1111 | ナノ


 1111【ポッキー&プリッツの日】



「美咲。」

「なに?ウサギさん。」



買い物から帰ってきた俺に、
この家の大家であり俺の恋人でもある
ウサギさんがこんな話を振ってきた。



「今日は何の日か知っているか?」

「今日?あぁ、ポ○キー&プリ○ツの日でしょ?
 帰りに大々的にスーパーで売ってたし。」

「その通り。」

「それがどうかしたの?」


ウサギさんはポ○キーなんて甘いものに興味はないだろうし、
プリ○ツだってさほど好きなわけではないと思う。

なんだってこんな話題を振ってくるのか…



「せっかくのポ○キー&プリ○ツの日なんだ。
 楽しんだほうがいいと思わないか?」

「はぁ?楽しむって?」


またわけのわからないことを言い始めたウサギさんを
ジト目で見ていると、

ウサギさんはおもむろに俺が買ってきた
買い物袋の中を漁り始めた。



「なにしてんの?」

「ふふ、やはりな。」


満足げに笑ってウサギさんが取り出したのは
俺が買ってきたポ○キーいちご味だった。


「な、なんだよ。買ってきちゃ悪いのかよ。」


そういえばしばらくポ○キーなんて食べてないなって
思って買ってきただけで、断じて11月11日だから
買ってきたわけではないのだ。

例え今日が11月12日でも俺買ったと思うし、うん。



「いや、むしろ褒めてやる。」

俺が無駄に心の中で言い訳していると
ウサギさんの大きな手が俺の頭を撫でまわした。


「ちょ、やめろよオッサン!」

「いい子いい子。」

「やめろってはずい!!」


ウサギさんの意図がまったくわからず、
撫でまわしてくる手を半ば強引に払った。



「美咲。アレをやるぞ。」


しかし、ふり払われたことを怒るでもなく
ウサギさんはなぜか満面の笑みで俺を見ている。


「アレ?」

「そう、アレ。」



その言葉に俺は脳をフル回転させる。



1.今日はポ○キー&プリ○ツの日



2.ウサギさんがそれを俺に振ってきた



3.ポ○キーを買って戻った事を喜んでいる



4.アレをやると言い出した。



以上、4つの事柄から導き出される真実はたった1つ!





「ポ○キーげ「やらねぇよ!!!!」


寸でのところで、思考がまとまって
ウサギさんの言葉を遮ることに成功した。


「やらないはずないだろう。
 照れ屋なお前はわざわざポ○キーを買ってきて
 俺の前でさりげなく食べ始めて、
 そのうち『ウサギさん…そっちから…俺の食べて』と…」

「妄想の俺を現実に引っ張り出すな!
 いちいち言い方がヒワイなんだよ!」

「卑猥の漢字すらわからないくせに偉そうだな。」

「そ、そんなことはどうでもいいだろ!
 だいたい俺は普通に食うために買ってきたの!」


ぜぇぜぇと息を切らせながら抗議すると、
ウサギさんは不意に真面目な顔になる。


「なん、だよ…」

「美咲…知らないようだから教えてやる。」


その表情はまるで高校時代に
家庭教師をしてくれてた時みたいに真面目で

不覚にもちょと胸がきゅっとなる。


「ポ○キーゲームとは、まさにお前のために
 あるようなものなんだぞ。」

「い、意味わかんねぇし。」

「いいか、そもそもポ○キーゲームというものが
 生まれたのは、ある引っ込み思案な女の子が
 どうしても彼にキスをしたい。けれど言い出せない。

 そんなときに食べていたポ○キーを見て思ったんだ。

 これを2人で食べれば、最後には
 2人の唇は触れ合うことになるんじゃないかと。

 だから女の子は勇気をもって、ポ○キーを
 くわえて男のほうに差しだし、見事ハッピーエンド。

 これは積極的になれない受け側のために
 うまれたゲームなんだ。」


力説するウサギさんのよどみない説明にのまれる。

そっか…普段俺からキスできないから
ウサギさん俺の為に言い出してくれたんだ。

俺からキスできるように…

なんて、なんて…



「なんてアンタはアホなんだ!!
 するか!誰がするか!
 大体俺自分からキスしたいなんて思ってねぇし!」

「ちっ。」

「ちっ、じゃねえし!」


舌打ちをしてるウサギさんを睨みつけて
食材の片づけをはじめる。


ウサギさんは諦めたのか、
ポ○キーだけ持ってソファーに座った。



「美咲。」

「だからしねぇって…」

「珈琲いれて。」


「へ?あ…うん。」


てっきりまだポ○キーゲームを強要するのかと
思ってたから拍子抜けしながらも
珈琲を注いで持っていく。


しかし…


「テンテー、なにをやっているんですか。」

「ん。」

「ん、じゃねぇよ。」


珈琲を理由に俺を呼びつけたウサギさんは
しっかりとポ○キーをくわえている。


「んー。」

「しねぇっていってんだろ。」

「んー。」

「だからしねぇって…」

「んー…ぁ。」


瞬間、ウサギさんの口から
ポ○キーが落ちそうになって…





どこまでがウサギさんの計算だったのかは
わからない。



けれど…

俺はいつだってこの抜け目ないテンテー様の
掌で転がされているのだ、と



唇が触れ合った瞬間、俺は痛感するのだった。



*END*
111111 更新

【後書き】

1111なので慌ててポッキープリッツネタを
書きましたwイメージ的にウサミサだったので
ポッキーゲームを強要するウサギさんでw

そして最後にはウサギさんの掌で踊る
可愛い美咲ちんなのでしたw

※追記

ちなみに途中に書いてあるポッキーゲームの始まりの話は
完全に捏造ですのであしからずw



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