スマートフォン解析 政小 短編 | ナノ
ギャップ萌え
世の中には、色々な種類の萌えというモノがあるらしい。
政宗は南蛮から取り寄せた「萌え大百科事典」を眺めながら、自分の身近な萌えを連想した。

「萌えっていっても、そんじょそこらの女じゃ話にならねぇし……」

物理的にも可笑しいレベルに目が顔の半分をしめた大きさの女の子が、南蛮の服なのだろうか兎の耳を頭につけ真っ白なピラピラしたメイド服なるものを身に纏っている。

これが最新の萌え「ツンデレ」と「妹萌え」だ!

表紙にはそんな文字が書かれているが、いまいち政宗にはこの女の何処が萌えなんだか分からないらしい。

そもそも萌えとは何なんだろう。

そんな疑問が脳裏に浮かぶ中、廊下を歩く足音が此方側に近づいてくるのを聞き政宗は慌ててその本を隠した。
隠したと同時に襖が開かれ、奥から大量の書類を抱えた小十郎が入ってきた。

「政宗様、また職務をさぼられていらっしゃったのですか?」

只でさえ泣く子も黙る厳つい顔をしている小十郎は、眉間に深い皺を寄せ政宗を睨み付けて来る。
はたから見れば恐ろしい形相も、政宗からしてみれば誰よりも凛々しくて愛らしい顔に見えてくるのだ。

恋とは奥が深い。
そんな事を考えていた政宗は、唇を尖らせ拗ねたようにそっぽを向いた。

「職務職務って、小十郎、お前はそれしか云えないのかよ」
「政宗様がしっかりやってくださっていれば、小十郎はこれ以上何もおっしゃいませぬ」

呆れたように溜息ひとつ。小十郎は手にしていた書類の山を政宗の目の前に降ろす。
その瞬間、日々の激務のせいか疲労がたまっていたのだろう。
軽い立ち眩みをした小十郎は、バランスを崩し書類の山へ体を倒してしまった。
小十郎を支えようと腕を伸ばした政宗だったが、結局2人一緒に仲良く床に寝転ぶ結果となってしまったのだが……。

「あたた……大丈夫か?小十郎」
「はい……政宗様、申し訳ありませんでした」
「気にすん……なっ!?」

政宗に迷惑をかけてしまったという失態に、声が震える小十郎。そんな小十郎に気にするなと安堵させようと政宗はゆっくり体を起こしたのだが、目の前の光景に思わず視線が釘付けになる。
そこには鼻を床に摩り付けてしまい、鼻先が赤くなっている小十郎の姿があった。
普段はきっちりされた前髪は解れ、痛かったのだろうか目じりに薄っすら涙が浮かんでいた。

「まさむねさま?」

硬直してしまった政宗を見て、もしや何処か体を打ったのではと心配した小十郎は慌てて政宗の体に擦り寄るように見つめてくる。
心配そうに見つめてくるその表情は、普段のキリッとした忠臣の姿は欠片も見当たらない。困ったように泣きそうな表情を見せる小十郎は、普段とのギャップが激しく政宗の胸を力強く締め付けてくる。

「こ、これか!!」
「は?政宗様?」

政宗は小十郎の両肩を鷲掴み、勢い良く床に押し倒した。突然の出来事に対処しきれない小十郎は、ただただ唖然と政宗を見つめるしか出来なかった。

「……政宗様?」
「小十郎……これがギャップ萌えってやつだ」
「ぎゃっぷもえ……でございますか?」
「おぉ!あとでお前のために、南蛮からメイド服を取り寄せてやる」
「……冥土服ですか?」

とことん噛み合わない2人の会話。政宗は小十郎が理解していないであろう事を重々承知しながら、逆にそれを理由しようと目論んだ。
流してしまえばいい。あとは、お互い快楽と欲望に任せるだけ。

「小十郎とメイド服……これがギャップ萌えか!!」
「……冥土服、何やら強そうな服でございますな」

後日。問題の冥土服が届き、小十郎が頭を抱えるのはもう少しだけ先のお話。その時、甲斐まで巻き込んだ問題が発展するのだがそれはまた何時かの機会で。
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