ToriChia-4 | ナノ


 リベンジ!めそりトリ大作戦☆
※文庫本4巻のネタバレ有り※若干R15?


俺は今日、壮大な作戦に挑もうとしている!!
その名も…

『リベンジ!めそりトリ大作戦☆』


白いルーズリーフにでかでかと作戦名を書きなぐり
俺は綿密な計画を練り始める。



そもそもこの作戦をなぜ俺が計画することになったか。
事の発端は、優との会話だった。


友人である柳瀬優が俺の恋人兼担当兼幼馴染の羽鳥芳雪を
Mだと言い出したのがはじまり。


俺としては断固そうじゃないと言いたいが、
(そりゃ普段どんだけネチネチやられていることか)

以前、酔っ払っていた時に弱気なトリを
見ていたこともあって、

俺はメソメソしたトリを見てみたいと
思いつき、大量のビールを買い込み
トリを酔っ払いにする計画を立てた。


しかし結果は、メソメソどころかさらにネチネチ。
締め切りを守らないことをいつも以上に怒られた。

そして、さんざんぶつくさ言った後
俺のひざの上にのしかかってぐーすか寝てしまい
俺のめそりトリ計画第1回は失敗に終わったのである。


まぁ…あの時のトリはちょっと無防備で
可愛いかな、なんて思ったりもしたけど。


それとこれとは別なんだ!


ちょっと横にずれた自分の思考を修正して、
再びルーズリーフに向かい合う。



「んー…結局、ただ飲ますだけじゃ
 ねちトリに変身するだけだもんなぁ。」


シャープペンをくるくると回しながら俺は思案する。
大量のビールを飲ませるだけでは前回と同じ。

ネチネチやられて胃が痛い思いをするだけだ。

じゃあどうすればトリがメソメソするような
飲み方をするのか…



「そういや、前のよっぱらい事件の時は
 えらく疲れてたよな!」


ぐったりとしながら花束をもって現れたトリを
思い出すと今でもちょっと笑える。


「ってことは…ずばり締め切り明けに
 大量に飲ませればめそりトリ完成じゃん!」


頭の中のひらめきに俺天才かも、なんて
考えながら、工程をメモしていく。


まずは締め切り明け、必ずうちに来るだろうから
その時に大量のビールを用意しておいて、

おそらく締め切りは破るだろうから
そのことを、こう、ちょっと可愛い感じで
謝りながら酒を勧めればトリも断らないだろう。


「よし!完璧!…ってことで…はぁ…」


小さくガッツポーズをして計画の成功を確信した俺は
まずその計画の前に俺が成功させなければいけない
【原稿】に向かい合うことにした。







そして締め切り明け。


案の定、締め切りをぶっちぎり、デッド入稿になった俺は
それでも計画を遂行するためフラフラの身体に鞭打って
ビールを用意していた。

しかし、今回はすでに計画が少し狂っていた。
今回の締め切り破りは俺のせいだけではないのだ。


急遽、他の先生がダメになって頼み込まれた
付録用のカットが増えたため、進行がいつも以上に
厳しいものになっていた。


「あー…前もこんな目にあった気がする。」


あの時は倒れてしまうほどだったが、
今回はどうにか倒れずに持ちこたえた。


それも、もともとの自分の原稿をそれなりの
ペースで進められていたおかげで、
トリには今回怒られるどころか、何度か褒めてもらっていた。


というわけで、当初締め切り破りでお疲れ&お怒りのトリに
酒を飲ませるという状況ではなくなったわけだ。

まぁ、いつも以上に疲れているだろうから
大きな問題はないと思うけど…

唯一、問題があるとすれば
疲労困憊の俺がどこまで保つかってことで。






そんなことを考えているうちに
合鍵を使って入ってきたトリがやってきた。



「お疲れ…って、なんだそのビールの量は。」

入ってくるなり用意されている
ビールの量にトリの眉間のシワがさらに深くなる。


「いいじゃん、今回すげぇ疲れたんだから
 お疲れビールくらいしてもいいだろ?」

「それはいいが…あまり一気にアルコールを
 入れると危険だからな。」


想像以上に渋い顔をするトリ。
しかし、そんなことでへこたれている場合じゃない。



「なぁ、トリも一緒に飲もうぜー。」

「先に飯の用意をしようと思うんだが…」



今回、俺に無理な仕事を頼んだ罪悪感か
その言葉は歯切れが悪い。


仕方ない。出来ればやりたくなかったけど
めそりトリを見るためだ!


