スマートフォン解析 政小 短編 | ナノ
俺についてくればそれでいい!
「小十郎!俺について来い!!」
「はっ!政宗様」

幼少の頃から政宗様は小十郎様を連れて歩く事が多かった気がする。2人の主従関係は、もう10年以上前から続いているらしく、主従……というよりは、年の離れた兄弟、または親子のような関係になっているのだと思う。

今朝方、小十郎様が登城した際も挨拶もそこそこに政宗様の呼び掛けが廊下に木霊する。やれやれと小さく溜息をつきながらも、擦れ違う小十郎様の顔は何処か嬉しそうに緩んでいるのに気がついたのは何時頃だっただろうか?

ある日、朝から小十郎様の姿を見かけなかったので首を傾げていると、何処かそわそわされた様子の政宗様と廊下で擦れ違った。
政宗様の姿を見かけすぐに頭を下げてしまったので、表情までは伺うことは出来なかったが、擦れ違う際に政宗様から小十郎様の匂いが──微かだったけど──漂ってきた。

その日はお昼頃になっても、小十郎様の姿を拝見する事は無かった。何時もならば中庭で鍛錬の為に政宗様と共に木刀を交わらせているのに……今日は一体如何されたのだろう。
中庭の隅で素振りをしていると、小走りで廊下を走る政宗様の姿を見かけた。
何時もならば「廊下を走ると危険ですぞ」と小十郎様の小言が飛んでくるのだが、今日は政宗様の足音しか聞こえてこない。

やはり小十郎様は登城されていないのだろうか。

ふと、ある一室の障子を政宗様が開け中に入っていった。それに関して別に違和感を感じたりはしない。
この城は全て政宗様のものだ。
持ち主がどの部屋に何時入ろうとも、それはおかしい事ではない。問題は、政宗様が手に持っていらっしゃった物だ。
此処からは良く見えなかったが、あれは水の入った桶のように見えた。

何かあったのだろうか?

不安になったので、足音を立てずに政宗様が入られた一室へと近づく。
すると、薄い障子の奥から政宗様の声が聞こえてきた。

「sorry.ちょっと無茶させすぎたな……今日は一日寝ていろよ」

話の内容からすると、部屋の中には政宗様以外にもいらっしゃる様だ。
しかし、何だか聞いている此方まで耳が熱くなる。

何故ならば、政宗様の声は普段の不敵な奥州筆頭としての喋り方ではなく、何処か甘ったるい―――まるで恋人に話しかけるような音色が含まれていたからだ。滅多に聞くことが出来ない。そう思うと、何だか気恥ずかしくなってくる。此方が顔を真っ赤にしていると、室内から布の擦れる音が聞こえてくる。

何をしているのだろう。

本来なら許される事では無いのだが、好奇心には敵わない。障子をゆっくり開けようとすると、室内から凄みを含んだ声が聞こえてきた。

「ま、政宗様!止めてください……っ」

不味い!

開けようとしたことがバレたのかと思い、ついつい手を引っ込めてから気付く。
声の主は「政宗様」と云ったのだ。自分の行動がバレた訳では無い様だ。安堵から胸を撫で下ろしていると、ふと脳裏に浮かんだ1人の人物の姿があった。先ほどの声は、何処かで聞いた事があるぞ。

随分擦れていたが、先ほどの声は……ま……まさか……っ

恐ろしいものでも見るかのように、心臓が音を立てて鳴り出す。
ゆっくりゆっくり障子に手を掛けると、タイミングを見計らったように奥から声が聞こえてきた。

「何、遠慮してんだ小十郎。俺のせいで下半身が動かないんだから、俺が責任持って着替えさせてやるって言ってんだろ」
「だから遠慮致しますと、何度も言わせないでくだされ。主にそんな事はさせられません」
「だーかーらー!仕事中以外は、恋人として接しろってrepeatさせんなよっ」
「俺も何度だって云わせて頂きます!少しは人の上に立つ人間としての自覚を持ってこの糞がきがぁぁぁ!!」
「昨夜はあんなにも可愛かったのによ〜」
「いい加減にしやがれ!!」

俺は何も聞かなかった
俺は何も見なかった
俺は何も聞かなかった
俺は何も見なかった
俺は何も聞かなかった
俺は何も見なかった

合言葉のように呟きながら、その場を去っていった。

その後、2人がどんな行動に出るか考えないように一日を過ごしました。明日から、政宗様と小十郎様をどんな顔で見ていいか分かりません。

今日も奥州は平和です。
prev bkm next

[ top ]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -