▼ FUST22
時計台の下にはナミ、ウソップ、チョッパーそしてビビがいて、時計台の上にはゾロとサンジがいた。
「みんなっ!!」
「ああっ、ちょうどよかったわセオ!大砲は時計台の中にあるの!」
「さっき海軍に聞いた!」
「だからあんた、鳥になってビビを上に連れてってちょうだい!?」
「おねがいセオさん!階段を上っていたら時間がない……!!」
「わかった!」
セオは変身して、ビビの肩に乗った。
「ゲーロゲロゲロゲロゲロゲロ!!」
「オホホホホホホホ!!」
突然、広場に奇妙な笑い声が響いた。ガコン、と、時計台の文字盤が扉のように開く。そこにはナンバーズ−−−Mr.7とミス・ファーザーズデイのコンビがいる。
「なにあれ!!」
「Mr.7!?」
「ビイビイ!!」
「セオが”驚いてないでさっさと行くぞ”!って!」
「おねがいします、セオさん!できるだけ壁沿いに、見つからないように……!」
セオの鉤爪はビビの両腕をがっちりとつかんだ。そして2.3度羽ばたくと、勢い良く上昇した。壁を這うように飛び、サンジのいる場所を超え、もうすぐゾロのいる高さを通りかかる−−−もう少しで大砲の前−−−しかし、
「「ん?」」
下を覗き込んでしまったMr.7と、ミス・ファーザーズデイ。
「オホホ!?ミス・ウェ〜〜ンズデイ!!」
「ゲロゲロ!あたし知ってんの!!アイツ我が社の裏切り者よ!」
「うそ……。」
「気付かれたっ!!」
「ちょっと待てよ!この距離で狙い撃ちでもされたら!!」
2つの銃口が、ビビとセオに向いた。
「あいつら”狙撃手ペア”よ!!」
「ピィーーッ!!」
高速で飛び上がっているセオには方向転換も出来なければ、撃たれた時に避けることもできない。とにかく上がるのみだ、こんな時に撃たれてしまったら−−−
「”レディ”!」
「”スマッシュ”!」
発砲された弾は、まっすぐビビとセオを狙って落ちてくる。しかしセオは避けることなく、その弾に突っ込むように上がっていく。
「”避けられない”って言ってるぞォーーー!!」
「そんなっ、セオさん!!」
「……ッ!!」
ゾロが飛び出してきた。彼は横を通りかかっていたビビたちに体当たりをする。
「Mr.ブシドっ……!」
そのおかげでセオの進む軌道が僅かにずれる。しかしその所為でゾロは流れ弾に当たり、塔から落ちていく。
「ピィ!!」
「なんて言ったの!?」
まだ到着していないのに、セオはいきなり変身を解いた。
「セオさっ……!?」
「投げとばすよビビ、奴らの視界から外れるんだ。」
「っうん!!!」
セオはビビを思い切り蹴り飛ばす。ビビは落ちることなく飛び続け、セオは反対に勢い良く下降を始めた。
「ゲロゲロ逃げても、」
「ムダオホホ。」
ドドッ!ビビを狙った砲弾が、セオに向かって飛んでくる。
「オホ!?」
「誰!!?」
「わたしです。」
自分が避ける手段がなかった。そう思っている間に銃弾はセオの腹部に命中。
「っあああ!!!」
先ほどMr.2デイ・オフにやられたのも合わせて、セオの腹はもう限界だった。そしてそのまま、体はゆっくりと落ちていく。変身する力が残っていない。
「ミス・ウェンズデイは!?」
「どうなったスンポーだ!?」
飛ばされたビビは、まっすぐ大砲に向かって落ちる。
あと3秒。
「ウゴッ!ゲホ!……ハァ!!」
「何だ、生きてたのか。−−−セオちゃあああん!!!」
ゾロとセオが揃って落ちてくる。サンジはセオだけを大きく両腕を広げて受け止めた。
「大丈夫!?怪我はないかいスウィートエンジェル!?」
「砲撃……ビビは!?」
「ビビが顔を出さないの!」
ナミとウソップも上を見つめている。時計の針はすでに4時30分を過ぎている。何も起きないということは、砲撃は中止されたのだろうか。
「大変みんな!!」
「ビビ!!」
頭からビビが顔を出す。緊迫した表情は変わっていない。
「『砲弾』が時限式なの!!このままだと爆発しちゃう!!」
「な……。」
「……!!!」
「何だとォ〜〜〜!!??」
「クソ!なんてこった!!『砲撃』を止めたのに、砲弾が時限式!?」
「直径5kmの破壊力がありゃあ……結局広場も町も助からねェぞ!!」
もう助ける方法はないのかと絶望に打ちひしがれている、と、一瞬、何かが太陽を遮り通り過ぎた。
「見たか、今の……。」
ウソップがつぶやく。
「鳥の野郎だ……。」
鳥−−−ペルだ。アラバスタの護衛兵である。彼は時限式砲弾を掴み、空高くのぼっていった。何をしようとするのかは、すぐわかる。自分を犠牲にアラバスタを砲撃から守ろうとしているのだ。−−−
ドオオオン!!
上空で、ついに砲弾が爆発した。空一面がカッと明るくなる。背の高い建物は崩れ、爆風で窓ガラスが割れた。