スマートフォン解析 政小 短編 | ナノ
秘め事の忘れモノ
随分背中がヒリヒリと痺れる。

寝ぼけ眼で布団の上に放り出されている筈の眼帯を手探りで探せば、布の摩擦で背中に微かな痛みが走る。


何事だろう。
そう思い、ふと考え込む体制になる為に布団の上で胡坐をかく。まるで座禅をしている修行僧のようだ、ふと脳裏に浮かび上がり薄っすら笑みが浮かび上がる。

微かに肩が揺れただけなのに、やはり微かな痛みが背中に走りこれは昨夜の内に何処かで擦り剥いてしまったのでは無いかと疑問が浮かび上がった。

政宗の脳裏に浮かび上がる昨日から昨夜までの出来事。
それは普段通りの日常だった。

朝、小十郎に起こされる。
多分畑仕事を済ませた後なのだろう。行水してきたのは、ほんのり髪の毛が濡れていた。

──水に滴るいい男だな

そんな事を脳裏に浮かべながら小十郎を見つめていると、早く起きてくれてと小言が飛んできたので
「小十郎がKissしてくれたら起きてやる」と返したのだ。
哀れになるほど顔を真っ赤にして──それでも真面目な小十郎は、ゆっくり瞼を閉じた。

据え膳か?

そう問えば
「お好きなようになさって下さい」
即座に返事が返ってきて思わず笑ってしまった。
遠慮なくお前のKissをGetするからな。
そういってゆっくり上半身を起こし小十郎の首の腕を回し、自分の方へ引き寄せて熱いキスをする。

寝ぼけ眼だった政宗は、小十郎との口吸いで意識がだいぶ覚醒してきた。
それでも尚も荒々しく攻めるように小十郎の舌を自分の舌で絡めては吸ったり甘噛みに堪能していく。

開放した時に見せる小十郎のうっとりとした表情は好きで堪らない。
まだ顔を赤く染めて荒い息を整えようとしている右目に、ご馳走様と云い残し布団から出た。

その後は何時も通り政務に明け暮れる。
山積みになった書類や書簡の山を目の前にし逃げてしまいたいと呻けば、軽く切れた様子で此方を見つめてくる小十郎と綱元の二人の視線が刺さる。

渋々仕事を進めていけば、殆どの書簡に目を通し終えたのはドップリ辺り一面が暗くなっていた。

終わった終わったと政宗の手から放り出された書簡を丁寧に纏める小十郎。

「お疲れ様でした」

そう告げる小十郎の表情は、まるで母親のように優しさで満ちていた。

唐突だった。
心の底から沸きあがる様な衝動にかられ、気がつけば小十郎を畳の上に押し倒していた。

散らばる書簡。
折角纏めたのですが……と呟く小十郎は、少しだけ困ったように眉を下げていたが。
それでも心なしか嬉しそうに見えた。
それが合図になり、気がつけば小十郎の身にまとっていた服を半ば強引に脱がしている自分の姿がそこにはあった。

そこまで思い出し、政宗は慌てて自分の両隣を交互に見た。
其処には昨夜愛し合った筈の右目の姿はない。

夢なのかもしれない。微かに落胆した政宗だったが、また背中に微かな痛みが走る。

その瞬間、脳裏に浮かび上がる昨夜の秘め事。
その痛みは、小十郎は政宗の背中に残した昨夜の想いをこめた爪あと。

「……っ……!!」

分かってしまえば、後はどうする事も出来ない。
込み上げた衝動を抱きしめ、政宗は一心不乱になりながら小十郎が居るであろう奥の政務室へと向かった。

つれない真面目な右目は、どんなに愛していると告げても朝になると政宗の前から消えてしまう。

そして何事も無かったように接してくる。勿論、秘め事の最中も、決して跡を残す事は無いのに……。

「小十郎!!」

密かに残された昨夜の秘め事の痕に、政宗は幸せを噛み締めながら右目の名を呼び続けた。
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