Op-10周年記念オールキャストパーティー | ナノ


 10周年記念オールキャストパーティー


都内某所の高級ホテルの最上階ホール。

そこにはあることを祝うために
多種多様な人間が集まっていた。


「それでは改めて、純情ロマンチカ10周年
 おめでとうございますー!!」


丸川書店の編集である相川絵理の声に、
全員が持っていたグラスをぶつけあい、
このめでたい年を祝う。



「いやー、しかし10年とは素晴らしい。」

「そうですね。作者である
 中村春菊先生の努力と才能あってのことでしょう。」


丸川書店専務取締役の井坂龍一郎が
上機嫌にそういうと、隣に控えていた朝比奈も頷く。


「俺たちが生まれてから10年ってことだもんな。
 よく考えてみたらすげーことだな。」

「はい!ヒロさんと出会って、
 いろいろあったけど素敵な10年でした。」


M大文学部助教授の上條弘樹の言葉に
研修医の草間野分が嬉しそうに微笑む。


「宮城と会ってから10年か…
 やっぱ老けたよな、おっさん。」

「老けっ…いっとくが10歳年取った訳じゃ
 ないんだからな!」


毒舌で恋人をからかう大学生の高槻忍に
M大文学部教授の宮城庸はめでたい席で半泣きである。


「まぁ、なんにせよ10年間、美咲との
 濃厚な日々をファンのみんなに届けることが
 できているのだから素晴らしいことだ。」

「濃厚とか言ってんじゃねぇ!もっと他に
 言うことがあるだろ!」

「ほう、例えば?」

「…お、俺の身長が10年間で伸びたとか!」

「中村先生にも自己申告と書かれていただろ。」

「ぐっ…」


大学生の高橋美咲の健気な主張を、
大物作家の宇佐見秋彦が見事に叩き潰し笑う。



彼らはみな、今年で10周年となる作品、
『純情ロマンチカ』の登場人物であり、
それを祝うためにこの場に集められたのだ。

ちなみに彼らの親兄弟や、友人、知人も集められて、
10年苦楽を共にしてきた者同士、
今日は盛大に祝おうとの事で、

高級ホテルのホールを貸し切り
『10周年記念オールキャストパーティ』と
銘打たれた宴をそれぞれが楽しんでいた。


そこへ、新たに9名の人物が登場する。



「10周年おめでとうございます!」

「おめでとうございます。」



その9名とは、純情ロマンチカとリンクしている
別漫画、世界一初恋の登場人物達だった。


丸川書店で働いている、
エメラルド編集部編集長・高野政宗を筆頭に
副編の羽鳥芳雪、編集の木佐翔太、美濃奏、小野寺律。

同じく丸川書店営業の横澤隆史。
ジャプン編集部の桐嶋禅。

そして、漫画家の吉野千秋と
美大生で書店アルバイトの雪名皇。


彼らもまた、純情ロマンチカ10周年を祝うために
この場に呼ばれたのであった。



「宇佐見先生、お久しぶりです。
 この度は10周年おめでとうございます。」

「あぁ、ありがとう小野寺。」


昔、宇佐見の担当をしていた
小野寺が恭しく祝いの言葉を述べると宇佐見は微笑む。

その横から高野も祝いの言葉を告げた。


「本当におめでとうございます。
 10年も続いているお2人の関係に感動してますよ。」

「か、か、かんどうって…!」


高野の言葉にあたふたと顔を真っ赤に染めた美咲を見て
小野寺はなんだかとても親近感がわいた。


「高橋君、これから先も大変だろうけど
 お互い頑張っていこうね!」

「小野寺さん…!」


お互いのこれからの健闘を祈る2人に、
宇佐見、高野の目が光り始めた瞬間。


相川が壇上に駆け上がってマイクを取った。



「はーい、みなさん注目してください!」



その声に会場にいた全員が壇上へと視線を送ると
相川は満足そうに笑って話し始めた。


「えー、今回の純情ロマンチカ10周年を記念して
 ひとつの催し物を行いたいと思います!」


「催し物?なんだそれ。」

「なんでしょうね?ビンゴ大会とか?」


上條が首をひねると、野分もそれに倣って首をひねる。


「催し物なんて聞いてないぞ。俺、専務取締役なのに。」

「丸川社内のことではありませんからね。
 龍一郎様がご存じなくても仕方ないかもしれません。」


突然の発表に、ぷんすかと頬を膨らませる井坂を
朝比奈がいつものように宥めにかかる。


「なんだかろくでもないことの気がする。」

「おじさんも同感。このメンツが集まって
 まともなことがあった試しがないもんな。」


心底嫌そうに呟いた忍に、宮城も渋い顔をする。

その他の面々もざわつく中、
