スマートフォン解析 政小 短編 | ナノ
眼帯
ぼんやり浮かぶ黒い物体。
これは何だろう。
ゆっくり手を伸ばせば、体の芯が痺れ小さく呻き声が零れ落ちる。
ゆっくり脳裏に浮かび上がる昨夜の行為に、小十郎は自分が床に横たえた状態のままという事に気がつく。
ゆっくり腕を天井に向けて伸ばせば、節々に見える強欲な竜が残した赤い印。

あぁ、そうだ。

ふと自分を包み込むような温もりに気がつき、ゆっくり横を見れば、小十郎の体を包み込むように抱きしめる愛しい人の姿があった。
普段は眼帯で覆われている右目のは露になっており、その傷跡を見るたびに小十郎は心が痛くなる。
政宗の為とはいえ、小十郎自身が付けた傷だ。それを知ってか知らずか、政宗は必ずといっていいほど、小十郎と過ごす夜の時間は眼帯を外すのだ。
それも必ず小十郎の手で外させる。

まるで、この傷を小十郎に確かめさせる為に。

この度に顔を逸らし黙り込む小十郎は、痛々しい表情を浮かべる。そこ顔を見つめながら政宗は小十郎の顔を引き寄せ、真っ赤に染まる耳元に言葉を吹きかける。

「忘れるな、小十郎。この傷はお前がつけたもんだ」

忘れるわけが無い。決して消えぬ罪の証。無意識に潤む小十郎の眼を見つめ、政宗はさらに言葉を続ける。

「忘れるな小十郎。この傷がある限り、お前は決して俺から逃がさない」

逃げられるわけが無い。そもそも逃げたいとも思わない。
小十郎は毎夜毎夜、政宗に呼ばれる度にそう思う。

呼び出される度に気付く。こんなにも恋焦がれているのだと。
引き寄せられる度に思う。このまま離れたくない。
食われる度に願う。このまま一つに交わりたい。

床に転がる眼帯に手を伸ばし、小十郎はそれを素知らぬ顔で部屋の隅に放り投げた。
もう少しだけ、このままでありたい。小さく願いながら小十郎は重い瞼を閉じ、再び眠りの中へ誘われて行った。
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