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写真を撮ろう1


「あ・・・セオさん。」

 とある中継地点の街、である。丁度到着した時間帯が同じだったジョニィとジャイロペアとセオ。ジョニィは視界の端に映ったセオをいちはやく見つけると、彼女の名前をそっとつぶやいた。

「セオ・フロレアールかあ〜おめー本当にお熱だったんだな?」
「お、お熱ってそんな!ちょっと気になってるだけさ!」
「ニョホ!」

 セオはラームに水を与えていた。その様子をジョニィ達は遠くから見ている。そんな視線に気づいたのか、彼女はふっと後ろを向いた。そしてジョニィ達の姿を捉えると、ぱっと笑って手を振った。

「ジャイロ!彼女が手を振ってくれた!」
「オレにじゃないの?」

 ラームを引いて2人に駆け寄るセオ。旅の疲れの出ていない明るい表情をしている。

「ジョニィさんジャイロさんこんにちは。」
「あ、えと、こんにちは・・・。」
「奇遇だな。」

 たまに街で見かけることはあるが、大抵はディエゴと一緒に居るので、こうやって近づくのは久しぶりだ。彼はどこに行ったと聞くと、途中で別れたらしい。どこかで落ち合う予定はないが、この街で落ち合えたらまた一緒に行くかなんて予定はあるそうで。

「おたくさん、お昼は?」
「まだです。ここに着いたら何か食べようと思って、これからで。」
「じゃあオレらと一緒にどう?ジョニィもいいだろ。」
「あ・・・ああ、うん。」
「いいんですか?」
「モッチロン、女の子がいた方が華やかでいい。」

 どこと場所を選ぶわけでもなく、ジャイロはすぐそこにあったカフェテラスに足を運んだ。近くに馬3頭を並べ、3人はテラスの丸テーブルを囲む。ランチメニューを広げて、コーヒーやサンドイッチ、ベーグルなんかを品定めする。各々適当に食べたいものを選んだ。
 こうやってセオを食事に誘ったのは、ジャイロなりにジョニィに気を使ってやったことだというのに、ジョニィはさっぱり黙ったまま何も言わない。ちらっとジョニィの方を見る、しっかり緊張しているようだった。

「アー、セオ、レースはどうだい?」

 とりあえずの会話、ジョニィはなんとか3人に共通の話題を探した。そんなに難しいことでもなかろうに。

「楽しんでますよ、のんびり良いペースです。」
「そういえばセオさんは新聞記事を書いていたんだよね?」
「ええ、父の会社でアルバイトをしてます。」

 セオはこれですと言って2,3日前の新聞を差し出す。スポーツ面に、レース上の写真とセオが書いたいくらかの文章が載っている。ジョニィとジャイロも見覚えがある場所だ。

「すごいね・・・。」
「えへへ。あ、2人も記事にさせてもらえませんか?」
「オレらを?」
「記念になりますから!」
「大歓迎だよッ!」

 厳重に仕舞いこまれたカメラを取り出し、店員に写真を撮ってもらうようお願いした。セオはコーヒーカップとソーサーを、ジョニィはサンドイッチを、そしてジャイロはハンバーガーを持ってそれぞれポーズを取った。3人は笑顔で写真に映った。現像しないと見られないですとセオが断ると、ジョニィ達は完成した新聞が欲しいと言ってくれた。
 1人旅が長いと人との交流が不足して寂しくなる。こうして2人とわいわいやっていられるのは楽しいなぁとセオは感じた。一緒に行けるならば、ずっと誰かと行動したいものだが、それぞれ進みたいルートや目的は違う。セオはゆっくりとでも様々な場所を見て回りたいが、ジョニィたちは上位を狙う為にハイペースを保っている。

 お皿の上が空っぽになって、少し話をしたころに、さあてとと言ってジャイロが立ち上がった。もう?とセオは思ったが、上位を狙っている2人だから、やはり行動は早い。

「また会えるといいですね。」
「そうだな〜、なんだかんだおたくさんも上位食い込んでるんだし、また会えそうな気がするぜ。」
「だといいなあ・・・新聞渡したいですし!」
「それにウチのジョニィはおたくさんのこと大好きみたいなモンでね。」
「ジャイロ!?」



 ジョニィとジャイロが去っていくのを見送って、セオはもう一杯コーヒーを頼んだ。カフェで記事を書きあげて父に送ろう、旅先で良い友人が出来たことを早く知ってもらいたい。





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