2011xmas_1 | ナノ


 恋人当てプレゼントクイズ[1]



2011年12月25日、都内某所。
とあるホテルのホール。


クリスマス仕様に飾り立てられた
その場所に複数の男性が集められていた。


大学生の雪名皇。

M大の教授である宮城庸、
大学病院の小児科研修医・草間野分。

少女漫画エメラルドの編集長・高野政宗。副編の羽鳥芳雪。
少年漫画ジャプンの編集長・桐嶋禅。

小説家の宇佐見秋彦。


計7名の男性がホテルのホールに
集められたのは、夏の某日を思い起こさせた。



「高野さん、これは一体どういうことでしょう。」

「さぁな。けどコレを送られて来たら無視も出来ないだろ。」

「やっぱお前らもか。」


芳雪に尋ねられた政宗の手元にはクリスマス仕様の手紙が1通。
禅がそれを見て困ったように眉を下げる。

ちなみにここにいる全員が同じ手紙を持っていた。


その内容は…

『貴方の大事な人をお預かりしています。
 本日、夜9時○○ホテルの最上階ホールへお越しください。

 ミスターI』



「普通なら警察に通報ものですよね。
 木佐さんの携帯鳴らしても電源入ってませんし…」

「けどなぁ…このミスターIってあれだろ。
 8月に俺らを呼びつけたアイツと同じ匂いがする。」


皇の少し戸惑う様な声に、庸が答える。


「そうですね。だから危害を加えられてるとかじゃないと
 思うんですが…それでも心配です。ヒロさん大丈夫かなぁ…」

「恐らく犯人は井坂さんだ。
 まぁ大丈夫だろう。
 ネタにしたいだけだと思うから。」


不安そうな野分に、自身も恋人の身を案じつつ秋彦が呟いた。


そこへ、会場のドアが勢いよく開かれる。
そして現れたのはサンタクロースの恰好をした
丸川書店専務取締役の井坂龍一郎と、
いつもと変わらないスーツ姿の朝比奈薫だった。



「やぁやぁ、お集まりだね諸君。」


龍一郎の登場に全員がげんなりとした顔になる。
やっぱりお前か、そんな空気が流れまくっていた。


「あれー、みんな表情が暗いぞー?」

「あんたのせいですよ。」


その呑気な発言に全員を代表して秋彦がそういうと、
龍一郎はにんまりと笑った。


「いいのかー?そんなこと言って。
 俺はお前たちに素敵なプレゼントを用意してるってのに。」


「プレゼントって…まさか。」

「嫌な予感がする。」


政宗と芳雪がそう呟いた瞬間、
ホールに7個の大きな箱が運び込まれてきた。

そう、それはちょうど箱1つに人間が入れそうなサイズ。



「まさかあんた、俺らの恋人そこに詰め込んでくださった訳?」


庸が引き攣った顔で龍一郎に問いかけると
龍一郎は楽しそうにこくんこくんと頷いた。


その楽しそうな様子に、全員が呆気にとられる。


「井坂さん、それって俗にいう拉致監禁じゃ…」


禅の至極まっとうな問いかけに、
井坂は人差し指を立てて「ちっちっち」と左右に動かす。


「俺は前回の夏、レディーIが主催したあの集まりで
 みんなの愛情の深さに感動したんだ。
 だからこの聖夜にそれをもっと盛り上げてあげようと
 ちょっとしたイベントを用意しただけ。」


朝比奈、説明を。
龍一郎がそう言うと、隣に控えていた薫が
全員に一礼をして、手元のメモを読み上げ始めた。



「皆様、本日はお集まりいただきありがとうございます。

 今日は皆様の恋人同士の絆を試す
 『クリスマス恋人当てプレゼントクイズ』に
 参加していただきます。」


「「「「「「「はああ??」」」」」」」


薫の説明に、全員が声をそろえた。
しかし、そのリアクションを気にもせずに
薫は説明を続ける。



「ご覧のとおり、皆様の前にはそれぞれの
 恋人が入ったプレゼントBOXが用意されています。

 この中から見事恋人が入っているBOXを
 当てた方には、素晴らしい特典が待っております。

 なお、外した場合、今日のクリスマスデートは
 諦めていただきますのでご了承を。」


「いやいやおかしいだろ。」

「そうですよ!なんであんた達にクリスマス邪魔されなきゃ
 いけないんですか!」

「井坂さん、度が過ぎてますよ。」

「いたずらにもほどがあります。」

「ヒロさーん!ヒロさーん!」

「井坂さん、あんた美咲を箱詰めにするなんて
 いい度胸してますね。」


6人が一斉に文句を言い、龍一郎に詰め寄る。
しかし、1人だけ余裕の笑みを浮かべている人物がいた。



「桐嶋さんはなんとも思わないんですか?」


芳雪がそれを不思議に思って、1人残っていた禅に尋ねる。
すると禅はふっと笑って答えた。


「いいんじゃねぇの?要は大事な恋人を当てれば
 いいだけなんだろ。それで特典もらえるならいいじゃん。

 それともお前ら、自分の恋人当てる自信ねぇの?」


その言葉に一瞬、ホール内が静まった。
そして…


「「「「「「わからない訳ないだろ。」」」」」」


またしても綺麗にハモった声に、龍一郎は満足げに頷いた。


「じゃあ全員参加でOKだな。
 あ、ちなみに特典の内容を言っておいたほうが
 やる気がでていいだろ。」

「特典の内容は、それぞれ箱の中の皆様に
 ぴったりのカスタマイズをしたサンタ服の
 コスプレをして頂き、ホテルのスイートルームで
 素敵なクリスマスの夜を過ごしていただきます。」




再びホール内に静寂が訪れた。
しかしその静寂の中には、明らかに邪なオーラが渦巻いている。


「まぁ、せっかく我らが取締役が用意してくれた
 イベントだから楽しんだもん勝ちだよな。」

「ええ、早く箱からだしてやらないと可哀想ですし。」

「木佐さーん!すぐ出してあげますからね!」

「忍ちんのサンタコス…」

「まぁ、たまには井坂さんに付き合うのも悪くない。」

「ヒロさんのサンタさんかー。可愛いだろうなぁ。」

「アイツがサンタか。ひよに写メ撮っておいてやろう。」


そして、それぞれが勝手なことを口走る中、
『恋人当てプレゼントクイズ』は開始された。




「とは言ってもノーヒントで当てろとは
 言いませんよね?」


政宗が尋ねると、龍一郎はもちろんと頷いた。


「この箱の横から、片方だけ手が出てる。
 ビジュアル的なヒントはこれだ。」


そういうと、控えていた男たちが
7個のBOXをくるりと回転させる。

そこからは確かに7人分の手が出ていた。


「まぁ、手だけでわかる奴が何人かいると思うけどな。
 もう1つのヒントは、『自分の恋人をどう思ってるか』を
 あらかじめ中の人間に聞いて、それを貼ってある。」


龍一郎が箱の手が出ている少し上を指さす。
そこには確かに何か文字が書かれていた。


「この2つをヒントに見事恋人を探し出してくれたまえ。
 あと順番に行ったら最後のほうが有利だから、
 全員で一斉に選んでもらうからな。

 そんじゃあ、プレゼント選びスタート!」


龍一郎のその掛け声で全員が箱の周りに集まって観察を始めた。



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