スマートフォン解析 幸佐 短編 | ナノ
忠誠心は邪魔です
*従者視線から見た話。佐助の惚気と、それを聞いて絶句する小十郎。



草木すら生えていない焼け爛れた荒野に、青と赤の色が交じり合うように剣をぶつけ合う。

片や奥州の竜と名高い伊達政宗。
片や甲斐の虎の意志を受け継ぐ若き虎、真田幸村。

その傍らで2人の様子を見守っているのは、若き2人の剣豪を知っている人から見れば従者としてよりも保護者として有名な存在。

迷彩色の服を身に纏い夕日のような髪を靡かせ真田を生温い笑顔で見守るのは、真田忍隊隊長こと猿飛佐助。
その隣には、竜の右目と名高い片倉小十郎の姿があった。

互いにあきれた様子で主の決闘という名の子供の喧嘩を見守っている。

「何時も思うんだけど、2人とも良く飽きないよね〜」
「……全くだ」

飽きもしない子供の喧嘩を保護者気分で見守っていた従者達だったが、ふと何かを思いついたかのように夕日色の髪を靡かせ忍が呟いた。

「ねぇ、右目の旦那ってさ……忠誠心の塊のようなお人だけど、それって肩凝らない?」

佐助の小声で問いかけられた言葉に、小十郎のキリっとした眉が微かに動いた。
眉間の皺を更に深め、ヤクザ顔負けの威風を背負い明らかに不機嫌そうな顔になった小十郎は、隣に佇むお喋りな忍を見下ろした。

もしも目線で人が殺せるならば、佐助は今頃苦しみもがきながら地を這っている事だろう。
だが生憎、小十郎の射抜くような視線を笑顔でかわした佐助は何処か喰えない笑みを浮かべ顔を上げた。

「武士と忍じゃ生き方が違うから、無理も無いだろうけど……忠誠心なんか持って接していたら、息が詰まっちゃうよ」
「……ならお前は、真田に対して忠誠心を抱いていないとでも言うのか?」

不機嫌そうに吐き捨てる小十郎の視線は、何時の間にか佐助から幸村の方へ移動していた。

不機嫌そうに眉間の皺を増やした状態のままだが、何処か探るような視線を向けている所はいかにも彼らしく感じる。

そんな小十郎を見上げていた佐助は小さく笑うと、小十郎同様に戦闘中の主に視線を向けた。
その眼差しは何処か柔らかく、佐助が冷酷な忍であると云う事を忘れ去れるモノがあった。

「少なからず……俺にはそうは見えねぇぞ」

一瞬、幸村を見つめる佐助に視線を向けた小十郎だったが、すぐに政宗の方へと視線を泳がせる。政宗を見つめる小十郎の眼差しは佐助に負けず何処か穏やかで優しい色合いを宿していた。

小十郎が一瞬でも自分の方を見た事に気がついた佐助は、少しだけ困ったように笑うと何処か諦めた様に溜息を吐く。

「……アンタは凄いよね。俺には真似出来ないもん」
「………」

一瞬何の厭味だと言おうとした小十郎だったが、喉まで出かけていた言葉を飲み込んだ。小十郎が返事を返さない事を悟ってか、佐助は更に言葉を続けた。

「俺様は主というよりも……幸村の旦那が好きすぎて好きすぎて忠誠心なんか持って接してたら俺様壊れちゃうよ」
「……は?」
「好きすぎて、もっともっと幸村の旦那に俺様を求めてもらいたいって思っちゃうし、もっともっと甘えさせたいって思っちゃうんだよ〜。嫌になっちゃうよ」
「……お、お前……それは」

何処か泣きそうな佐助の呟きに、小十郎はほんのり頬を赤めて苦虫でも噛んだ様に顔を顰めた。

結局惚気られたのだと小十郎が気がついた時には、主達は泥だらけになった状態で従者達の元へ駆け寄ってきた頃だった。
prev bkm next

[ top ]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -