スマートフォン解析 政小 短編 | ナノ
燦々と降り注ぐ太陽の下、丹精込めて育てた野菜の収穫に精を出すのは、竜の右目と名高い片倉小十郎その人である。
彼の育てる野菜は他国からの評価も高く、片倉印の野菜を奪おうと日々奥州に攻め入る武将夫婦の姿をよく見かける者も少なくは無い。
時々、それに混じって真っ赤な服と鉢巻姿の男と、迷彩の服に身を包んだ保護者の姿も目撃されている。
そんな輩から、今日も小十郎は大切な大切な野菜を守っていた。

「本日の収穫はこれだけか?」

畑仕事の合間、一休みしましょうと声をかけられ茶を啜っていれば、背後から聞こえたのは大切な大切な野菜よりも、もっと大切な主君の声。
政務をサボって来たのかと思い、思わずお目付け役の表情になる小十郎だったが、政宗の背後に待機している男の姿を見つけると、今度は其方をジロリと睨む。
睨まれた男は、困ったように苦笑いを浮かべ、降参とばかりに両手を胸元まであげた。

「サボりじゃないぜ、小十郎。ちゃ〜んとお前が渡した分の書類は仕上げておいた」
「……左様ですか」

小十郎の小言が飛んでくる前に、政宗は口角を上げ先手を打つ。先手を打たれてしまい、小十郎は口から出かけた言葉を飲み込む。そして、静かに政宗の背後に待機する男に視線を送れば、小十郎の視線に気がついた男は、小さく溜息1つ。

「確かに小十兄が渡した書簡は目を通して処理してたよ。小十兄に渡された分だけは、ね」
「つまり…それ以外は…」
「…そういうこと。俺は仕事で多忙な綱元に命じられて、梵のお目付け役してる訳だわ」
「……成実様…お目付け役なら、お目付け役としての政務をはたして頂きたい」

政宗の身内として、彼の性格をよく熟知している成実は、「小十兄以外に、梵を制御できる人間が居ないんだから、仕方が無い」としゃあしゃあと云ってのければ、小十郎もこれ以上苦言は零せない。

「成実、俺は小十郎と一緒に居るからお前は城に帰ってろ。綱元の仕事を手伝ってやれ」
「了解」



主の命令という免罪符を手に、成実はマジ切れ十秒前の小十郎から逃れるように全速力で城へ走り出した。
成実の背中を憎らしそうに睨み付けていた小十郎は、ふっと表情を緩め政宗の方に視線を向けた。

「政宗様、城までお送りします」
「畑仕事はどうするんだ?お前が大切な大切な畑を放っておくわけないしな」

「大切」という部分を強調する政宗に、小十郎は表情を緩めることなく真顔で答えた。

「政宗様以上大切なものなどございませぬ」

真剣な面持ちの小十郎に、政宗は驚いたように目を見開いたが、すぐさま満足そうに口元を緩めた。普段は見られない幼げな表情に、小十郎は随分懐かしいものを見たなと思い、ほんのり胸が熱くなった。
それは、まだ警戒心の強かった政宗の幼少期。
ふとしたことで、見せてくれた悲しいほど幼げな笑みであった。

無意識である。
小十郎は、気が付けば政宗の体を抱きしめていた。
幼少の頃、人に触れるのも触れられるのも恐れていた子供を抱きしめる事により、人のぬくもりを教えた日々。
政宗が見せた幼げな笑みにつられ、ついつい昔の癖が出てしまったのだ。

「……小十郎…?」
「はっ、申し訳ございませぬ!」

政宗の自分を呼ぶ声に反応し、小十郎は我に戻り政宗の体を解放した。
泥と汗まみれの体で、大切な主君を抱きしめてしまったことに、小十郎は申し訳なさそうに顔を真っ赤にした。
そんな様子の小十郎に、政宗は口角をきゅっと吊り上げると、小十郎の腰に手を伸ばした。そして形のよい尻を撫で回すと、小十郎の胸元に顔を埋め呟いた。

「お前の汗の匂いで興奮した。小十郎…責任とれよ」
「〜〜〜〜〜〜っ?!」

盛り付いた政宗の内なる獣は、小刻みに身震いする小十郎を捕らえ離そうとはしない。
薄っすら目尻に涙を浮かべた小十郎は、「何処で育て方を間違えた」と心の中で唸った。
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