スマートフォン解析 政小 短編 | ナノ
秘密
片倉小十郎という人物は奥州に必要不可欠な存在であった。竜の右目とも名高い男は他国からの誘いも断り、政宗ただ1人を主とし忠誠を誓っている。
政宗からの信頼も厚く、伊達軍の策謀として腕を振るうその姿を見て彼に憧れを抱くものも少なくは無い。

誰にも云えない関係。
そんな小十郎は大きな爆弾を抱え込んでいた。それは主である政宗と、主従関係を通り越し恋仲という関係に至っているという事実だ。

政宗自身そんな事は気にも留めてはいない。無論、伊達軍の武将たちの中には2人の関係に気がついている者もいるだろう。
だがそれでも、小十郎はこの秘密を誰も明かそうとはしなかった。
墓場まで持っていくつもりだった想い。それを暴かれてしまったのは、何時のころだっただろうか。
それを受け入れてもらい、今こうして共に過ごせる事をどれだけ感謝しているか。

だからこそ、小十郎は恐怖を感じていた。何時か終わりが来るであろう、この関係に。

「政宗様……今夜はもう帰らせて頂きたいのですが」

深々と頭を下げ、晩酌に付き合えと小十郎を縛り付けていた主に懇願する。頭を下げている小十郎には、政宗の表情は伺えない。
だが明らかに不機嫌な様子だということは察する事は出来る。纏っている空気が先程とは異なるからだ。

「小十郎、顔をあげろ」

静かに命じられ、ゆっくり上半身を起こし顔をあげる。其処には先ほどまで愉快そうに笑っていた主の姿は無かった。

「朝まで付き合えって云ったよな?」
「……所用を思い出しまして」
「……俺との約束を破るほどの用事か?」
「…………いいえ」

だったら付き合え。突き飛ばすように小十郎を床に押し倒し、政宗はその体に覆いかぶさった。
交じり合う視線。小十郎は居た堪れず視線を逸らす。それが面白くなかったのだろう、政宗は小十郎の頬を軽く叩き呟いた。

「不安か……?俺と一緒に居ることが」
「……いいえ」

返す言葉は重い。
政宗はゆっくり体を離すと、小十郎から降りた。
突然の行動に驚き目を見開く小十郎。そんな小十郎を気にも留めず、政宗は襖を開け縁側に姿を消した。

「ま、まさむねさま……っ」

まるで親においていかれた子供のような声を張り上げ、小十郎は体を起こし這うように縁側に体を乗り出した。

「……ここまでしないと、判らないか?全く」

ふと横から呆れたような声が聞こえ、小十郎が振り向こうとした瞬間。政宗に抱きしめられ視界は遮られた。
政宗の温もりを感じ、じわり浮かび上がる涙。それを察せられまいと政宗の肩に顔を押し付け、小十郎は体を震わせた。
小刻みに震える肩を優しく撫でながら、政宗はあやすように小十郎に声をかける。

「確かに不安かもしれねぇな。お前は俺が赤ん坊の時から知ってるもんな。そんな餓鬼相手じゃ、確かに不安だと思う。だが小十郎。俺を信じてくれ。俺は絶対にお前を手放したりしないし、お前の目の前から姿を消さない。だからもっと俺に心を委ねろ。甘えてくれ」

囁かれる言葉は、じわりじわりと小十郎の心に染み渡っていった。
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