あの時触れられなかった ※冒頭秋→孝、後半ウサミサ触れたら…壊してしまいそうだった。 「今日もさー、朝から美咲がさー。」 孝浩が嬉しそうに顔をほころばせて また弟の話をしている。 「俺の口元にごはんつぶがついてたの とってくれてさ。それをぱくっと食べる 姿がもぉ犯罪的に可愛くて!」 「それは普通、 恋人がする行動じゃないのか?」 まだ見ぬ『美咲』とやらの行動に 内心で苛立ちを覚える。 いくら弟だからといって 孝浩に対してやすやすと そういう行動をとって欲しくない。 「いいんだよぅ。美咲なら 何をしても許されるっ!」 じゃあ俺なら…? そう聞ければどんなに楽だろう。 『ウサギなら何をしても許される』 孝浩はそう言ってくれるだろうか? 否…それはありえない。 俺は…愛を持ってお前に触れることさえ 許されないのだから。 「今日もさ、帰ったら一緒に夕飯 作る約束してるんだー。 美咲の大好きなオムライス。」 「…そうか。」 そういいながら、嬉しそうに 目の前のケーキを頬張る孝浩。 その白いクリームが 孝浩の口元に少しついてしまう。 わざとやっているのか… そう疑いたくなるようなタイミング。 手を…伸ばしてしまう。 あと数センチ。 その愛しい顔に俺の指が触れるまで… 「孝浩。ここクリームついてる。」 「え?うそ?」 宙で円を描くようにして クリームがついている場所を指し示してやると 孝浩は慌てて顔を拭う。 クリームは白いおしぼりに 吸い取られていった。 出来ない。 それが許されるのは 弟とまだその存在すらない 未来の恋人だけだから。 *** 「でさー、兄チャンてば すぐに米粒とか口の周りに つけるんだよな。」 美咲がおかしそうに笑いながら 目の前で食事を進めていく。 あの頃、嫉妬していた存在が 今では自分にとって かけがえのないものになったのだから 世の中は本当にわからないものだ。 「ウサギさんてば聞いてる?」 「あぁ、聞いてるよ。」 少し物思いにふけっていると 話を聞いていないと思ったのか 美咲は頬を膨らませる。 「それでお前がとってやって ぱくっと食べたんだろ?」 「は!?なにそれ! 兄チャンそんな話したの!?」 「あぁ。それはもう頬が落ちんばかりの 兄馬鹿面で語っていたな。」 「もぉ!!兄チャンのバカ! なんでそういう話するかなー。」 「ははは。孝浩は昔から お前の話ばっかりだったからな。」 笑っている俺を見て 美咲の頬はますます膨らんでいく。 そんな顔すら可愛いと思うのだから、 孝浩の時より今のほうが よほど重症なのだろう。 甘くて切ない病。 ふとあることを思い至り、 手元にある白米をじっと眺める。 「ウサギさん?どうしたの?」 黙り込んで米を見つめる俺を 美咲が心配そうに見つめる。 その美咲の視線に晒されたまま 俺はおもむろに米粒を自分の 口元につけてみる。 そして今度は美咲のほうを じっと見つめてみる。 「…テンテー。 それは一体何のつもりですか。」 俺のいわんとしていることを 理解した美咲はげんなりとした顔で ためいきをつく。 「何、と言われても… そうだな、再現VTRというやつだ。」 「VTR関係ねぇだろ!!」 「美咲。」 「っんだよ!」 「とって?」 「絶対に嫌だね!何で俺が わざわざ自分で米粒つけた おっさんのをとらなきゃいけないんだ。」 ぷりぷりとした様子で あらん限りの罵詈雑言を吐き散らす。 予想はしていたが、ムカつく。 「孝浩のはとれて 俺のはとれないっていうのか?」 「それは昔のこと!! 子供だったからに決まってんだろ!」 