Re-UsaMisa-1_7 | ナノ


 大事なもの1つだけ[7-SIDE 美咲-]



翌日。


案の定、兄チャンと義理姉チャンが
大騒ぎで駆けつけてきた。



「み゛ざぎぃー!!無事が!?
 怪我しだりじでないがぁ!?」

「うん、平気だよ。
 てか兄チャン、涙と鼻水ふきなって。怖いから。」


なんかもうぐっちゃぐちゃの兄チャンに
抱きしめられて、俺は笑うしかなかった。


「でも、ほんとにもう大丈夫なの?
 警察には言わなかったんでしょ?」


そんな俺に義理姉チャンが心配そうに尋ねてくる。


「うん…もう大丈夫だと思う。
 ちゃんとわかってくれたし。」

「でも、昔助けてあげた人が誘拐しにくるなんて…」

「ほんとだよ!いくら美咲が可愛いからって
 恩を仇で返す様なこと…」


「兄チャン、義理姉チャン。
 ほんともう心配しなくて大丈夫だから。」


ヒートアップする2人をどうにか宥めていると、
おもてなし用のケーキを買いに行っていたウサギさんが帰ってきた。



「あ、ウサギさん!おかえり!」

「ただいま。孝浩、真奈美さん…
 もう来てたのか。」


ウサギさんは目を丸くして驚いている。
確かに兄チャン達は予定より1時間もはやく到着していた。


「あ、ウサギ!ごめん、どうしても
 美咲が心配で…」

「…まぁ、孝浩の兄バカは今に始まったことじゃ
 ないからな。ケーキ買ってきたから。コーヒーでいい?」

「わざわざすいません。お気遣いいただいて。」

「そうだよ、ウサギ。遊びに来たんじゃないんだし。
ケーキなんか用意しなくてもよかったのに。」


そういって兄チャンが困ったような顔をする。


「あ、あのね。俺がケーキ食べたいって
 ウサギさんにお願いしたんだ!で、せっかくだから
 兄チャンや義理姉チャンと一緒に食べたくて。」

「美咲…そっか。じゃあ一緒に食べような。」


俺を抱きしめたまま、ほお擦りして兄チャンが笑う。
うん、これで気を使わせなくて済んだかな。





***


兄チャン達が名残惜しそうに帰って行った後、
ウサギさんは俺のそばから離れなくなった。


ずっと俺を抱きしめて頭を撫でている。


いつもならやめろというけれど、
なんだか心地よくてそのまま身を任せている。



「美咲、こんな時まで気をつかわなくていいんだ。」


不意にそう呟かれた。


「え?」

「今日のケーキのこと。お前、孝浩達が
 気にしてるからってあんなこといっただろ。」

「それは…えっと…」


なんだかいたたまれない空気になる。
今度はウサギさんに気を使わせてしまったのだろうか…


「美咲…」

「んっ…」


俯いていると、顎をぐっと掴まれて
瞬きをする間もなく、唇を奪われた。


「はっ…んぅ…ふ…」


深い深い…深くて堕ちていきそうなキス。


「ぷぁっ…いきなり何すん…」


一度離された唇が抗議の声をあげると
今度はソファーの上に押し倒されて、また深く貪られる。


「あっ…んむ…」

「っ…美咲…美咲…」


名前を呼ばれながら与えられるキスが
どんどん頭を酩酊状態へといざなっていく。


「もう…大人ぶった対応しなくていいよな。」

「へ?」


どちらのかも分からない唾液でしっとりと
ぬれた唇が発した言葉に俺は首を傾げる。


「昨日から嫉妬でおかしくなりそうだった。
 あいつにはお前を攫われて、目の前で覆いかぶさられて
 俺の知らないお前を知ってて…あいつの手が…お前の肌に触れてた。」


そういうと、服の中にウサギさんの冷たい手が忍び込んでくる。


「ちょ、ウサギさんっ…ぁ…」

「孝浩がいつ来るかわからなかったから我慢していたが
 もう…いいだろ?」


珍しく余裕のなさそうなウサギさんの顔に
心臓が悲鳴をあげる。そんな顔…ずるい…

拒めない。だって…


「俺はお前のたった1つの大事、なんだろ?」

「…思い出してんじゃねぇよ。」


バカみたいに恥ずかしいことをたくさん言ったと思う。
でもあの中に嘘偽りは何一つない。


「美咲…嬉しい。」

「…バカウサギ。」


「でも、妄想を形にするのも考え物だな。」

「ん?どういうこと?」

「今回、あいつは俺の小説に似せてお前を
 誘拐したりしたんだからな。」

「そ、そうだよ!!元はといえばウサギさんが悪い!」


そうだ。なんで今まで思い当たらなかった俺!
ウサギさんがあんな本出してなければ俺は少なくとも
誘拐とかはされなかったんじゃないのか!?


「まぁ、今後は実体験だけを書くことにする。」

「やめれ!書くのやめれ!」

「それは無理だな。お前、純愛ロマンチカの発行部数知ってるか?
 なんとBL小説では脅威の…」

「いい!聞きたくねぇー!!」


耳を塞いで、あー!!と叫んでみる。
そんな俺を見て、ウサギさんが今度は余裕たっぷりに微笑んでいる。



「美咲…」

「…んだよ。」

「好き。」

「…」

「好き。」

「…」

「愛してる。」


「…俺だって…」

「俺だって?」

「す、す、す…」




ダダダダダ!!!!
バタンッ!!




「美咲君!!!!大丈夫!?」

「チビたん元気ー?」


ドアのところには血相変えた相川さんとどこかお気楽な井坂さん。

そしてその目にはソファーに押し倒されて
服に手を突っ込まれて、頬を染め、目を潤ませている俺。

そして今にもそんな俺を食べます状態のウサギさん。






「あははー!なんだ元気そうだな!」

「無事自分を取り返してくれた先生へのご褒美ね!美咲君!」






兄チャン…

俺、この場から逃げられるなら
この際、誘拐でもなんでもされようと思います。




*END*
110728 脱稿


【後書き】

初連載ウサミサ。いかがだったでしょーか。
短編のつもりが思わず長くなってしまい、
つらつらと連載になってしまいました(笑)

捏造キャラ・秋彦が出ておりますが、
要は愛ロマの秋彦ストーカー事件に悶えたという話。

実際ウサギさんはこんな余裕たっぷりに
相手を諭したりできないだろうけどね!

美咲のためなら大暴走だもんね!

そして何気に孝浩と美咲を取り合うウサギさんって
いいよね、って思った今日この頃。うん、次書こう。




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