スマートフォン解析 幸佐 短編 | ナノ
攻防戦
寒い寒い冬も、雪が溶け春がやってくる。
美味しい春野菜を求め、迷彩色の忍びは一路奥州へ向かった。
野菜嫌いの主様は、何故か独眼竜が右目・片倉印のお野菜だけは食べられるのだ。
主には健康な体であったほしいという母心(?)から、佐助は主君幸村の為に小十郎から春野菜を頂戴することを計画した。


「…で、お前は俺の畑に忍び込んだと?」
「うん、その通りです」

佐助は困っていた。
佐助はとても困っていた。

何故ならば、佐助は今宙ぶらりんとなった網の中に捕らわれているのだ。
おまけに目の前には、葱を片手に持り極殺モードになり掛けている片倉の姿があった。

「俺様としたことが、あんな単純な仕掛けに引っかかるなんて!悔しいっ」
「政宗様が徹夜で考えてくださった、崇高な作戦を単純とはなんだ!」

佐助が引っかかったトラップ。それは、幸村作戦である。
政宗が嘆く小十郎の為に考えた対佐助用の作戦で、幸村に似せた人形を作り罠が仕掛けられた場所に置いておくという単純明快な仕掛けであった。

「例え人形と分かっていても、旦那の姿をしている物を放って置くことなんか出来ない!」
「ふんっ、これぞ政宗様が考え出された素晴らしい作戦だ」
「くそ…っ、独眼竜の旦那なんかに騙されるなんて、俺様忍びとして失格だよ」

悔しがる佐助を横目に、小十郎は小さく溜息をついた。
そして何か考え込むような仕草を見せたと思うと、苛立ちを隠せない様子で舌打ちする。
何事かと不思議そうに見つめてくる佐助に、小十郎は苦々しいものを見るような視線を向けた。


「今回は見逃してやる!お前が居ると真田も奥州まで駆けつけてくるだろうからな」
「…確かに」

そうなると、自ずとその後の展開も脳裏に浮かぶ。
政宗は幸村と対決するだろう。また、冬の間なかなか勧められなかった山積みの問題がまだ片付けられていない。
何よりも…

「真田の旦那が来ちゃったら、竜の旦那に構って貰えなくなるもんね。右目の旦那、想像だけで嫉妬しちゃったの?」

ニンマリ笑みを浮かべる佐助に、小十郎は耳まで真っ赤になりながら葱で切りかかってきた。
完全にブチ切れており、冷静さがかけている。佐助はドロンと網の中から姿を消すと、小十郎の背中に回りこんだ。
驚く小十郎の腕を掴むと、佐助は背伸びをし小十郎の耳元で囁く。

「俺も真田の旦那が俺様以外の事を考えてるのは面白くないから、気持ちは分かるよ」

その声は、今まで聞いたことが無いほど、無機質で冷たく感じられた。
小十郎は佐助の腕を振るい払い、振り向きざま切りつけた。
佐助の体が真っ二つに裂け、霧のように消えていく。術だと察した小十郎は空を見上げた。
其処には、野菜を抱えた佐助の姿があった。
大鳥の足を掴み空高く飛び立った佐助は、もう小十郎の刃は届かない。逆光で佐助の表情は見えないが、降りかかってくる声は普段通りの弾んだ声である。

「美味しいお野菜、確かに頂戴していくよ〜」

きっと憎たらしい程ににこやかな笑みを浮かべているのだろう。
佐助の姿が小さくなり消えて見えなくなるまで、小十郎は空を睨み付けていた。
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