「そうか…」 一向にほぐれない態度の美咲を見て、 俺は戦法を変えることにした。 箸を置き、 しょんぼりと下を向く。 「そうだよな。30近い 男の相手がつけてる米粒なんて とりたくないよな。」 「え!?…いや、そういうんじゃなくて…」 押してだめなら引いてみろ。 俺が弱気な態度をとると、 予想通り、美咲はばつが悪そうに 落ち着きをなくす。 「いいんだ。美咲に世話をやいて貰う 孝浩がうらやましくて こんなことをしたが…大人げないよな。」 「…〜っ!ああ、もう!!」 さらに1歩引いてみせると 美咲はおもむろに椅子から立ち上がった。 てっきり、俺の態度に反省して とってくれるのだと思っていたのに このまま怒って 部屋にでもこもるつもりか…? せっかく原稿を終えて たっぷり美咲補給ができる夜なのに それはまずい。 そうはさせまいと、 美咲の腕を掴もうと顔をあげると 驚いたことに美咲は 俺の隣に立っていた。 「みさ、き…?」 俺がぽかんと美咲を見つめていると 不意にその顔が近づいてきて 口の端にある米粒を 勢いよく口で奪い取っていった。 「し、しょーもねー事で へこんでんじゃねぇよバカウサギ! 兄チャンや他の人には… こんな世話焼いてないんだからな!!」 そう叫んでいる美咲は、 45度くらいは熱がありそうな 真っ赤な顔をしている。 「わかったらさっさと食え! あと飯で遊ぶな!」 それだけ言い放つと、また ドカドカ歩いて自分の椅子に座りなおし 目の前の残った食事を掻き込んでいく。 まったく…お前という奴は… いつも想像以上に俺を喜ばせる。 美咲の唇が触れた部分に 手を当ててその感触に浸っていると またギャンギャンわめきだした。 「美咲。」 「なんだよ!さっさと食えって…」 「ありがとう、嬉しい。」 「っ…」 赤い顔をさらに赤くさせる美咲は 多分、世界で一番可愛い。 そして、そんな可愛い美咲の顔に ひっつく小さい白を発見する。 その存在に気づいた俺は 目を細めて美咲を見つめる。 「なぁ、美咲。」 「うるせえ!」 「食べ物で遊ぶなといったのは お前だよな。」 「そうだよ!ウサギさん バカなことばっかりして…」 ぶつくさと文句を言い始めた 美咲はいまだ自分の顔についている 存在に気づいていない。 俺は椅子から立ち上がって テーブルの向こう側にいる 美咲の口元に舌をそっと這わせる。 「っぎゃああ!! エロウサギ、てめぇなにしやがる!」 俺の行動に色気のない奇声を発する 美咲に舌をぺろっと出して見せてやる。 「!!??」 「お前も食べ物で遊んでたぞ?」 「お、お、俺はわざとじゃねぇ!!」 パニックを起こして 卒倒寸前のその姿を見ていると なんだかとても幸せな気分になった。 あの時。 孝浩の頬に触れられなかった指で これ以上ないくらい染まりあがった美咲の頬を撫でる。 俺は今なら…愛する者に こうして触れてもいいんだと 確認するように。 「美咲、好きだよ。」 「っ…知るか!バカウサギ!」 *おまけ* また騙された。 あんな顔するから… 俺までなんか胸が痛くなって… 気づいたら…ウサギさんの口元に… 「…て、なんで俺普通に 指とかでとらねぇんだよ!?」 今更に自分のした行動が 宇佐美秋彦大先生を大いに 喜ばせ、つけあがらせたことに 今頃気づいた俺、高橋美咲。 それは初夏の日のことだった。 *END* 110701 脱稿 【後書き】 初ウサミサー! わぁいヽ(ω・ヽ)(ノ・ω)ノ わぁい♪ でも実際の美咲はこんなこと絶対しないw 鈴木美咲ならやるだろうがw 間違って美咲がウサギさんのほっぺ 噛んじゃえばいいと思った昼下がり← [戻る] |