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▼ FUST19

「……今日は天気がいいね。残念だけど、太陽の光が強いほど僕は強くなるんだ。」
「植物か。」
「違うよ。」

 デイ・オフは両手を上げて手のひらを太陽にかざした。

「僕はね、強くて綺麗な人が大好きなんだ。だからボン・クレーも君も大好きだよ。でも倒さなきゃいけないなんて残念だ。」
「どういう意味。」

 ボン・クレーには失礼だが、彼と一緒くたにされるとは聞き捨てならない。あれを綺麗といい、それと一緒にされるということはどういう意味だ。

「もー死んでも文句言わないでよ!せーりゃああああ!!」

 ルイは倭刀を大きく振りかぶって正面から向かった。とりあえず一発目は相手の力量を測るために単純にいく。しかし−−−

「『ブライト・ブラインド』!!」
「っああ!!」

 いきなりルイを貫いたまばゆい光。それに目をやられ、反射で目をつぶって足を止めてしまった。その腹にデイ・オフの蹴りがめり込む。みぞおちに強力な足蹴を3発くらい、ルイは吐血しながら後退した。デイ・オフはすかさずルイの胸倉を掴み、彼女の額にガツンと頭突きをした。ルイがまだ狂っている目と頭への攻撃でぐるぐると目を回し、ふらりと座り込んだ。

「効いた……意外と野蛮な攻撃だった……。」
「美しい見た目で判断しないでね。これから君にいいものを見せてあげる。」
「……?」

 やっとめまいが収まってデイ・オフを見据える、そして、ルイは目を丸くした。

「……悪魔の実か!」

 胸の前でバッテンに交差されているデイ・オフの腕が、キラキラと光を反射している。その腕にはルイの顔が写っていて、ルイが動くとその腕に写っている自分も動いている、まるで鏡のようだった。

「鏡……!」
「そう、僕は”ミラミラの実”の鏡人間……。体中のどこでも鏡にできるし、それに映るものを真似ることができるんだよ。」
「……さっきの光はその腕か。」
「そう。だから太陽の光が強ければ、僕は強くなるんだ。どんなに強い戦士だって、強いフラッシュにはかなわない。その光は目を閉じていても瞼を通り、網膜を攻撃するんだ。」

 デイ・オフは鏡になった手のひらをルイに向けた。鏡面になった手のひらに映る太陽は、ルイの目を強くつついた。

「やっかいだなぁ。」
「この光にかなわないような弱者に、僕は興味がないんだけども。」
「ボン・クレーはかなったの?」
「どうだろうね。」
「……。甘く見ないでほしいの、光が強くても腕力でわたしに勝てるかどうかはわからない。」
「そうかな?」

 デイ・オフの体が、足元から鏡に変わっていく。服も完全に鏡と化し、全身が周辺を映し出す鏡になった。彼は足元に落ちている角材を拾い上げ、それも鏡に変えた。

「面白いものを見せてあげる。−−−『ミラクル・ミラージュ』!」
「……!!」

 足元から変化していくデイ・オフの体。それはルイもよく見慣れている自分の姿だ。茶色のブーツ、薄汚れた白のズボン、服も上着も、髪型も顔立ちもすべてルイ、そのものだ。

「どう?びっくりした?」
「……わたしだ……。」

 声もそっくりそのままルイのものだ、声帯も変化したのだろう。しかし鏡なだけあって、すべての配置は左右が逆になっている、前髪の分け目でわかった。

「ボンと同じく、僕も他人になれるんだ。そっくりなのは見た目だけじゃないよ?筋肉も同じだから、力の差はなく全く同じ。」
「面倒だなぁ……。」

 デイ・オフの手にあった角材は倭刀になっている。
 びっくりしたがそれで引いていられない。ルイは倭刀を構えて走った、同時に同じようにデイ・オフも走った。2本の倭刀が十字にぶつかる。ルイは手のひらにじんとくる痛みを自覚した。とんでもない腕力だとびっくりする。しかし同時に、それだけ自分の力は強いのだと喜びにもなる。

