スマートフォン解析 政小 短編 | ナノ
竜に食われて
目を覚ませば、そこは炎に包まれていた。
真っ赤な紅蓮の炎は、屋敷を焼き焦がす事無く朱へとゆっくり染めていく。
紅色の空の上空。黒い鳥が寂しそうに鳴けば、既にこんな時刻なのかと小十郎は思う。

夕日に染められた屋敷の一室は、まるで炎に包まれたように真っ赤に染め上げられていた。炎の正体は包み込むような温かい夕日である。
ぼんやり思考を巡らせば、傍にあの人がいない事に気がつき気だるそうな面持ちで体を動かす。床に手を沿えゆっくり上半身を起こそうと力を込めるものの、鈍い痛みが下半身に走り小十郎は顔を顰める。

覚えている最後の光景は、心の底から幸せそうに微笑む主君の笑顔であった。
目を細め微笑む陽だまりのような笑みは、今まで幼少のことから仕えてきた小十郎でさえ見たことが無い優しくも幸せに満ちた表情であった。

「あんな表情もされるのだな……政宗様は……」

痛みを感じながらも、小十郎は何とか上半身を起こし辺りの様子を見回した。
そして今、自分がいる場所が何処か把握した。

上質な褥。枕元には主から賜った愛用の刀。
自分の体にかけられていた布団の上には、主の物と思わしき上質の着物が掛けられている。どうやら、またしても伽の最中に意識を手放してしまったらしい。
そう察した小十郎は、わずかに主の温もりが残る上着を手に取り引き寄せた。

『小十郎』

脳裏に浮かぶのは、甘く囁かれた声。
体の芯が甘く痺れ、小十郎は辛そうに眉間に寄せるとゆっくりと目を閉じた。
口元へ持っていき、その場に既に姿の見られない愛しい人を思い浮かべる。
泣きそうなくらい顔をくしゃくしゃにし、小十郎は自分の体を抱きしめるように丸まった。

「政宗様……政宗様……政宗様……」

体の芯から湧き出る想い。互いにグチャグチャなドロドロになるまで竜に喰われた昨夜。

それでもまだ足りないと、政宗は小十郎を喰らう。
これだけでは心が満たされない。
もっともっと、もっと。
縋る様に政宗の背中に腕を伸ばし、小十郎は快楽に溺れて行った。

「俺も……まだまだ、だな」

小さく呟かれた言葉は真っ赤に染まり溶けていった。
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