スマートフォン解析 幸佐 短編 | ナノ
才蔵と佐助2
ある日、佐助が泣いていた。
正確には、幸村の寝室の天井に小さな染みが出来ていたのだ。

──雨漏りだろうか。
そう思った幸村が、佐助を呼び出して修繕させようと思い呼びかけたが返事は無い。

ちなみに、佐助は忍びであり大工では無い。
忍隊隊長という肩書きが佐助には存在するが、実際は幸村のおかん役というのは武田軍では有名な話である。

おかん。それはその名の通り、母親代わりを意味する。
しかし、時たま幸村は佐助を便利屋のように扱う事がある。

腹がすけば
「佐助、飯の準備はまだか?」
着物が汚れると
「佐助、すまん。着物を洗っておいてくれ」
誰かと喧嘩すれば
「佐助、治療を頼む」

幸村に佐助は付き物といっても過言ではないくらい、二人の関係は親密であった。
そして佐助自身も「嫌だ嫌だ」といいながらも

幸村が腹がすけば
「夕餉までまだ時間があるから、おやつ作ったからそれを食べていて」
着物が汚れると
「もう、しょうがないなぁ」
誰かと喧嘩すれば
「誰と喧嘩したの?!独眼竜?!俺様がしばいてくるから!!」

と、すっかり佐助も染められているのだ。
そんな主従の枠を超えた関係を築き上げてしまった真田主従に対し、不可解という感情を抱える忍びが存在する。
真田十勇士の一人、霧隠才蔵だ。

伊賀と甲賀。出身地が異なる事から、佐助と才蔵は会うたびに口論となり、最終的に佐助が才蔵に云い負かされる。
毒舌連発の才蔵に、佐助は何時も負けては涙を堪える日々であった。

幸村は、ふと今朝の光景を思い浮かべた。
それは、朝餉をとっている最中の出来事。

長期任務を終えた才蔵が幸村の元へ姿を現した。
傷一つないその姿は、彼がどれほど優秀な忍びなのかと物語っていた。

幸村に報告を終えた才蔵は、ふと主の隣に腰掛ける忍びに視線を向け、硬直した。
そこには、割烹着を身にまとった佐助の姿があったのだ。

忍びらしからぬ姿に、才蔵は眉間に寄せると佐助の首根っこを掴み何処かへ行ってしまった。佐助は何が起こっているのか判らず、軽くパニックになりながら引きずられていった。

そのあと、二人の姿を見かけていない。

もしや。そう思った幸村は、梯子を使い天井の壁を一枚ずらした。
普段、佐助が出入りする場所を知っているのだ。
屋根裏部屋に顔を突っ込めば、薄暗く狭い空間の奥に黒い物体が小刻みに震えている姿を見つける。
嗚咽しながら震えるそれは、闇に慣れてきた幸村の眼に映し出される──丸まった佐助の姿だった。

「ふっく…あんなに怒鳴ることないじゃんかっ」
「……佐助、また泣かされたのか?」

恐る恐る声をかければ、佐助はゆっくり顔をあげ幸村の方を見た。そしてほふく前進しながら幸村の方に進んでくると、大粒の涙を零しながら抱きついてきた。

「旦那〜!聞いてよ!!才ったら酷いんだよ!!」
「さ、佐助!危ない!梯子が倒れる!」
「あの鬼畜忍〜!!うわーん」

泣きじゃくる佐助を抱きしめながら、何とかバランスを取りつつ幸村は小さくため息をついた。

毎度の事ながら、あの二人は仲良くやれんのか?

佐助の背中を擦りながら、幸村は最終的に「才蔵が唯一適わない自分の兄」に相談しようか考えを巡らせるのであった。

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