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2.金髪の少年


 お弁当を持ってきたジョナサンと中庭にやってきた。セオ達以外にも、シートを敷いている人や木陰で涼んでいる人がちらほらと見える。ジョナサンはすかさずベンチに向かい、セオをここで食べようと誘った。校舎に近い位置に備えられたベンチは丁度日陰になっている。

「ありがとうジョナサン。」
「それで、ヴァントーズさんの用事って?」
「週末にジョージさんに会いたいんだって、日曜日に。多分また何か良いものを見つけたんだと思うの。行ってもいかな?」
「日曜日か、なにも無かったはずだよ!父さんに訊いてみる。返事は明日でもいいかい?」
「もちろん。」

 セオとジョナサンはそれぞれ弁当を広げた。セオは最近お気に入りのクロワッサンとおかず少し、ジョナサンはサンドイッチ。
 そういえばこうやってジョナサンと話すのは久しぶりだなぁ、とセオは思う。小さい頃は毎日のように一緒に遊んでいたが、最近、男女の差が大きくなるに連れて、2人で遊ぶことは少なくなった。もちろんお互いは相手を良い友達だと思っているので、廊下ですれ違えば笑って挨拶をしたし、ヴァントーズとジョージが会う時には必ずついて行く。ただ、紳士として淑女として、男は男同士、女は女同士で遊ぶのが一番だと考え始めた頃から、なんと言うわけではないが静かに距離が開いていった。

「こうやってセオと話すのは久しぶりだなあ。」
「わたしもそう思ってた!ジョナサンは男の子と遊ぶようになったから。」
「セオだって女の子と遊んでるしね。」
「そうだねえ。」

 ジョナサンもセオと同じことを考えていたらしい。なんとなく距離が空いたと思っていても、それは物理的な距離でしかなく、結局2人は仲の良い友達同士。2人の仲をウワサされることもあるが、お互いは今も多分将来も友達同士だと思っているので、そういうわけではないよ、と言っている。




 2人のお弁当が無くなった頃、こちらに歩いてくる男の人の姿を捉えた。金色で襟足の長い髪がふわふわとしていて、切れ長の目が雰囲気の鋭さを表しているような、セオには見たことのない人だった。ジョナサンの方はよく知っている人なようで、男の人に気づくと、あ、と声を漏らした。

「やあジョジョ。」
「ディオ、どうしてここに?」
「クラスの奴が、ジョジョが女の子と中庭に行ったって訊いたものだからね。」

 ディオ、と呼ばれた男の人はちらりとセオの方を見る。はたっと目が合った瞬間、セオはなんとなく、この人はかなり頭が良いけどイジワルそうだと感じた。そういう人はちょっと苦手だ、しかし見た目だけで判断してはいけない、セオは弁当包みを横に置いて立ち上がる。

「セオ・フロレアールです、はじめまして。」
「ディオ・ブランドーだ。」

 セオはハンカチで手をふき、片手を差し出した。ディオもさっと手を出して彼女の手を取る。彼は品の良い笑みを浮かべていた。

「ディオはぼくの家の養子になったんだ、だからぼくと兄弟なんだよ。」
「へえ!知らなかった。」
「言っていなかったからね。」

 この2人が兄弟になったのか、と驚いて2人を交互に見る。親が違うのだから当たり前だろうが、性格の真反対そうなペアだ。

「君はジョジョとどういう関係なんだい?もしかして恋人・・・とか。」
「いいえ、わたしとジョナサンは普通の友達、小さい頃からの。」
「セオの名誉のためにも言っておくけど、ぼくたちはただの友達だよ。」
「名誉なんて、わたしはジョナサンみたいな人が恋人だったら嬉しいよ。」
「ぼくだって。」
「えへへ。」

 恋人同士だと疑われるのも判る、と誰が見ても思うような暖かい空気がセオとジョナサンの間に流れた。それでもこの2人は間違えることなく友達同士だ。そんな2人を見せつけられて、ディオは独りクッと歯を食いしばる。なんというかかなり不服だった。そしてそれと同時に、彼の野望の為にはセオをどうにかしなければいけないと言う事が判った。
 ディオはとにかく、ジョナサンに近い者を遠ざけさせ、彼を孤立させたい。そして世の中の孤独の全てを味わわせたい。ゆくゆくはジョースター家を手に入れるつもりでもある。そうなると、ジョナサンと仲の良いセオは、ジョナサンから引き離す対象となる。さあ、どうやろうか、と、ディオは考え始めた。

「ジョナサンの所に住んでいるなら、日曜日にお家に行くから会えるかも。」
「家に?」
「父さんとセオのお父さんが友人同士なんだ。」
「へえ・・・。」
「これからよろしくね。」
「ああ、よろしく。」

 昼休みが終わる。セオは手洗いに寄って行きたいからと、先に中庭を去っていった。ジョナサンも自分の弁当包みを片付けて、ディオに行こうと声をかけてから歩きはじめる。
 1人佇むディオは、ぎゅうと拳を握りしめた。






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