空が思いの外青いのだという事を知ったとき、俺は死ぬのだと思ったのだ。
 硝煙と粉塵舞い散る戦場で、上空は飽く事なくずっとずっと青いままだった。俺はその青さをどれほど見上げていなかったのだろう。痛覚の失せた四肢は端から感覚を亡くしていって、そのさざ波のようなゆらめきの感覚に俺は死を悟る。
 何処に別れを言えば良いのか、この瀬戸際に誰を思い浮かべればいいのか。なにも分からぬままにこうして俺は空の青に吸い込まれようとしている。
 ――そう、まさにそんなときだった。
 青を遮るようにその黄色はやって来た。
 微かな触覚の向こうで黄色は俺の脈を測り患部を圧した。
 動いた口元が お,う,い,え,と言った。耳には聞こえなかったが後から考えればきっとそれは'モルヒネ'だった。そうすると次第に硬直していた身は自然と弛緩していって、さざ波は止まり不思議な心地よさに包まれる。
 これはとうとう本格的なお迎えがやって来た...俺はそう思い、目の前の黄色に行き場なく彷徨っていた誰かへの、何処かへの、何かへの別れを告げる事にする。
 止まりそうな肺で懸命に息を吸い込む。なかなか上手くいかない。数口、ただ開閉する。声も出せず俺は――――やわらかな感触の口付けを最後に、俺は意識を失った。



兵士青峰×衛生兵黄瀬...でした。一応。
この後救護所にて青峰っちは目覚め、戦場復帰した先で黄瀬くんと再会します。たぶんね!





2014/01/08 12:39




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