スマートフォン解析 幸佐 短編 | ナノ
お館様ぁぁぁ
それはとても麗らかな昼下がり。
武田軍トリオ(お館様、幸村、佐助)の三人は、佐助お手製のお弁当を持って遠方へ出かけた。
ある時は越後の上杉軍からお塩をお裾分けしてもらい。
またある時は、奥州の竜の右目の畑から新鮮なお野菜を頂戴したりと気ままなぶらり旅を楽しんでいた。

そんなある日、武田信玄が病で倒れた。
医者の話によれば、とても危険な状況らしい。

信玄の愛弟子である幸村と幸村に仕える忍び・佐助は、信玄が横たわる布団の脇で涙を零した。

「お、お、お館さま……っ」
「大将!しっかりして!!」

ぼろぼろ涙を流す二人に、信玄は口を開き力なく言葉をこぼした。

「二人とも……わしが居なくとも……民のため天下を目指せ……」
「おやかたさま……っ」
「幸村…武田をまかせたぞ……さすけ、幸村をたのんだ…ぞ」
「大将ぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

幸村と佐助はその場に泣き崩れた。
穏やかに眠る信玄の手を力いっぱい握り締めながら。

「……ごめんなさいっ……おれがちゃんとお握りに梅干いれなかったからっ」
「佐助が悪いのではないっ!!某が梅干より鮭の方がよいといったからだ!!」

佐助お手製のお弁当を食べたら、お館様は食あたりを起こした。
佐助は毒に強いので軽い腹痛ですみ、幸村は全然平気だった。

「お、お、お、お、お、お、お館さばぁぁぁぁぁぁ!」

褥に臥せった信玄を前に、幸村は親愛なる師の名を叫び絶叫した。その痛々しい姿に、彼の忍びである佐助もまた顔を顰め耐えている。

涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった顔を気にも留めず、幸村は信玄の手を取り泣き叫んだ。何時もならば「馬鹿もんが〜!」と怒鳴りつける信玄も、ただ弱々しく笑みを浮かべるだけだった。

───……あれ程度で食あたりとは、ワシも歳じゃの……

「バファ○ン出しておくから、ちゃんと飲んでね。大将」
「薬は苦いから嫌じゃの……」
「バファ○ンの半分の忍びの優しさで出来てるの!だからさっさと飲んで!」
「お館様ぁぁぁ!某も予防注射を我慢いたします!!ですから、一緒に耐えましょうぞぉぉぉぉぉぉ!!!」

どんな状況でも熱い武田軍の雄叫びは、山の向こうまで響き渡った。
後日。奥州と越後、そして四国の鬼から腹痛によく効く薬が送られてきた。
さらに魔王信長や徳川達からもお見舞いの品が送られてきたのだ。
それに感涙した信玄は、佐助に命じ各国に「忍びお手製甲斐蕎麦」を手土産にお礼の挨拶にいかせたりした。
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