「もう一人の自分と戦っているようなものだ。」
「自分が敵……。」
「そう、絶対に勝てないし、負けることもない。相打ちになるか、永遠に戦い続ける。まあ、体力の差で今までは僕が勝ち残っていたんだけれどね。」
「体力勝負なら勝ち目がある。」
「そうは言っても男女の差は大きいんじゃないかな?」
「男女……?」

 たとえ相手が男でもルイは関係ない。誰が相手でも戦いを挑まれたら打ちのめすまでだ。
 見た目と力が同じになっているとしても、作戦を考える頭は違うはず。ならば、そこが突破口になるはず。ルイは足を振り上げてデイ・オフの鳩尾にかかとをめり込ませた。先ほどの仕返しである。よろけたデイ・オフの肩を倭刀で斬る。いとも簡単に斬れた肩からは鮮血。利き手がどちらかわからないので、もう片方の肩も狙う、が。

「っ……ブラインド!!」

 カッ、と、まばゆい光。ルイはまた目をやられて攻撃を止めてしまう。間近で浴びた強い光に、目を焼かれるような激痛を覚えた。その隙をついてデイ・オフはルイの脇を斬りにかかる。ルイは身をそらせたが、思ったよりも近かったため、腹部を切られてしまった。

「効いたみたいだね……!目はいい、目はどんな強いやつでも守れない。直接攻撃が届かなくても、強い光を浴びせればひるませられるんだ。」
「……驕ってると自滅するぞ!!」



「……ルイちゃーん……居ませんかー……。」

 そんな時、突然、下から自分を呼ぶ声。

「ルイちゃーん……。」

 サンジの声だ。目をうっすら開け、建物の下を覗き込むと、通りを歩くサンジの姿が。彼の後ろにはマツゲに乗ったチョッパーと、包帯でぐるぐる巻きにされたウソップがいる。3人とも戦いは終わったようで、体はボロボロだった。

「ウソップがいる……ということは、ボン・クレーはウソップに敗れたの。」
「……ちっ……!」
「みんな……よかった……。」
「何がよかったんだ?まだ僕がいるじゃないか……。」
「……!お前の敵はわたしだろ!!!」
「そんなの関係ないさ、僕たちの任務は麦わらの一味の全滅だからね。」
「……っサンジさああん!!!」

 ルイは下唇をきりりと噛み、下に向かって叫んだ。

「ルイちゃああああん!!!」

 サンジは目をハートにさせて両手をブンブンと振った。

「へえ、あの男はサンジさん。」
「やめろっ……!!!」
「誰と話してるんだいー!」
「今の僕は”ルイちゃん”なんだ。いってくるよ。」
「やめろ!!」

 デイ・オフは両腕を胸の前でクロスさせた。ブラインドがくる、そう思ってルイは反射的に目を閉じ、手で目を押さえた。−−−が、デイ・オフの作戦勝ち。彼は目しか防御していないルイの腕を斬りつけた。

「っああああ!!」

 もろに攻撃を食らったルイは叫ぶ。

「ルイちゃん!!??どうしたの!敵がいるのかい!!」

 急に叫び声が聞こえたサンジは不安になる。デイ・オフはルイをつかみ上げて建物の奥に投げ飛ばした。サンジはルイの姿が見えなくなると、彼女に加勢しようと建物に登ろうとした。

「大丈夫!!!」

 しかしそれを静止させる声。

「大丈夫!今行くから!」
「……ルイちゃん……。」

 サンジはルイの声に言われて止まる。しかし建物の上ではデイ・オフが、ルイの声帯を使ってサンジを騙せたことに喜び笑っていた。足元で本物のルイが恨めしそうに歯ぎしり。

「もうちょっと強いと思っていたけど、残念だなあ。じゃあね。」

 デイ・オフはうずくまるルイの腹を、倭刀で貫いた。背中から、突き抜けた切っ先が顔をみせる。そして刀が抜かれると、ルイは立ち上がる力もでずに、四肢をぐったりとさせた。





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