世界一初恋のメンバーが壇上へと進んでいく。



「小野寺さん?」


不思議そうに見送る美咲に、小野寺は少しだけ
申し訳なそうな表情を浮かべたが、

高野にひっぱられるように連れて行かれた。



そして全員が壇上に登ると、相川の指示で
雪名と木佐が大きな弾幕のようなものを広げる。


そこには…

「純情ロマンチカ10周年&15巻発売記念…
 童話パロ『純情の国のアリス』!!??」


弾幕に書かれていた文字を大きな声で
美咲が読み上げれば、その場の全員がきょとんとする。


「なんだそれは。」


明らかに怪しげな雰囲気を感じ取った
宇佐見が相川を睨みつける。


「宇佐見先生、美咲君、美咲君のお兄さん、
 上條さん、草間君、宮城さん、高槻君、専務、朝比奈さん、
 伊集院先生、宇佐見春彦さん、角君、藤堂君、薫子さん、水樹君。

 この15名に不思議の国のアリスならぬ、
 純情の国のアリスを演じていただきます!」


相川の高らかな宣言に合わせて、
羽鳥と千秋がクラッカーを鳴らす。


「ええ!?俺も?」

「演じるって…お芝居をしろってこと?」

「…何故私がそんなことを。」

「めんどくさいんすけど。」

「えー、でもなんか楽しそうっすよ?」

「どうして私と美咲のラブロマンスじゃありませんの!?」

「激しく嫌なんだけど。」


メインの輪から外れていたその他の名前が挙がった
人物たちも一斉に自分の意見を述べ始める。


収集がつかなくなってきたその場に、
1人の声が響き渡った。



「みなさん、どうかご協力いただけませんか。
 この童話パロは、くっだらない話を毎日書き綴っている
 某サイトの糸なんたらという管理人が

 ない頭をひねって、10周年のお祝い、そして
 駄サイトに来てくださる皆様に楽しんでいただきたいと
 考えた企画です。」

「高野さん、滅多打ちですね。」


高野の辛辣な…ごほん、丁寧なお願いに
騒いでいた面々も大人しくなり、某管理人も涙をこぼし、

会場は静けさを取り戻した。


その静寂の中、今度は小野寺が言葉を引き継いだ。


「このアリスの演目は、サイトに来てくださる
 素晴らしい方々が投票してくださったんです。
 少しでも喜んでいただくために…お願いします。」


その真摯な声音に応えたのは美咲だった。


「なんか…よくわかんないけどさ。
 せっかくの記念なんだし…喜んでもらえるなら
 やってみませんか?」

「俺は美咲が構わないのならいいよ。」


おずおずとした発言を宇佐見がフォローし、
美咲に安堵の表情が広がる。



「まぁ…やってやらないこともないけど。」

「そうですね。みなさんに10年間のお礼も込めて。」


「しかたねーからやってやるか。宮城は俺の下僕な。」

「下僕なんて配役はありません。ま、祭りと思って楽しむか。」


「協力してやってもいいがギャラはでるんだろうな。」

「相変わらずひねくれた言い方しかできないお方ですね。」


その他のメンバーも、徐々に頷き始めて、
ついに童話パロを演じることが決定した。



「やったな、小野寺。」

「そうですね。」


わいわいと盛り上がり始めた一同を見て、
高野が隣にいた小野寺に笑いかける。


「これで俺たちは助かった。」

「…はい!」


実はこの企画、初めは純情組を祝うため
セカコイメンバーが演じる予定だったのだが

自分たちに災いが降りかかるのを恐れた高野達が
純情メンバーに演じることを了承させるという条件で
演じる側を回避したのだった。


「ごめんね、美咲君。」


壇上で小さく呟いた小野寺の声は、
下で宇佐見にセクハラをされている美咲には届かなかった。


「じゃあ続いて、配役を発表するぞ。
 ちなみに脚本は俺が担当した。よろしくな。」


そう告げる桐嶋に一同は注目する。
そして、気になる配役が発表された。


「アリス:高橋美咲、白うさぎ:宇佐見秋彦
 チェシャ猫:伊集院響、芋虫:宇佐見春彦
 ハートの女王:井坂龍一郎、ハートの王:朝比奈薫
 トランプ兵:角圭一、マッドハッタ―:宮城庸
 三月うさぎ:高槻忍、眠りねずみ:藤堂進之介
 トゥイードル・ディー:草間野分
 トゥイードル・ダム:上條弘樹
 アリスのお姉さん:高橋孝浩
 お花たち:宇佐見薫子&椎葉水樹。以上だ。」



かくして、純情組メインキャラ及び
その他数名のメンバーで

『純情の国のアリス』が開幕される!!


第1幕


[戻る]
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -