君からのキス ※純情エゴイスト:野分×弘樹言葉なんて1つもなくていい。 あなたからの1度のキスが欲しい。 そう言ったら、照れ屋のあなたから キスの代わりに顔面枕をいただきました。 「痛いですヒロさん。」 「お前がバカなこと言うからだろ! へんっ!自業自得だ!」 なぜか偉そうに胸を張るヒロさん。 顔は痛いけど、そんな姿を見ると可愛くて 痛さも消えてしまいます。 「バカなことじゃないです。 あのね、ヒロさん。 俺はヒロさんとこうしているだけで幸せです。でも…」 久しぶりに2人の在宅時間が重なった夜。 一緒に夕食を食べて、変わりばんこにお風呂に入って 同じベッドで、眠る前の一時を共有できている。 確かにそれだけで幸せなんです。 でも、久しぶりにヒロさんとゆっくり過ごしたら 少しだけ欲が出ちゃいました。 「だったら、それで満足してやがれ! 俺はもう眠いんだから、寝るからな!邪魔すんな!」 「…はい。じゃあおやすみなさい。」 ヒロさんは照れ屋だから、俺の事が嫌いで キスをしてくれない訳じゃないってことはわかってます。 それでも、幸せを甘受したこの体は 次、またその次と、あなたのくれる幸せが欲しくなる。 背中を向けてしまったヒロさん。 ねぇ、その体を抱きしめてもいいですか? 少しだけ見えた首筋に…キスをしてもいいですか? 俺は…どこまで望むことを許されますか? 尋ねることなんて出来ずに、自分の甘ったれた思考を 打ち切ってそっとテーブルライトの明かりを落とせば、 夜の闇とわずかな月光が俺とヒロさんを包んで、 なんだかこの世界に2人だけになった気がする。 ヒロさんと2人だけ。 それは俺にとって素晴らしい世界だろう。 誰の目を気にすることもなく、 ただ2人、寄り添って生きていけたら… その時は、ヒロさんからのキスが たくさんたくさんもらえるかな? ううん、たくさんじゃなくてもいい。 1回だけでもいい。 「野分…寝たのか。」 話せばそれこそバカなことを、と言われそうな 妄想に浸っていた俺は、少しだけその世界が離れがたくて ヒロさんの問いかけに応えなかった。 あなたと2人だけの世界。 瞳を開けた世界で叶わぬ夢なら… どうかしばらくこのまま。 そう思っていると、不意に唇が温かくなる。 俺のよく知っている感触。 甘くて…溶けてしまいそうなあなたの唇。 思わず目を開くと、思いきり目を閉じて 眉間にシワを寄せたままのヒロさんの顔が見えた。 その表情は何故か必死で、暗闇でもわかるほど 赤く赤く色づいていて… あぁ、このまま時が止まってしまえばいいのに。 「っ…て、おま!?何目開けてんだよ!?」 「えっと、すみません。」 「謝って済む問題か!!ぼけ!!」 俺が願っても時が止まるはずはなく。 ヒロさんは俺が起きていることに気づいて さらに眉間のシワを増やして、暴れ始めました。 「くそっ!バカ野郎!野分のバカ野郎!」 「い、痛いです。」 さっきも顔に当たった枕を掴みあげて、 俗にいう袋叩き状態になっている俺は あまりの痛さに、仕方なくヒロさんの腕を掴みます。 「寝たふりなんてしやがって! 卑怯なんだよてめぇは!」 「別に寝たふりをしたわけではないんですが…」 怒り狂うヒロさんを嘘で宥めるのは難しいので 正直にさっき考えてたことを伝えました。 はじめは『はぁ?』と言いながら聞いていたヒロさんは 俺が話し終えるころにはすっかり俯いてしまいました。 「あの…ヒロさん?怒ってますか? 変な妄想してて返事しなかったこと…」 この人に嫌われるのだけは嫌だ。 何度か訪れた過去の別れの危機を思い出して 少し背筋が寒くなる。 「…の…ない…」 「え?」 ヒロさんの呟く声が聞き取れなくて、首をかしげていると ヒロさんは顔を真っ赤にして俺を見つめた。 「そんなの妄想する必要ないっつってんだ!!」 「ヒロさん?」 「今、お前と俺はこの部屋で2人きりだ。 この部屋っていう世界の中でな。」 「あぁ、はい。確かに。」 言われてみればそうなのかも、そう思って俺は頷いた。 「そして、ベッドで隣同士で眠ってる。」 「そうですね。」 「そして誰にも見られてない。」 「見られてたらヒロさん一緒になんて寝てくれませんよね。」 「うるせぇ!」 口をはさんだら怒られました。 なので、大人しく続きを聞きます。 「で、その…さっき俺から…キ、キスもしたわけだし?」 「はい、嬉しかったです!」 「だからうるせぇって言ってんだ!」 また怒られてしまいました。 でも、さっきのキスを思い出すと嬉しくて笑みがこぼれる。 初めてではないけれど、まだきっと 指で数えることができるくらいのヒロさんからのキス。 「だからっ…その、お前の妄想なんて全部叶ってんじゃん。」 「あ…」 その言葉にはっとする。 そう言われれば、そうかもしれない。 2人だけの世界で寄り添って、 ヒロさんからのキスをもらう。 それは妄想なんかじゃなくて、たった今 現実で起こった事だった。 「ほんとだ!ヒロさん!すごいです! 現実で叶っちゃいました!」 俺が大げさに騒ぐと、近所迷惑だと言って 3度目の枕攻撃をされました。 でも、それでも嬉しくて。 さっきの躊躇いを振り切って、ヒロさんを思いきり抱きしめた。 「なにしてんだよ…」 「ヒロさんを抱きしめてます。」 「んなもん見りゃわかる。 なんでそんなことをしてるのかって聞いてんだ。」 口調はぶっきらぼう。でもわかる。 少し震えた声は照れてる証拠。 「ヒロさんが好きだから。」 「っ…答えになってねぇよバカ野分!」 「ヒロさん、夜だからお静かに。」 そういって、今度は自分からキスをする。 ヒロさんの体は一瞬強張って、 それからそっと、首に腕が回された。 *END* 110926 更新 【後書き】 セカコイアニメ2期祝い企画第3弾は エゴイスト野分×弘樹のお話でしたー。 エゴもがっつり書くのは初書きですねー。 野分のキャラが楽しくてw あの独特の喋り方が難しいんですけど なんとか書けました! 上條さんのどツンデレぶりが表現できてたら 嬉しいなぁ← そして野分の妄想癖…w ウサギさんも職業上、妄想激しいけど 野分が妄想キングだと思う。うん。 そして明日は、職業妄想病(こら)の 我らがウサギさんと 永遠のちびたん、美咲君のお話です♪ [戻る] |