目は口ほどにものを言う ※TMSS!!に提出させていただきました!珍しく早く仕事が終わり、 何気なくTVの電源をつけた俺の目に映ったのは いろんなことを実験して その効果や信憑性を立証する番組。 特に興味をひかれなかったけど見たい番組がある訳でもなく そのままで夕食を作り始めたのだが… 『では続いての実験はこちら! 【人は好きな人を見ると瞳孔が開くというのは本当か】』 しばらくして、TVからそんな声が聞こえた。 丁度、作り終えた夕食を持って TVの前に陣取り、冷えたビールのタブを開ける。 「嘘くせぇな。」 はじめはそう思っていた。 けれど、その実験台になった芸能人は セクシー衣装のグラビアアイドルを見ても 特に瞳孔に変化はなかったが、 妻が登場した瞬間、その瞳孔は大きく開いた。 ちなみにこの芸能人は愛妻家で有名だ。 そして何人かの芸能人が実験され、 それなりの結果が出たところで専門家とやらの話が始まる。 その専門家によると、好きな人を前にしたら よりその姿をたくさん自分の目で見ようと 瞳孔が大きくなるのだそうだ。 「へぇ…」 始めは疑っていたけど、科学的根拠があるなら それなりに真実味はあるんじゃないだろうか。 それなら試すほかない。 手元のビールをぐいっと飲んで、 部屋の時計で時間を確認する。 今日の仕事が終わった後に、 作家の家に寄ってから帰ると言っていたし、 そろそろ戻ってきてもいい時間帯だ。 TVの電源を落とすと、 ちょうど隣の部屋の玄関の開く音がした。 机の上に置いてあった携帯でさっそく 隣の住人を呼び出す。 何コールか鳴った後、そいつは明らかに渋々声で電話に出た。 『…はい。』 「今すぐうちに来い。」 『は?俺今帰ってきたばっかりなんですけど。』 「丁度いいだろ。そのまま来い。」 『意味が分かりません。』 「上司命令。以上。」 そこまで言って俺は一方的に電話を切る。 俺の上司命令=逆らえばどうなるかを 隣人はよく分かっているはずだから。 10分後。 鳴り響いたチャイムに呼ばれ、玄関のドアを開けば 案の定ふてくされた顔をした隣人・小野寺が立っていた。 顔が見えた瞬間、 俺はその翠玉色の瞳をじっと見つめる。 その宝石の中央にある瞳孔ははみ出さんばかりに 大きく開いて俺を見ていた。 「やっぱお前、俺が好きなんだな。」 「はぁ!?何がどうなってそうなるんですか!」 「目は口ほどにものを言う、って言うだろ。」 上機嫌な俺に、小野寺は訳が分からないと唇を尖らせた。 「大体、呼び出しの理由はなんですか!」 「ん、もう確認した。」 「はい?」 ふてくされた顔が だんだん俺を怪しむような表情に変化してきた。 「高野さん…どっかに頭でもぶつけたんですか?」 「いや、テレビ見てただけ。って訳で、中に入れ。」 「え…いや、ちょっ、何するんですか!!」 「今からちゃんとした確認作業するから。」 「だから何の確認ですかって…高野さんっ!!」 *** その後、たっぷりと確認作業を行った結果、 ベッドに沈んだ小野寺に、確認作業の正体を教えてやった。 すると、その翠玉の瞳が俺をじっと見つめる。 そして… 「高野さんだって、俺の事大好きじゃないですか…」 そう恥ずかしそうに呟いた。 「だからいつもそう言ってるだろ。 俺はお前が好きだって。何、信じてなかった訳?」 「…科学的根拠に基づいて、 ちょっとは信じてあげても…いいです。」 そう言った小野寺の瞳に映っている俺は きっとこいつ以上に瞳孔が開いているんだろうな、と 自分では気づいてないだろう、 うっすらとほほ笑んでいる小野寺を見つめながら思った。 愛は科学で証明なんて出来ないけど、 たまにはこういう証明も悪くない。 *END* 120122 更新 |