが、幸村は何も言わずに掴んだ腕に真っ白な包帯を巻きつけた。

「取り合えず緊急処置だけはしておく。あとでしっかり治療を受けるのだぞ、佐助」
「はいは〜い。了解しました、旦那」
「……本当に分かっているのか?……お前は」

手にしていた槍で軽く小突かれ、佐助は苦笑いを浮かべた。そんな佐助を見下ろしながら、幸村は小さくため息をつき佐助に背を向けた。すでに彼の眼差しに映し出されているのは、目の前に広がる戦の光景だけであった。
その背中を見つけ、佐助は祈るように瞼を閉じた。

「行くぞ、佐助!着いて来い」
「了解、旦那!」

2人は再び戦乱の渦の中へと身を投じた。互いの存在を感じ取りながら。
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