倉庫 | ナノ


▼ FUST10

 船は街から少し離れた、人気の少ないところに停泊させた。

「メーーーーシーーーー屋〜〜〜っ!!!」

 船が泊まるなり、ちょっとまてと呼ぶ皆の声も聞かずにルフィは飛び出していった。我らが船長に食糧難が耐えられるはずなかった。

「……どうしよう、ナノハナの街は広いから、ルフィさんを探すとなると大変よ!」
「わたしが探してくるよ。」
「え、ルイさん?」
「わたしは脚に自信があるからすぐルフィ君に追いつけると思う、任せて。」
「でも……。」
「いいじゃない、ルイ、ルフィを頼んだわよ!でも海軍が居ても手を出さないでね、問題は起こしたくないから。」

 ナミに肩を叩かれると、ルイは胸を張って、頼まれた!と言った。そしてひらっと垣立を飛び越え、海に落ちる寸前に鷹に変身すると、船員達にばれないよう船を離れてから大空へと舞い上がった。
 空に上がればこっちのもの、ルフィを探すのは簡単だ。麦わら帽子で猛ダッシュをしている人なんてルフィしかいない。上空からルフィを見つけて彼が入った店を見極めると、路地裏に隠れてこっそり人間に戻った。そして店に入ろうと扉に手をかけたとき、
バンッ!

「ううっ……!」

 扉が勢い良く開き、ルイに直撃。彼女は大きくのけぞって仰向けに倒れる。上下が逆さになった視界の隅っこを、ルフィと彼を追いかける男と、それをまた追いかける上半身裸の男が通っていった。

「ええっルフィ君……。」

 よっこいせ、と立ち上がると、ルイは直ぐに走り出した。ルフィに追いつけると思っていたが、その後ろにいるもくもくと煙を出す男がなかなか追い越せない。しかも男は良く見ると海軍だ。ナミに海軍には手を出すなと言われているので、ルフィを助けに攻撃するわけにもいかない。

「逃がすかっ!ホワイトブロー!!」

 男の右腕が煙になってルフィを襲う。しかし煙は突然巻き上がった炎によって掻き消えた。

「やめときな、お前は煙だろうがおれは火だ。おれとお前の能力じゃ、勝負はつかねぇよ。」

 現れたのは上半身裸の男。男はまるで壁のように炎を巻き上げ、海軍の男に跡を追わせないように足止めした。……足止めさせたのは海軍の男だけではなく、ルイもまた然りなのだが。

「ルフィくん!!わたしのことは気にせず先に行ってー!!」

 聞こえただろうか。すこし待ったが返事はなかった。しょんぼりして別の道を行こうと振り返ると、そこには、

「……う。」

 殺気に満ちた目でこちらを見つめる、海軍達が。

「この女を捕まえろぉ!!!」

 煙の男が叫ぶ。反撃しようと思えばできる、もちろん。しかしナミの言葉が頭の中をぐるぐると回っていた。手を出してはいけない。だからルイはおとなしくお縄になった、のであった。





場所は変わって、ゴーイングメリー号の甲板、である。

「ルイが戻ってこない!」
「ルイどっかいったのか?」
「あんたを追いかけて行ったのよ!会ってないの!?」
「んーおれ会ってねえぞ?」

 ルフィ以外の船員がさーっと青ざめた。

「ちょっとどうするのよ!早く行かないと海軍が来ちゃうわよ!?」
「ルイ……ってのは、剣持った女か?」

 メリー号の垣立にしゃがんで問うのは、ルイが街で見かけた上半身裸の男−−−ルフィの兄、ポートガス・D・エース、である。

「ルイを見たの!?刀を持ってルフィを追いかけていた女の子よ!」
「ああ、多分そうだな。あの女なら海軍に捕まってたぜ。」
『えーっ!!??』

 一同驚愕。あいた口がふさがらない。まさかルイが、ルフィじゃあるまいしとゾロが言った。今のところしっかり者で通っている強いルイが、海軍に捕まるという事態は、完全に予想外であった。

「……私の所為だわ。」
「なんだ、ナミが何かしたのか?」
「そういうわけじゃないのよ、私がルイに『海軍には手を出さないで』って言ったから……その所為よ。」
「どーすんだよ!クロコダイルんとこ行く前に海軍とこ行かねぇと!」

 踵を返し街へ戻ろうとするルフィ。そんな彼を、エースは服の裾をつかんで止める。

「待てルフィ、あの女は『自分のことは気にせず行って』と言ってたぜ。」
「でもルイさんはどうやって追いつくの?これからは海を渡るし砂漠を超えるのよ!?」

 早くクロコダイルを片付けなくてはいけないが、仲間を助けに行かなければならない。アラバスタを救うのは一番の目標だが、仲間思いの船員達はルイを見捨てておけなかった。

「ルイは強いけれど、どうやって追いつくのかしら。砂漠を越えた経験があるとは聞いていないし……。」
「……あ、おれ、ルイなら大丈夫だと思うぞ。」

 暗い雰囲気から一転、ぱっと表情を明るくして言ったのはチョッパーだった。彼はこの間見せてもらった『あれ』を思い出したのだ。あれとは、つまり鷹になって空を飛ぶルイのこと。空をとべればルフィ達に追いつくことは十分可能だ。

「何か心当たりがあるの?」
「おう!おれとルイの秘密だ!」
「ふうん……秘密ねぇ……。」

 ナミが問うが、チョッパーは秘密だと言って答えない、しかし自信満々の様子。

「チョッパーを信じるしかねぇ、ルイには追いついてもらう。いいか?」
「……ああ!」

 ゾロがきっぱりと結論を言う。みんなまだ不安そうだったが、ルフィが了解の返事をしたので、ルイは今だけは海軍に預けることにした。





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