「と、トリも疲れてるだろ。今は…
 先に2人でくつろぎたいんだけど。」


トリから顔を背けて、ぽつりと呟いてみる。
すると息を飲むような音が聞こえた後。


トリは静かに俺の隣に座った。

よしよし。ここまでは計画通り。
言った台詞は恥ずかしいが、ここは名誉の負傷ってことで。



「そうだな。吉野、今回は本当にお疲れ。
 無理を言って悪かったな。」

そう優しい声で言われて、頭をくしゃりと撫でられる。


「ん。」


なんかその声が恥ずかしくてむずむずして
俺は手にしていたビールを一気に煽る。


「こら、一気に飲むなって。」

「いいの!」


優しく窘められるたびに気恥ずかしさで沸騰しそうになる。

トリを酔わせてめそりトリにするはずが、
気がつけば、俺はどんどん自分でビールを空けてしまっていた。








「ひっく…」

「ほら、一気に飲むから。顔真っ赤だぞ?」

「うるしゃいなぁ〜。おまえものめ〜。」

「飲んでるって。」


ビール缶を5本くらいあけたところで
頭がふわふわして、思考がおぼつかなくなる。

高揚した気分と同時に、隣にいるトリが恋しくてしかたなくなる。



「なぁ…トリぃ?」

「なんだ。」

「ひざまくら。」

「は?」

「ひざまくらして。」


そこまで言って答えを聞かないまま
俺はぼすんっとトリの膝の上に頭を落とす。



「っ…」

一瞬だけ、トリの目が大きく見開いて俺を見つめた。
俺はその顔に手を伸ばして、頬を撫で回す。



「俺さぁ、トリの顔すげぇ好きなのかも。
 あと声とか、おっきー手とか…
 28年も一緒にいたのにさぁ…」

「吉野、お前酔ってるだろ。」

「酔ってませぇん。」


困ったような、照れたような表情のトリに
俺はどんどん気分が良くなって
自分の頭をぐりぐりとトリの腹に摺り寄せる。



「お前な…」

「トリぃ…俺さぁ、今日はめそりトリが
 見たかったんだよ。」

「は?なんだそれは。」


「トリがメソメソしてさぁ…俺なんか俺なんかーって
 言ってそれを俺がまぁまぁってなだめんのー。」

「そんなことが起こるわけないだろ。」

「だっておまえ、酔っ払ったらちょー弱気じゃんー?」

「いつの話だ。」

「お前が俺にやらしいことたくさんしたくせに
 すっかり忘れてる日のことだー!!」

「…あの日か。」


トリが少し苦い表情になる。
あの日のことはほんとに覚えてないようだ。


「あんなに俺のことぐちゃぐちゃにしたくせに…
 恥ずかしいこと言わせたくせに…
 覚えてないなんて…ひどい…」

「それは…すまん。」


神妙な顔で俺に謝るトリがなんか可愛くて
アルコールで温まった頭で考える。

なんか今なら何でも出来る気がしてきた。



「おしおき。」


俺はトリのYシャツをズボンから引き抜いて
腹が見えるようにめくりあげる。


「千秋…お前、何して…っ」


トリの声をさえぎるように、
外気に晒された部分にちゅっと唇をつける。

いきなりのことに驚いたのか、
トリの身体はびくんっと跳ね上がった。

それが楽しくて、トリの問いに答えもしないまま
今度はわき腹の辺りにはむっと噛み付く。


何やってんだろう俺、とか
めそりトリを見るはずなのに、とか

頭の中にはいろんなものがぐるぐると渦巻いているけど


湧き上がってくる衝動に抗えない。


今は…トリに触れてたい。
締め切りに追われている間、身体に触れることはおろか
キスすらしていなかったんだ。

アルコールで箍がはずれて
もう自分では歯止めが効かなくなっていた。



「ちあ、き…」

少し上擦ったトリの声に鼓動が早くなる。
そのまま舌を這わせていくと、身体をがっと掴まれた。



「トリ…?」

「こんな風に煽って…覚悟はできてるのか?」


見上げる先には獣の瞳。
アルコールであがっていた体温が更に急上昇する。

その目に射すくめられるだけで
身体の中がずくりと疼くなんて…

俺、考えてる以上にトリに溺れてるのかもしれない。


「こんなとこでがっつくなよな…」


持てる理性を総動員してもそんな言葉しか出てこなくて

誰のせいだと呟いた後、
トリはにやりと意地の悪い笑みを浮かべた。



「じゃあここじゃなければいいのか?」



そんな余裕たっぷりの問いかけに
どうにか意趣返しがしたくて、俺はぎゅっとその身体に抱きつく。


そしてその耳元に唇がつくような距離で
ベッドまで行けたらご褒美やる、そう囁いた。


途端、身体が宙に浮いてトリの肩に担がれたと気づく。

いつもなら抵抗するところだけど、
まぁ、俺が誘ったようなもんだし、仕方ないかとも思う。


あれ?やっぱり今の俺はなんか変だ。

あーぁ、それにしても今回も計画は失敗だったな。



それが理性が飛ぶ前に考えた最後の言葉。



***


「馬鹿野郎!締め切り明けだからって
 足腰立たなくなるまでヤリやがって!」

「朝からうるさい。大体誘ったのはお前だろ。」


「俺がそんなことするわけないだろ!」

「お前それは本気で言ってるのか。」


「当たり前だ!トリの鬼畜!人でなし!」

「……」




『リベンジ!めそりトリ大作戦☆』を決行したはずの翌日。


なぜか俺はベッドにしずめられているし、
メソメソしたトリを見た記憶もない。

というか正直、抱かれている最中のことすら覚えてない。
なんでそんな流れになったのかも。

しかし現に身体は重く、腰には鈍痛。
ヤラれた事は間違いない。しかも…かなり…は、激しく…


もしかしたら、前みたいに酔ったトリに
強引に襲われたのか…!?くそう、なんて奴だ!



「罰として飯1週間な!」

「…。」





*END*
110808 脱稿


【後書き】

4巻と逆で千秋を酔わせてみたらどうなるか実験(笑)
結果、中途半端に煽ってトリに頂かれてしまいましたw
そして同じように記憶がないwトリは災難です(笑)

千秋は酔っ払うと、トリにべたべた甘えるの希望←
膝枕も自分からいっちゃうww

千秋がめそりトリを見れる日は来るのか!?



[戻る]


第4回BLove小説・漫画コンテスト応募作品募集中!
テーマ「推しとの恋」
- ナノ -